【感想・ネタバレ】ルポ 賃金差別のレビュー

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Posted by ブクログ

確かに、非正規職員で就職してしまうと、正職員との差は開くばかりで、企業の考え方ひとつで、労働力が買い叩かれる。日本の労働者がおかれている環境を欧州諸国と比べて客観的に把握することが大事と思った。

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2012年05月29日

Posted by ブクログ

我が国の労働市場には雇用形態により賃金「差別」が生じているという事象を報告したルポルタージュ。人員の非正規化や、そもそも非正規労働が「夫や親に養ってもらえる女性・若年層のもの」という認識が変わらない限り、この問題をなんとかするのは難しいように思える。惜しむらくは男性非正規労働者への言及が少なかったこと。

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2012年04月21日

Posted by ブクログ

正規労働者、非正規労働者の賃金の格差問題について。
欧米のように「同一価値労働、同一賃金の原則」がしっかりしておらず、曖昧な為に非正規労働者は正社員と同じ労働時間、労働内容であってももらっている賃金は約半分。

そのような低賃金労働者が年々増え続ける現実。
しかし派遣だから、パートだからとその低賃金を容認してしまう日本の社会の問題。

雇用の問題についてかなり興味がわいた一冊でした。
一度読んでみた方が良い。

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2012年07月07日

Posted by ブクログ

日本の労働環境は、もはや、マスコミや評論家達がこぞって使う、賃金格差なんていう生易しい言葉では済まされない。著者が言うように、現代の労働環境はまさに「差別」であり、「身分制度」そのものと言っても大げさではない。この大きな社会問題に対して、この国の立法府は、まったく手を付ける気もなければ、ましてや法を整備して改善する気はさらさらないようだ。このような事を放置すると、今に世界の先進国の中で、唯一、日本だけが、労働環境に関しては、国際的な人権問題に発展し各国から批判される状況に陥ってしまう可能性は否定できない。先進国、特にヨーロッパでは、同一労働、同一賃金が常識になりつつある現在、この問題を放置したままでは、未だ続く不況(デフレ経済)から永遠に脱することが出来ず、やがて、第3のうねりとも言える未来の新秩序(資本主義にかわるもの)から取り残され、「失われた30年」いや、もしかすると「失われた40年」と世界中の人々から揶揄されてしまう事だけは確かである、と…、私は強く感じるのである。

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2012年07月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ルポ 賃金差別

竹信三恵子著
ちくま新書
2012年4月10日発行

読み間違えやすいタイトル。「賃金差別(さべつ)」が正解。「賃金格差(かくさ)」ではありません。
著者はジャーナリストで和光大学教授、元朝日新聞記者。ベテランらしく、読みやすく、整理された内容でした。
「現代社会福祉辞典」での定義、「差別」とは「人々が他者に対してある社会的カテゴリーをあてはめることで他者の具体的生それ自体を理解する回路を述断し、他者を忌避・排除する具体的な行為の総体」を引用しつつ、性別、組合活動との関わり、雇用形態(パート、契約)、所属会社の違い(派遣、下請け)などの違いでレッテルを張ってしまい、賃金が差別されている実体を取材、解き明かす。裁判になっているケースがほとんどなので、暴露もの、告発ものではなく、実体を広く知らしめ、国などに対策を求めていくという主旨の本でした。

それぞれのケースの実例が挙げられているが、最後に、「最悪の賃下げ装置」になっているのが、賃金差別だと結論づけています。経営側が賃下げをするが、労組の組織率が下がって交渉力が落ちているので、正社員も「あの人たちよりましだから」という目で賃金差別されている派遣やパートなどを見て、賃金抑制に怒らない正社員の群れが増えているというわけ。まあ、そうでしょうね。
だから、この本を読み、賃金差別を受けてきた人たちの実体を知り、「オレの方がまだましだな」と我慢してしまっては逆効果ではあります。

例えば、こんな実例。

近藤聖子さん(56)、福岡市、食品工場のパート。時給720円。正社員、派遣、パートが同じラインで入り乱れて働く。正社員が月20万円台以上、派遣が15万円、パートはめいっぱい残業しても10万円程度。熟練度が足りない派遣社員が「たったの15万円」と愚痴っているのを聞いて愕然とした。
会社側がパートの賃金を10円上げると言ってきてよかったと思ったら、正社員が猛反発。自分たちに回るはずの賃金をパートに回すのはおかしいと。時給730円になるだけなのに、それでも許せないというのは、仕事ではなく、パートという身分を見ているからだと思った。

