【感想・ネタバレ】資本の世界史 資本主義はなぜ危機に陥ってばかりいるのかのレビュー

あらすじ

資本主義を考えるための必読書と絶賛され、各国で翻訳予定のドイツ発ベストセラー待望の邦訳登場!

資本主義はイングランドの片田舎で偶然生まれ、その後幾度もの危機に直面してきた。

にもかかわらず、いまや資本主義はわれわれの世界を規定さえしているように見える。

しかしそれはほんとうだろうか。

資本主義の寿命はどのあたりまできているのか。

多くの危機はその欠陥によるものなのか。

ドイツの気鋭経済ジャーナリストが歴史から資本主義の輪郭を浮かび上がらせる。

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Posted by ブクログ

資本主義経済体制の世界史 産業革命を機に未曾有の経済発展を実現した
その成功ゆえに「地球環境の制約」という新たな本質的課題に直面している
加えて「コロナ禍」が加わり、経済体制の見直し・改革論が噴出してきている
マルクス資本論ブームはその象徴である
著者は軽々に資本主義経済体制の終焉論には与しない
わり得る体制が明らか出ないこともあるが、資本主義はまだまだ使える体制と評価
しかし新自由主義の行き過ぎは是正しなければならない
ケインズ的な「マクロ管理」の強化を主張する
地球という視点で、社会インフラ・ネットワークの再構築を行うと言うことである
短期的効率主義により、電力・鉄道・通信・道路・教育・医療といった「社会共通資本」は社会的公正からは乖離してきた
これを民主主義により改革していくことが現下の課題
バイデン米国大統領の施政方針と重なるものがある
民主主義の信頼・信認を取り戻さなければ人類に未来はない
①世界のバセンスシートの拡大には警鐘 「スーパーバブル」ははじける
②世界史では「中国一強」かほとんど 1840年から植民地化が異例
 習近平は世界史の流れを元に戻す 回帰させ正すという考えではないか

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2021年04月30日

Posted by ブクログ

経済史の概説を通して資本主義を丁寧に再定義している。資本主義と市場経済、実体経済と金融経済、金融危機と経済危機といった概念間の明確な分離の上で、資本主義の本質を洞察しようとする試みは秀逸で、個人的には靄が晴れるような体験であった。終盤では未来についての記述も、資本主義の枠組みの内外でそれぞれ数頁ずつ割かれており、短いながらも一貫性があり納得のいく内容であった。著者はドイツ人であり、ドイツを中心とした記述も見られたが、その多くが一般化可能な内容であった。経済学を専攻しなかった人こそ読むべき一冊。

