【感想・ネタバレ】貧困なき世界―途上国初の世銀チーフ・エコノミストの挑戦のレビュー

あらすじ

開発経済学はこの半世紀以上、政府主導から自由市場重視まで、両極端の政策を実験のように試行してきた。たとえば、1980~90年代はワシントン・コンセンサスといわれるビッグバン・アプローチが支配的な考え方で、市場の歪みを一気にすべてなくすことが市場経済化の成功のもとだと考えられてきた。だがこの先進国がつくった開発理論に沿って改革を推し進めた国は、みな、失われた20年を経験している。
対照的に、主流派経済学の市場メカニズムの原理をまったく無視した、当時、一番悪いやり方だと見られていた、いわゆる「漸進的アプローチ」を実践した国は、みな成功を収めている。
本書は、この、順調な高度成長を達成してきた東アジアの国々の経済発展の歴史からみて、一見中庸あるいは中道派にみえる後者のアプローチをとることが、実際の処方箋として非常に有効であることを現実の成果によって検証し、推奨する。
開発経済学に、「成功させるヒミツの魔法」があるわけではない。先進国の作った理論を鵜呑みにせず、そして先輩途上国のたどった軌跡をそのままたどることでもなく、自分の国の資源制約に適した政策を立て、地道に遂行することしか、発展への道はない。本書は、中国の発展のプロセスを克明に記し、各国ごとの特性にあわせた開発戦略のロードマップを描くことで、自国の発展のために日々頭を悩ませている途上国エコノミストにとって本当に役に立つ開発モデルの枠組みを提供する。

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Posted by ブクログ

貧困の撲滅には経済発展が必要であることを前提として、低所得国を中所得国に、中所得国を高所得国にするには、その国の強みに合致した産業を、政府が主な役割を演じて、様々な側面から後押しすることが必要であると論じている。
『銃・病原菌・鉄』と『国家はなぜ衰退するのか』を読んだ方にはぜひこれも読むことをおすすめする。国家発展の成否を決めるのは、地理でもなく、民主主義でもなく、政策であり、政府の役割が経済発展に決定的に重要で、かつこれまで多くの国が失敗してきたくらい難しいことであると論じている。上2冊とはまた違った視点を与えてくれる。

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2025年01月26日

Posted by ブクログ

貧困なき世界 ジャスティン・リン 東洋経済新報社

途上国初の世銀チーフエコノミストの挑戦
混沌の時代の台湾に生まれ
混沌からの脱出を体験し
中国に渡って同じ種類の体験をすることと合わせて
台湾の大学卒業の後北京大学で修士号を取得し
シカゴ大学で博士号取得という道を歩み
理論と実践の両面で裏付けられた上で
北京大学の享受になるが
2008年から4年間を世界銀行副総裁に抜擢される

何しろ博学で視野が広いことが専門バカばかりのこの時代に
貴重な存在となったのだろう
又二つの貧困脱出劇を体験したことから湧き出す
途上国への提案には現場を知る強みがあったようだ

経済という言わば社会を運営するための手段を目的化せずに
手段としての能力を発揮させるべく立ち回ることが
大事だということなのだろう

アインシュタインやふしぎの国のアリスを引き合いの出しての
例え話がオモシロイ
「すべてを知っているのに何も動かないのが理論であり
全てが上手く動いているのに誰もどうしてだか知らないのが現実である」
「私達が理論と現実を一緒くたにしたが何も動かず誰もわけがわからず」

噛み砕かれた幅広い知識に裏付けられた行動と価値観
歪んだ社会を逆手に取る前向きな選択
自画自賛を考慮しても何かしら時の力関係に対して
臨機応変に世界を俯瞰しているように思えた
最後に
今後台湾をどうとらえていくのか?
気になるところだ

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2017年03月20日

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