【感想・ネタバレ】中国4.0 暴発する中華帝国のレビュー

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2016年07月12日

2015年に習近平が訪米の時にオバマに提案した「新型大国関係」つまり「G2」提案は、日本のマスコミでは、日本は米中の挟間に取り残されるような取り上げ方をした。
本書によると、この習近平の「G2」提案は、キッシンジャーのアイデアで、しかも彼はアメリカの中で「G2」を信じている唯一のアメリカ人と喝破して...続きを読むいる。
別の本でも、中国はキッシンジャーへ莫大な資金援助をしているとのこと。
また、キッシンジャーの著書の中で、彼はドイツと日本は必ずアメリカを脅かす存在になると警告しているほどの日本嫌いなのだ。
しかし日本のマスコミは、中国問題になると、直ぐにキッシンジャーのインタビューを掲載したりして、中国寄りの論調が目につくし、中国報道に関して、中国の主張を受け入れなければ、日本はすぐにでも中国から締め出されるか、尖閣に攻め入られそうなヒステリックな論調で、政府批判をする。
そういう意味で、本書は目先だけではなく、もう少し長い目で戦略的に中国を見ているし、日本のマスコミや評論家には見られない別の視点で中国を見ているのがよく分かる。

以下、この本の概略を紹介します。

中国はこの15年間に三度の大きな外交政策の転換をしている。
チャイナ1.0:1970~2008:平和的台頭
1972年以降のアメリカの対中政策は、中国を助けてソ連に対抗させる政策であったが、2000年以降アメリカは中国が余りに豊かになりすぎる事を恐れ始めた。
しかし江沢民に指導された中国は、GATT・WTO・IMFへの加盟をし、私的財産権や知的財産権など国際法を順守し、国際秩序を脅かすようなことはしなかった。
 
チャイナ2.0:2009~2014:対外強硬路線
リーマンショックの発生とそれを克服した中国の自信が、政策を大きく変えていく。荒唐無稽な「九段線」に代表される南シナ海や尖閣の問題を次々と起こす。
これに対して周辺の民主主義国では、親中派のリーダーを選ばなくなり、インドのナレンドラ首相や日本の安倍首相のように中国との摩擦も厭わないタフな人物が選ばれるようになった。またフィリピン、マレーシア、ミャンマー、ベトナムなどが、反中国包囲網を形成し始めた。
ここで中国は「力の論理」に対抗する「逆説的論理」を理解できていない失敗を犯した。中国の最初の一手に対して、それに対する反応が周囲から起き、相手も動くし、情況も変わるダイナミックな相互作用が動きだすということが、理解されていなかった。
この時期の中国は、日米同盟の2つの弱点を突こうとしていた。
1つ目は、アメリカは尖閣の領有権争いでは中立を貫く。2つ目は靖国参拝問題。
特に中国は日本に対して強硬姿勢を貫いた。彼らの読みは、中国市場に魅力を感じる日本企業が政府に圧力を掛け、言いなりに成るはずであった。
それに対して安倍内閣は、靖国府不参拝の約束も尖閣が係争地であることの認定もしなかった。

チャイナ3.0:2014~   :選択的攻撃
太平洋を中心に反中国包囲網が形成され、2014年秋に中国は「チャイナ2.0」の間違いに気づいた。
そこで「選択的攻撃」と呼べる「チャイナ3.0」に移行したが、成功していない。
この「チャイナ3.0」は2つの要素から成り立っている。
①反撃をしてきた側への攻撃を止める。ベトナムと日本との関係がその例。
②キッシンジャーの提案する「G2」つまり「新型大国関係」を構築する。
ここでも、中国は壁に突き当たっている。

ここで著者はプーチンと習近平の違いを次のよう述べている。
「大国というのは、ある要求をする前に、それが成功するか否かを見極めるものだ。ロシアがそうであるように、いったん要求を表明すれば、そこから動きを止めることはない」「中国の場合は、尖閣について大騒ぎをする割には何も起こさない。中国はただ騒ぐだけなのだ。これはロシアと中国の大きな違いだ」
「ロシアは戦略を除いてすべてダメで、中国は戦略以外はすべてうまい」と皮肉っている。

別途、著者は韓国と日本の謝罪問題についても述べている。
ここでは、本題から外れるので簡単に留める。
日本は韓国に対して既に十分過ぎるほど謝罪したし、今後もそれは続くであろうが、無駄である。なぜなら、韓国が憎んでいるのは、日本人でなく、日本の統治に抵抗せずに従った自分達の祖父だから。韓国人は自分たちの祖父を恥じている。その怨みが日本人に向けられている。だから彼らは決して日本人を許せないのだ。

また日米関係についても、以下のように述べている。
「アメリカが戦略面で日本を守ることは、何ら問題はない。ただ日本に取って中国の脅威というのは、その性質が異なる。日本本土への侵攻というより、離島の占拠だからだ。率直に言って、アメリカは現状では日本の離島の防衛までは面倒を見きれない。ここから、日本が自国の安全保障を全てアメリカに依存することから生じるマイナス面が明らかになる。自国の小さな島すら自分で守れないことが、むしろ日米関係を悪化させる方向に向かわせる。これは日本政府が自分で担うべき問題なのだ」

チャイナ4.0:著者からの中国への提案
ここまで書くと書き過ぎるので、これは省略する。

日本政府への提言
結論として、中国は戦略の下手な、極めて不安定な国なのである。それに対して周辺国は、全ての国に当てはまる「戦略の論理」を見極め、それに冷静に対処していくことが、求められる。
巨大で不安定で予測不可能な中国に対し、あえて積極的な計画を持って対抗しようとするのは、そもそも馬鹿げているし、成功するはずがない。
真珠湾攻撃のようなアタックや、逆に平和的イニシアチブなども進めずに、日本はひたすら受動的な「封じ込め政策」に徹するべきなのだ。

全編を通じて、現在の中国の分析に関して、日本のマスコミが避けているような視点からのものであり、現状分析~提案に至るまで「目から鱗」の新鮮な論述である。
是非お勧めの一冊である。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2018年10月14日

独自の戦略論を持つ著者による、中国の対外戦略の推移とその問題点の指摘。及び、それに対して日本がどう対処すべきかの提案。
まあ、インタビューを元にまとめた物だけあって、サクサク読める(読めた)
中国に関しては「明日どうなるかわからない。何の担保も無い」以上、何らかの方針を立ててそれに基づいてこちら(日...続きを読む本)から働きかけるよりも、「封じ込め」と「リアクション」(中国が何をしでかしても対応できる様に各部署で準備しておいて、何かあったら「リアクション」)の方が適しているのでは?という案については、理解できる(中国相手にイニシアチブをとれるというのは傲慢すぎる)ただし、「国家のパラメータと変数」論については、事例として持ちだした物が恣意的すぎるというか、パラメータと変数を入れ替えていたようにも読めたので保留。
いずれにせよ、アフリカの独裁的な小国同様に不安定な「大国」が我が国の近隣に存在し、しかも直接我が国の領土に現在進行形で手を出していることを「脅威」と捉えない方が無理がある。
それより何より、「ローマ帝国の大戦略」「ビザンツ帝国の大戦略」を邦訳してよ!!

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Posted by ブクログ 2018年02月13日

大国は小国に勝てない、常識的な国から自身の力を過信した国へ変わり続ける中国に対し、日本がどう対応するか。極めて受動的に封じ込めるというのは論理的には分かるが、世間には納得してもらえないだろう。

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