【感想・ネタバレ】フランツ・ヨーゼフのレビュー

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Posted by ブクログ

ハプスブルク家、すごく興味があります。
特にシシィは大好きで、よく彼女のことが描かれた本を読んでいました。
が、フランツヨーゼフ側からの本はもしかして初めて?
読んでみて、その素晴らしさを実感できました。こういう人が治める国なら住みたいな。

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2022年06月23日

Posted by ブクログ

王とは何か、更に皇帝ともなれば、如何に振る舞うべきか。民主主義が定着した現代ヨーロッパにおいても、残された王家の継承者たちは頭を悩ませ続ける。フランツ・ヨーゼフは500年近い歴史を誇るハプスブルグ帝国で、その最晩年を68年も支えてきた。気の遠くなるような年月、目覚める民族意識、欧州列強の虚々実々の駆け引き。崩壊しようとする帝国に日々真摯に向き合う姿は年月を経てむしろ神々しささえを帯びていく。

フランツ・ヨーゼフは一日10時間以上働き続けた。それは18歳で帝位に就いてから86歳で生を閉じるまで不変だった。この人ほど仕事熱心だった役人はいない。(194ページ)

19世紀のウィーンといえば、世界に輝く音楽の都である。政治的・経済的にはイギリスやプロイセンドイツに先行を許しながらも、中にいる国民たちは世界に冠たる一流国と疑わなかったに違いない。しかしイギリスのような革命やドイツのような政治的統合劇を経ていないだけに、宮廷も貴族も前世紀そのままの古色蒼然さを残し、官僚機構の近代化も遅れていたのだろう。そんな国のトップに君臨するフランツ・ヨーゼフは、皇帝だけは、その職責を勤勉に全うし続けた。諸民族の自己主張にも、官僚機構の機能不全にも、今一つ戦績の冴えない軍隊にも、フランツ・ヨーゼフは耐え続けた。68年もの長い間。単に耐え続けただけのようにも見えるが、オーストリア・ハンガリー二重帝国などという巧緻な妥協を繰り出しながら、諸民族の一致団結を訴え続けた68年の治世。この皇帝なくば、為政者が短気な施策を繰り返し、帝国はもっと早く分裂していたに違いない。

フランツ・フェルディナンド(帝位継承者)にとっては、現在のドナウ王朝のあり方が嘆かわしくてならなかった。1902年4月、彼は駐ロシア大使のエーレンタール男爵に書き送っている。「帝国ではどこもかしこも大混乱を期きたしている。ハンガリー人はますます厚顔になる一方だし、我々オーストリア人の間には、陛下にありのままを申し上げて自ら嘆かわしい事態を打破しようと願う情熱的な人間はいないのだ。」(352ページ)

最後まで矜持と希望を捨てなかった皇帝が第一次世界大戦に踏み切るや、諸民族は一転してこの戦争を支持する。まぁよくありがちな光景だが、皇帝はここに至るまでに最後のミスを犯していた。同じドイツ人として、ドイツとの同盟関係に頼り続けた外交判断。ドイツ統一前を知り謙虚さを残したヴィルヘルム1世と、ビスマルクを切り常に傲慢さを湛えたヴィルヘルム2世では格が違う、と彼はわかっていたはずだ。しかしバルカン半島を狙う皇帝にとって、後背の安全を確保するドイツとの同盟は必須の選択肢だったのだろう。しかしそれは英仏露との対立関係を深めるドイツにとっても、いつのまにか望むべき選択肢になっていた。この帝国はメッテルニヒ退陣後、外交面で主導権を握れなくなる。その現実を、この勤勉な皇帝はどう考えていたのだろうか。

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2013年12月31日

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