あらすじ
Book of the Year四冠、アマゾンBest Books of Month受賞
ピュリツァー賞記者が「現代人の病理」に迫る科学ノンフィクション
ながらスマホは命を奪う!?
飲酒運転以上の衝突リスク、20分の1まで視野低下、記憶が曖昧に。
脳はすごい。だが限界を超えるとコントロール不能になる。その先には…?
ニューヨーク・タイムズ記者が、人間の注意力を扱う最先端サイエンスと
謎めいた自動車事故をめぐる人間ドラマを織り交ぜながら、
テクノロジーが人間の脳にもたらす多大な影響力を探る。
※日本語版特別付録として、「ながらスマホ研究」の第一人者、
小塚一宏教授(愛知工科大学)による解説を収録。
「マルチタスクが可能な電子デバイスと、シングルタスクをむねとする人間の脳のあいだに存在する、
ときに命にさえかかわる緊張関係を解き明かす。読みだしたらやめられないだけでなく、
これは人の命を救える一冊だ」――ニコラス・カー、『ネット・バカ』『クラウド化する世界』著者
■もしも「注意力」が奪われたら? ある青年に起きた悲劇を、最新科学が解き明かす
2006年のある夏の日、米ユタ州に住む青年レジー・ショーが、運転中の「ながらスマホ」によって
衝突事故を起こし、2人のロケット科学者が命を落とした――。本書はこのレジーに焦点を当て、
悲惨な事故、警察の捜査、州当局による思いきった起訴(当時はほとんど前例がなかった)、
そして判決からレジー本人の贖罪までのドラマを丹念に追う。
またこれと並行して、人間の注意力、テクノロジーが脳に及ぼす影響について、
デイビッド・ストレイヤー(ユタ大学・認知心理学)、アダム・ガザリー(カリフォルニア大学・脳神経学)
ら科学者の知見をもとに紹介する。そこで明らかにされるのは、いまや私たちの日常にすっかり根づいた
各種デバイスが人間の奥深い社会的本能に作用し、刺激を求める脳の部位を疲弊させ、
結果的に限りない衝動、さらには依存症をも引き起こすという事実だ。
■テクノロジーが持つ多大な影響力を、ピュリツァー賞記者が掘り下げた話題作
著者は不注意運転のリスクと根本原因を明らかにし、広く警鐘を鳴らした一連の記事でピュリツァー賞を受賞。
本書は一般読者から研究者、ジャーナリスト、政治家までに絶大に支持され、Best Books of the Month(Amazon)、
Best Book of the Year(Kirkus Reviews, San Francisco Chronicleほか)などに輝いた。
(原題:A Deadly Wandering: A Tale of Tragedy and Redemption in the Age of Attention)
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Posted by ブクログ
米ユタ州で起きた携帯メールのながら運転での死亡事故について物語風にドキュメンタリー。
事故を起こしたレジーは、初めは自分が事故のときに携帯を触っていたことを否定する。彼の言葉によると審理の途中で自らが携帯電話に触れていて、危険な運転をし、二人の命を奪い、その家族からかけがえのない人を奪ったことを理解した、という。ある意味、本当に彼は運転に集中をしていたと思っていたのかもしれない。そこからのレジ―の危険運転防止への献身的な取り組みがこの本のひとつの主題である。
レジ―がユタ州のモルモン教徒であり、伝導活動に掛ける想いについて実感が湧かないかもしれないが、日本人であれば例えば受験であるとか就職であるとか社会人としてのキャリアなどに置き換えて考えるとその切実感を理解することができいるかもしれない。レジ―が敬虔なモルモン教徒であることは、彼が抱く罪の意識とも関係をしているのかもしれない。彼の心の動きと言動と、遺族や検察官、弁護士の感情の動きが詳しく描かれている。
「神経ハイジャック」ー 人間の注意がマルチタスクに決して向いていないというが、そのことは日々実感できる。自分も家では、TVを付けて、個人PCを見ながら、仕事のPCでタスクをこなしていることが普通だ。もちろん、すべてを同時にやれているわけではなく、注意を頻繁に切り替えている状態にある。すぐそばで付けているテレビの内容がまったく頭に残っていないということはよくあることだ。マルチタスクをしていると効率的なように感じるが、逆に非効率であるということは重要な指摘でもある。原題は”A Deadly Wandering: A Tale of Tragedy and Redemption in the Age of Attention”なので、ハイジャックというニュアンスはないが、注意がいかに奪われるかという主題を日本語でうまく表しているのではないだろうか。そして、継続的にマルチタスクを行い、注意を切り替えていることが脳に与える影響に関しても気になるところである。
現代はスマホを身に付けて、常に外部につながることができる環境を持っている時代である。スマホを見ることが脳の報酬系に働くというのはおよそ実感するところでもある。それを薬物やギャンブルなどの依存症になぞらえているが、一面では間違ってはいないのだろう。何でもないのについスマホを取り出して触ってしまう自分がいることにあらためて気が付く。そして、やめられないことも実感する。自分はやらないが、たばこと同じなのかもしれない。
しかし、人物描写がとにかく長い。もちろんきちんとした取材と関係者に配慮した描写が売りでもあるのだろうが、自分にとってはここまで詳しい描写が必要だったのだろうか。一気に読むわけではないので、登場人物がどういう人であったか忘れてしまったりするとかなりつらい。注意力がなくなっているのかなあとも思うのだが。
本書は議会、携帯電話会社、自動車会社、などロビー活動などを通して法制化に反対する勢力に対して、ながら運転を危険運転として法的に防止するに至ったこの事故の社会的意義に注目する。一方、脳の注意、ワーキングメモリ、意識の成り立ちなどに関する科学的な見地についても言及されている。スマホ世代において、人間の注意力はどのようになっていくのかについても興味がある、注意力に関してはそれぞれに差異があろうし、訓練によりマルチタスクの能力は変化していくであろう。こちらの方に注意が向くのである。運転しないペーパードライバーなので。
まあ、ちょっと長いですかね。
Posted by ブクログ
2006/9/22、ある普通の青年が交通事故、死亡事故を起こす。それは裁判となる。原因は何だったのか?青年は何も原因となることを覚えていないと言う。
これは、携帯メールのながら運転の危険性が、裁判、法整備へ向かった記録である。メールしながらの運転は危険だと誰もが感じながら、やってしまう、そのメカニズムを神経学者・心理学者の解説と歴史的背景を挙げると同時に、事故当事者の苦悩を描いた実録です。個人的には各人の成育歴など、詳細すぎてる点と、注意の科学の歴史的背景は、詳細すぎて、むしろだれてくる感じがありました。科学的知見の蓄積より、個人的体験者の叫びが、社会や政治を動かすのだなと感じました。