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2020年08月19日

Posted by ブクログ

約4000年前から貨幣経済が始まっていたことは、遺跡の発掘などで証拠が出ている。
貨幣経済は行われていても、資本主義は無かった訳であるが、産業革命を機に資本の増殖が行われていく。
産業革命が始まった場所が、イギリスの田舎町だったとは知らなかった。
特殊な環境が新しいシステムを生み出すという、著者の仮説は非常に面白い。
時間軸で見てみると、それはほんの200年くらい前の出来事だ。
マルクスの資本論が発表されたのが1867年らしいが、マルクスがこれを書き始めたのは相当に前らしく、生涯を通じて研究し続けたのだという。
資本主義の構造を解き明かしたのが画期的で、「余剰価値」と「資本の再生産」という視点を見つけた点が、本当にスゴイことだ。
この時点で資本主義の欠点に気付き、「このままでは早々に破綻する」と予告しながら、同時に「社会主義・共産主義」への移行を進めようとする訳である。
それから百数十年の歴史が経過しているが、現時点でもマルクスの唱えた通りの社会にはなっていない。
社会主義・共産主義は、今でも残っているが、成功している社会制度とはどうしても思えない。
(ある一部分だけ見てみると、成功している箇所もあるかもしれない)
一方で資本主義が破綻しているかというと、数々の問題を抱えながらも、今でも他の代替案が見つからずに、何とか手直しをしながら生きながられている。
立ち止まって冷静に考えてみても「資本が増殖し続ける」という仕組みは、どう考えても無理があるだろう。
人々の生活は確かに豊かになったが、今でも地球の環境が破壊され続けているのは間違いない。
こういう点だけ見ても、次の社会制度に移行すべきであるが、それが未だにできないでいる。
地球環境が元通り回復するのに、数万年や数千万年かかるような破壊を行っている。
これではいつか破綻するのは目に見えていて、今現在がまさに赤信号が点っている状況だ。
人間は自らの欲望のために、数々の犠牲を強いてきた。
その行動はとても賢いものだとは思えない。
なぜ、資本の増加についてだけ、このような動きをするようになったのかが、非常に不思議だ。
内容は全く異なるのだが、本書を読みながら物理学の話を聞いているようにも感じてしまう。
熱力学第2法則は、秩序だったものが無秩序に向かうという法則である。
それがまさに時間という概念を示すことであるが、日常生活の中でも実感できる内容だ。
角砂糖をコップの水に入れれば、それは溶けて見えなくなっていく。
時間が経つと角砂糖に戻るということはあり得ない。
もし砂糖の結晶を取り出そうとするならば、別の科学実験のような形で行うことになるだろう。
いずれにしても、自然法則に則った動きのために、我々にも理解しやすい内容である。
しかしながら、こと「資本主義」については、どうにも自然法則に則っていると思えない。
なぜ資本は増加するのだろうか。
それはどういう現象で、どういう理論で増加するのか。
本当に不思議でしょうがない。
それもほんの200年程度の歴史にも関わらず、現代に生きる我々にとっては、それが何千年も過去からずっと続いている自然の摂理のようなものだと勘違いしてしまっている。
資本主義とは、幻のようなもののはずなのにだ。
最初から「こういう物を作ろう」としてできたシステムではなく、むしろ結果的に出来上がったものであり、それに対し人類はその動きをコントロール出来なくなっている。
そもそも増殖し続けることが宿命のシステムである訳だから、コントロールなんてできるはずがない。
地球という有限の器の中で、無限に成長し続けることなど、物理的に不可能なはずである。
資本主義が永遠に続くならば、人類は無限を求めて、宇宙の果てを目指して出ていくのだろうか。
そんな愚かしい未来すら想像してしまう。
さらに本書内で新たな気付きとなったのは、「資本主義と民主主義の関係性」である。
我々は、資本主義が発展すれば、民主主義も成熟すると信じてきた。
資本主義が成立する前提は、民主主義が機能していることだ。
その両者が誕生した時代も、確かにほぼ合致している。
しかし現実は、様々な点で綻びが出てしまっている。
巨大な資本を持つ者や企業体が、民主主義政治に大きな影響力を持つようになってしまった。
大金持ちの1票と、庶民の1票は同一ではないし、果たして同一にすることが平等に繋がるのかどうかも疑わしい。
現実的に格差が広がって社会の分断が進む中で、民主主義は正しく機能しているのだろうかと感じてしまう。
資本主義の暴走を止めるはずの民主主義が、逆に資本主義によって侵食されている。
この危機感は、今の日本に生きる私たちにとっても、他人事ではない。
それでは、私たちはどうすればいいのか。
必要なのは「成長しない経済」への移行だ。
つまり、資本主義というシステムそのものから脱却することを目指さないと、先行きは無いということなのだ。
今の社会は資本主義というOS(基本システム)で動いている。
OSを入れ替えるのは、並大抵のことではない。
今の生活水準を維持したいという欲求と、未来のためにシステムを変えなければならないという理性の間で、我々の感情は揺れ動いている。
著者は、資本主義がいつか終わることを前提に、その後の社会を構想することの大切さを説いている。
かつて封建制が終わったように、資本主義もまた歴史の一過程に過ぎない。
そう考えると、少し気持ちが楽になる。
今、私たちが苦しんでいる問題の多くは、このOS特有の「バグ」のようなものだ。
私たち一人ひとりにできることは、何だろうか。
まずは、この「成長しなければならない」という強迫観念から、少し距離を置いてみることのような気がする。
もっともっと、と上を目指すのではなく、今すでに存在している豊かさをどう分かち合うのか。
効率やスピードを重視するのではなく、手触り感のある生活や人間関係を大切にすることが重要だ。
そういう小さな変化の積み重ねが、次の社会への準備になる。
本書は、非常に重厚な内容であるが、語り口は非常に論理的で分かりやすい。
これからの世界がどこに向かおうとしているのか。
先行きの見えない未来に対して、不安を感じることも多いかもしれないが、歴史を学ぶことで、「今」という瞬間を相対化して眺めることができる。
複雑な時代を生き抜くために、視座を高く、視野を広く。
そんな示唆を与えてくれた書籍であった。
(2025/10/28火)

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2026年02月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ギリシャやローマでは、生産の効率化のために資金を借りるという発想がなかった。
遠隔地貿易は昔からあった。
労働力が安かったため、ローマやギリシャでは、技術革新をする必要がなく、資本家は育たなかった。

中国は海洋帝国になれる力はあったが、商業には興味がなく皇帝への貢物だけに興味があった。

馬にできること(荷物を運ぶこと)をわざわざ機会がやることもないだろう=セイ。
工業化はひっそりと始まった。
イギリスで産業革命が始まったのは、賃金が高かったから。
機械に変えるだけの投資の意味があった。
資本主義を駆動するのは高い賃金。
フォード「自動車が自動車を買うわけではない」