あるいは、こんな皮肉な例も。

りそな銀行は正社員もパートも同じ職務には同じ賃金の「同一価値労働同一賃金の会社」として知られる。同銀行の社外取締役だった渡邊正太郎さんは、賃金体系の切り変えには、経営危機の影響が大きかったと分析している。同行は2003年、自己資本が足りなくなって政府から公的資金の注入を受け、社員の賃金水準を大幅に引き下げた。その結果、パートとの賃金水準が接近し、賃金格差を是正しやすくなったという見方だ。

男女差別をなくして、また復活させた例。

兼松江商は、1960年代にお茶くみ廃止、1977年に労組婦人部の求めで22才男女同一初任給に。しかし、1983年、「コース別雇用管理」を含む人事改定案を会社が示す。男女別賃金は廃止する代わりに、「一般職(他の企業の総合職)」と「事務職(他の企業の一般職)」というふたつのコースを設ける。男性社員は全員「一般職」に、女性社員は全員「事務職」にふり分けられ、これまでの男女別賃金とほぼ同じ内容に固定されることに。しかも、1977年に勝ち取った男女同一初任給は、コースが違うので初任給も異なるとして、ふたたび差がつけられた。
「ニュースステーション」(当時)が取り上げ、社内は大騒ぎになった。閉じられた差別の秩序の中では「当たり前」とされていた差別が、外の世界の風にあてられたとたん、そのいびつさをさらすことになった。
性差別禁止を乗り切る、というアクロバットの支えとなったのが、コース別を容認した当時の労働省(現厚生労働省)均等法指針だった。

情けないことする社員たちの実例

名古屋銀行で1年契約パート勤めを長年してきた女性が、職業病を患ったので労災申請した。銀行としては職業病が世間に分かるのを嫌い、申請を取り消させようとした。拒否すると、夫が勤める会社に行き「アカの工員がいる会社とは取引せん」と圧力をかけた。
労災が認められると、休ませて退職させようとした。しかし、銀行に出勤すると、周囲は口をきいてくれず、同僚が出張で買ってきたみやげの菓子も配られなくなった。


その他

先進国が加盟する経済協力開発機構(OECD)の2009年の調査では、「相対的貧困ライン以下(その国の中程度の所得の半分以下)の家庭のうちで働き手が2人以上いる家庭の割合は、日本は39%と、OECD加盟国平均の17%を大きく上回る。主要先進国中もっとも高い比率だ。既婚女性の多くが低賃金の非正社員で、共働きしても貧困から抜け出せない日本の現状を示す数字だが、ここにも賃金差別は影を落とす。


大学教授でもある著者が、2011年秋、大学の授業で、パートの賃金差別訴訟について講義、感想を書かせた。学生の一人から次のようなコメントが返ってきた。「賃金は会社が決めるものでしょう。働き手がいろいろ言うのは変です。会社は慈善事業じゃないんですから」。

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2021年03月17日

Posted by ブクログ

パート労働は、所詮夫の収入がある女性たちの仕事、生活費がいらない女性たちの小遣い稼ぎ。こういった位置づけが、非正規の低処遇に対する社会的抵抗を阻んできた。女性の家計補助だからと、仕事の内容を問うことなく容認されてきた非正規は、いまや、男性たちにまで広がっている。また、シングルマザーも男性ではない、新卒ではないというだけで低賃金で不安定な働き方を余儀なくされている。非正規は理不尽に特定のカテゴリーへ押し込められ、低賃金でも当然だというレッテルを貼られ、働く意欲や気力を奪われている。安くても当然の人たちを作ることにより企業は人件費を抑え、労組の組織率を下げ賃金交渉力を弱体化させた。正社員は正社員で、あの人たちよりもましだからと賃金抑制にも怒らない羊と成り果てた。高齢者の低賃金再雇用は労働ダンピングを加速させている。著者は警鐘を鳴らす。この状況を放置しておれば、必ずそのツケがまわってくる時が来ると。

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2015年07月09日

Posted by ブクログ

日本社会は、同じ仕事でも、出身地・性別・採用形態・雇用形態と様々な線引きによって自在に賃金に差をつけられる賃金差別大国である。

同一価値労働同一賃金はよく聞く言葉だけれど、その意味の重要性を改めて認識しました。

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2014年04月27日

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