あらすじ
昔の美貌を残しながらも無表情、徹底して人とのかかわりを好まなかった藍子叔母。謎に満ちた叔母の人生に、わたしは物書きとしての興味をかきたてられた。叔母に届いた手紙と、ある男の手記。調べていくうちに、若き日の叔母の恋人は、ゾルゲ事件で投獄されていたことを知る。戦中から戦後、そして現在へと、脈々と続く連鎖の不思議。昭和という時代に翻弄されながらも、気丈に愛を貫き通した藍子――。『症例A』の多島斗志之が描き切った、渾身の純愛小説。
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Posted by ブクログ
静かな語り口。丁寧につづられていくエピソード。ゆっくりと流れていく時間。多島氏の作品を読むといつも同じ感覚を味わう。
共産主義運動やゾルゲ事件など、そのあたりの歴史的な背景には全く疎い私だったが、それをモチーフに紡ぎだされた本作は、派手さはないが、読み終えてじわじわと何かが胸に広がる、余韻に思い切り浸れる秀作だった。
Posted by ブクログ
すべてが済んでしまった後に過去を紐解いていく…、という設定に、蓮見圭一氏の「水曜の朝、午前三時」を思い出した。
カヴァーに書いてあった“渾身の純愛小説”というキャッチを見た時は少し気持ちが萎えて読むのをやめようかとも一瞬思ったが、そこは多島斗志之氏のこと、上手くミステリー風の味付けを採り入れて飽きさせない作りになっている。
文章も無駄なくきれいなので読みやすい。
Posted by ブクログ
読んだきっかけ:100円買い。
かかった時間:3/16-3/18(3日くらい)
感想: 多島斗志之、2冊目。「症例A」が面白かったので買ってみた。内容は、家族の絆、人の気持ちの理解とか、そんなものか。
地味だけど、するする読めます。
舞台は戦後だけど、戦前、戦中を通してのエピソードを辿る物語です。最後は急ぎすぎてる印象。上下2冊くらいにして丁寧に堅ってもいいかも。