資本主義に対する誤解。1、資本主義は市場経済と同一ではない。2、国家は自由な市場を脅かす攪乱者、ではない。3、グローバリゼーションは21世紀の発明、ではない。

資本主義は、統合を目指すことになる=市場経済とは反する動き。
農業補助金がなければ農業は滅びる。
自営業者のみが競争の中で生きている。

実質的な意味での自由な労働、は無制限の契約の自由を制限したことで、可能になった。

放送大学

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2016年07月23日

Posted by ブクログ

読書は私の趣味の一つで、歴史モノを読むのが好きです。かつては歴史の事件が中心でしたが、ある分野に絞った歴史(通史)も面白いことをこの数年で見つけました。この本は「資本主義」の通史について書かれています。

ドイツの方が書かれた本で、資本主義は、なぜイギリスの片田舎(ロンドンではなく、マンチェスターp36)生まれたのか、なぜ他の国でなくてイギリスであったのか等、面白いエピソードが盛り沢山でした。

私は資本主義下の日本で生まれ育ち、それと対峙していた共産主義の総本山である「ソ連」の崩壊、中国の事実上の資本主義への転換等を見てきています。そう言えば最近、キューバも米国と国交が復活しましたね。

資本主義が共産主義よりは私達に適していたのかもしれませんが、まだ不具合な部分もあると思います。そのような気持ちを整理させてくれた本でした。

特に印象に残ったのは、冒頭にあった、「資本」とは、お金ではなく、生産を効率化するプロセスであり、技術上の進歩で、これにより、経済が成長した(p9)というくだりでした。

以下は気になったポイントです。

・近代的な資本主義が起こったのは1760年ころ、イングランドの北西部で、紡績工場主が織機や紡績を機械化することを思いついた時。これにより、史上初めて人間の労働力が技術によって代用され、それにより富が生まれた。「資本」とは、お金ではなく、生産を効率化するプロセスであり、技術上の進歩である(p9)

・資本主義は、実質賃金が上がる限り、安定して発展している。高い給料は成長を促し、会社を豊かにする(p10)

・1871年のドイツ帝国創設以来の人口統計データによると、当時も今も、貧しい人が短命で、裕福な人が長生きである(p15)

・今の西欧人は5世代前よりも、約20倍豊かになった。工業化の発展と関係がある(p17)

・生産の効率を高めるために貸付金を借り入れるという発想が、ギリシア人・ローマ人には全くなかった。安い労働力を使うだけで十分、資本家になる必要がなかった(p21、24)

・インド、中国人が生産する絹織物や宝石、香辛料は欧州上流階級が憧れる贅沢品であった。それに対して欧州人が提供できるものは僅か、ローマのガラス程度、交換となると唯一の製品である「銀」であった(p25)

・中国が成長に踏み出さなかったのは、それほど国力が優勢であったから。モンゴル帝国はすぐに崩壊、陸の交易ルートは閉じられたので、海を開拓する必要があった(p26)

・中国の役人の数が少なくて済んでいた(帝国の隅々に行きわたっていた)のは、文書のお蔭(p27)

・中国には巨大な灌漑設備があり、輪作も盛んで、耕地を休ませる必要なし。蒔いた種と収穫量の比率は、中世で1対10、欧州では1対4、中国に追いついたのは、20世紀(p28)

・中国の鄭和が1405年から7回(33年)に分けて行った海洋探検の船団は、317隻で3万人もの乗組員、1492年のコロンブスは3隻87人(p28)

・食料品や農業関連の素材が安くなり、ほかのもののためにお金を残せるようになって初めて、紡績工業のような新しい市場の発生が可能であった。変化が地方で始まったのは必然であった(p37)

・イギリスは1534年に教皇と縁を切り、みずからイングランド国教会の長になった。これにより全農地の約4分の1を管理していた修道院の所有地が没収され、下級貴族や商人に売られた。共有地も消えて私的所有地となった(p38)

・輪作への変化(1年間休耕するのではなく、クローブかカブを合間に植えると休閑期が不要)は、画期的なこと。1)一家を養うのに十分な穀物、2)駄馬、挽馬を働かせるためのエサ、2つの限界が解消された(p40)

・貴族が企業家として活動するのはイングランドならではである。欧州諸国では、公爵が市民階級の実業家のような振舞をするのは、あってはならないと見なされていた。イングランドでは長子相続権が厳然と存在していたので、貴族と平民の間は流動的。年上の息子だけが貴族の称号と財産を相続、他の子供達は全員、市民とみなされた(p43)

