【感想・ネタバレ】アメリカの大問題―百年に一度の転換点に立つ大国のレビュー

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Posted by ブクログ

アメリカの大問題―百年に一度の転換点に立つ大国
著:高岡 望
PHP新書

大転換時期を迎えた21世紀のアメリカの大問題というか、特徴といったほうがいいのではないかと思います。

その問題とは3つ
 ①格差と移民
 ②力の行使
 ③エネルギー(=シェール:頁岩からとれる、天然ガス、石油)
である

■格差と移民
世界的な傾向として、格差が広がっている
その象徴が医療費 10分の診療で錠剤を処方してもらっただけで、なんと30万
その計測は、ジニー係数と、実効税率、西側では格差は広がりつつあるが、顕著なのは、USAだ
人種間の所得格差は過去40年間驚くほどかわっていない その比は、白人100:黒人60:ヒスパニック70
人種を超えた婚姻率 日系人は、55%非アジア系と結婚している。中国系26%、韓国系32%に比べても際立って高い
日系人の特徴、それを、「我慢」とよんだ
アメリカ人は、小さな政府が好き
南部の怒り

■力の行使
黒人は白人に比べ、銃犯罪の被害者になる確率も、加害者になる確率も、5倍高い
しかも多数のケースでは黒人が黒人に殺されている
アメリカの43%の家庭で銃は少なくとも一丁あり、28%の個人が銃をもっている
地政学 ユーラシア大陸の中心をハートランドと呼び、ハートランドと海洋で接する地域をリムランドとよぶ
重要な3つのリムランド;JIB、アジア=日本、中東=イスラエル、ヨーロッパ=イギリス
アジア、著しい経済成長と、中国の台頭
中東、戦争とテロの混乱
ヨーロッパ、EU統合の軋み
中東のリムランド:アメリカのパートナー、政治:イスラエル、経済:サウジアラビア
中東の3大大国、トルコ、エジプト、イラン

■エネルギー
シェール革命⇒アメリカのLNGの最大の受け入れ国は日本
シェールは石油の損益分岐点を大幅に下げた⇒石油価格が下落⇒サウジをはじめ産油国が苦境に
石油・天然ガスの共有が地球規模で変化 
ロシア⇒ヨーロッパ⇒アメリカが供給
中東⇒アメリカ⇒加えて中国にも供給

アメリカの戦略 ロシアからヨーロッパに供給している天然ガスをウクライナ戦で止めて、アメリカ製を提供、産油国の価格カルテル支配をやわらげ、西側のエネルギー供給の比率を増やす

目次
まえがき
第1章 格差の大問題―移民とティーパーティー
 1 格差の風景
 2 格差、人種、移民
 3 日系移民の苦難の歴史
 4 格差をめぐる左右対立
第2章 力の行使の大問題―銃と地政学
 1 アメリカ社会と銃
 2 アメリカをとりまく地政学
 3 アメリカの世紀は続くのか
第3章 エネルギーの大問題―シェール革命の本質
 1 シェール革命と日本
 2 シェールを求めて
 3 シェール革命の経済的帰結
 4 21世紀のアメリカのシェール戦略
あとがきにかえて

ISBN:9784569829661
出版社:PHP研究所
判型:新書
ページ数:277ページ
定価:840円(本体)
発売日:2016年06月29日第1版第1刷

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2023年12月18日

Posted by ブクログ

大統領選の結果を受けてアメリカに興味が出たので購入。アメリカの問題を①移民と格差②力の行使③エネルギーの3カテゴリに分けて論じている。話題のトランプ現象については主に①②で言及される。トランプ氏の当選について日本では「ナショナリズム」「差別主義」の高まりである衆愚的な結果であると扱われている側面があるが、本書を読むとそうは言い切れないと感じられる。アメリカの文化背景を踏まえるときわめて合理的な選択だったのではないか、そのあたりが簡潔にまとまっているので一読の価値アリ。

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2016年12月03日

Posted by ブクログ

著者の高岡望氏は、2013~15年にヒューストン総領事を務めた外交官。
本書では、(著者曰く)「テキサスがわかれば、これからのアメリカがわかる」というテキサス州・ヒューストンという視座から見た、アメリカが現在直面している3つの最重要テーマ(problemというニュアンスの“問題”ではない)である、「格差と移民」、「力の行使」、「エネルギー」について分析している。
主な内容は以下であるが、私には、日本人には分かりにくい、「低所得者層がなぜ共和党を支持するのか」についての考察が、特に興味深く感じられた。
◆アメリカで格差が拡大している理由は、①「小さな政府」への指向が強く、高所得者層から低所得者層への(税制等による)再配分機能が弱い、➁市場経済の仕組みが協力に作用している、➂年間100万人の移民を受け入れている(移住したばかりの移民の所得は低い)の3つ。
◆経済的には「大きな政府」の恩恵を受ける低所得者が圧倒的多数であるにもかかわらず、アメリカではなぜ「小さな政府」(=共和党)に対する支持)が根強いのか?一つは、建国以来のアメリカン・デモクラシー(政府は選挙で明らかにされた民意に従うべき)は、「小さな政府」の主張と親和性が高いこと(「大きな政府」は選挙の洗礼を受けない官僚組織の拡大につながりやすい)。二つ目は、南北戦争直後は民主党支持だった南部(リンカーンが共和党であったため)において、民主党が進める急進的な公民権運動に対する白人の反感、宗教心に篤く保守的な信条を大切にする低所得者層に対する宗教右派の浸透などにより、現在では共和党の牙城と宗旨替えしたこと。今後は増加するヒスパニック系有権者が民主党・共和党のどちらを支持するかが焦点。
◆トランプ現象の本質の一つは、大量の不法移民の流入とイスラム過激主義によるテロに対する米国民の根本的な不安に率直に向き合うことにより、従来のワシントンの政治家の「政治的な正しさ」に対して不満を持つ人々にアピールしていること。今後はトランプ氏が、更にアピールを強めて元々共和党支持だが選挙に行かなかった有権者の投票率を上げる戦略をとるのか、中道の有権者を取り込む方針に転換するのかに注目。
◆世界経済におけるアメリカの地位は相対的に低下したが、ソフトパワーの優位性、同盟国・友好国の多さ、軍事面での優位性から、アメリカの世紀は今後も続く。しかし、外交政策においては、国内優先主義(=世界の警察官を務めることにノーと言うアメリカ)を強めようとしている。日本にとっては、アメリカが引き続き東アジアに関与することが決定的に重要であり、可能な協力をすることが望ましい。
◆人類にとって採取可能な石油と天然ガスの量を一挙に数倍にしたといわれるシェール革命により、アメリカは国際エネルギー市場の主要プレーヤーとして「新しい力」を手にし、今後スイング・プロデューサーとしての影響力を発揮していく可能性が高い。
本年11月の大統領選挙の争点・歴史的な背景を知る上でも、今読んでおくべきタイムリーな一冊と思う。
(2016年7月了)

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2016年07月11日

Posted by ブクログ

アメリカの現状について簡単にまとめている。石油関連の話も多く、シェール革命が与えた影響の現状も知ることができた

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2016年10月09日

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