【感想・ネタバレ】大長編ドラえもん4 のび太の海底鬼岩城のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

衝撃の問題作、『海底鬼岩城』(1983)。

何が衝撃かといえば、その設定である。
海底の二大文明が戦争をした挙句、
片方が核実験の失敗で滅び、自動報復装置だけが暗い海底で、
ただ破滅のときを待っている、という背筋も凍るお話。
舞台がバミューダトライアングルつまりはキューバ周辺ということは
これはもう露骨に米ソ冷戦を取り上げているのであり、
デタントの崩壊あるいは東西の軍事的不均衡が冷戦を緩慢に終結させるという楽観論に対し、それがむしろ全面核戦争の可能性をもう一度蘇らせるのではないか、という藤子某の強い危機意識を感じざるを得ないではないか。
自動報復装置で思い出されるのはS.キューブリックの映画『博士の異常な愛情』だが、ここで破滅のスイッチを押したのが将校の『狂気・狂信』つまりはヒューマンエラーであったのに対し、海底鬼岩城では驚くなかれ、機械(=バギーちゃん)が機械本来の性質に反して感情を持ったことでいわば誤算によって人類が救われるのである。
人間に不可能であるのならば機械にヒューマニズムを語らせる、
というこの痛烈な風刺はかのカート・ヴォネガットの『タイタンの幼女』にも一脈通じる驚きの一撃なのである。
もちろん、このバギーちゃんの「狂」気は、『2001年宇宙の旅』のHALと徹底的な対比をなしており、藤子某のキューブリックに対する強いライバル心というか負けん気というか、チャレンジスピリットにただひたすら息を飲むばかりなのである。
海底人エルが海底で気を失ったドラえもんたちに言い聞かせる言葉、
『僕たちは君たち人類の歴史を見てきた。血みどろの歴史をね』
てな台詞が、ひたすら、重い。

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2011年05月06日

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