・インドよりも安い値段をつけるのに立ちはだかったのは、イギリスの高い賃金である。なので、機械が人間に取って代わるしかなかった。低賃金のドイツでは機械投入の価値がなかった(p45、47)

・資本主義を駆動するのは、低い賃金ではなく、高い賃金である。労働力が高いときにこそ、生産性をあげて、それによって成長を生み出そうとする技術的イノベーションが出番となる(p48)

・イングランドには、海に近いニューカッスルに大きな炭鉱があり、石炭をロンドンまで安く運ぶことができた。これが、ローマ人・中国人よりも有利で、石炭革命が行えた(p49)

・イングランドには、いちばん高い労働力(実質賃金が他欧州と比較して2倍高かった、p55)といちばん安いエネルギーを持っていた。この組み合わせは世界的に見ても比類ない事で、工業化がなぜイングランドで始まったかの説明になる。人間を機械で代用して利益をあげられるのはイングランドしかなかった(p50)

・イギリスの工業技術の専門教育がドイツレベルに到達したのは、1963年。工業を強化するよりも、商取引・海運・外国の事業投資に興味があった。1914年時点で、海外への直接投資全体の44%がイギリス、残りが、仏・独・米・ベルギー・オランダである(p67)

・資本主義が今日のような形をとって、100年が経過する。成熟した形になったのが、第一次世界大戦直前、少数の企業が市場を支配、グローバルに行動する、そしてそれら企業は、援助という名の国家の介入を当てにしている(p70)

・本当の意味での市場は、経済政策の対象とならない隙間分野に存在する。自営業者、職人、理髪師、飲食店経営者、建築技師、商店主等(p78)

・実質成長は、技術の進歩によってのみ可能、それは、技術の進歩がなければ資本主義は終わってしまう(p95)

・19世紀になって本来の意味での経済的グローバリゼーションが始まる、それは、蒸気船と電信(p113)

・汽船の運航や、スエズ運河の建設も革命的な効果、輸送コスト(イングランドとインド間)は、19世紀のうちに、単位当たり98%減となり、世界貿易が実質10倍となった(p114)

・世界経済が1913年のように再び絡み合うようになったのは、1970年代から、1989年をもって東側ブロックが解散し、中国が輸出に力を入れるようなったが、約80年ぶりに資本主義的な交換で一つになった(p116)

・1797年、イギリスの首相であるピットは、ポンドと金との交換停止に踏み切った。これにより純粋な紙幣本位制となった。有効期間はもともと6週間であったが、1821年まで24年間存続した。奇跡が起きたのは、ポンドが金による裏付けを失っても、価値が保たれた。それは、金によってでなく、その国のGDPで保証されていたから(p131)

・金融資産が増加すると、世界が豊かになったように見えるが、実際には不健康的。資産の価値は、毎年どれだけの利回りをもたらすかで計られる。その収益は現実のGDPからもたらせるべき、国民所得が伸びないのに金融資産ばかり上昇するといつかクラッシュする(p163)

2016年4月24日作成

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2016年06月19日

Posted by ブクログ

この手の本にありがちな理想論の誤魔化しが比較的少なくて好感が持てる。
持続可能な成長は無い、なんてなかなか言えないですよ。

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2016年04月11日

Posted by ブクログ

基本的に経済史から説く立場なので、読んでいて安心感がある。産業革命がなぜイギリスで起こったのかという答えとして「労働者の給料が高くて、機械化がワリにあった」というシンプルなもので、わっかりやすーい。貯蓄は悪! なぜなら「全員が貯蓄」するのは不可能だし、貯めれば貯めるほどお金がまわらなくなって不況になるから! だから稼いでる奴から税金とって、そのぶん政府が仕事してお金を回そうよ、労働者の給料上げようよ、という提言も「だよねー」ってかんじ。経済発展をGDPの成長と同一視するのではなく、「生産性の底上げを超える部分はバブルじゃん」とこれも納得。読みやすい反面、「ぎゅっ」とまとめられないエッセイ的なところがあるが、そこも味といえば味。

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2016年01月31日

Posted by ブクログ

・ジャーナリストということもあってか,全体的に断定口調が多め。参考文献は揃っているものの,初見では真偽を疑いたくなる文章が多い。

・個人的には,第4章だけでも内容として充分と思う。

・ドイツを中心に経済を見ることはあまりないと思うので,その点は参考になった。

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2025年01月06日

Posted by ブクログ

流読。
具体例がやや長く散文的な文章であるが、資本を軸とした通史の復習として。

資本主義は成長を必要とし、持続的な成長はなし得ない。
新たなシステムが予期せぬ形で生まれる。

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2022年07月20日

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