【感想・ネタバレ】劣勢を逆転する交渉力のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

水産庁において、タフな国際交渉をこなしてきた著者の経験を中心に、一筋縄ではいかない交渉のダイナミズムを知ることができる。

特に印象的だったのが、200カイリ漁業水域の設定による、アメリカの排他的経済水域内での漁業権益交渉の帰結である。

サケマス漁業のための重要な漁場であった、同水域について、日本はアメリカの定めた200カイリ内での漁業権を確保するために、劣位な交渉を続け、最終的には撤退を余儀なくされた。

元々、サケマスの消費が少なく、加工技術もないアメリカにとって同海域は、日本にとって価値があるが自らは利益を得られないという環境にあった。
しかし200カイリの制限により、日本は漁をしたければ、アメリカの求める条件を飲まなければならないという力関係が出来上がってしまった。それにより、年々制限が厳しくなるほか、アメリカへの漁業技術・加工技術・施設の提供等をも求められ、ついにアメリカが独力でサケマスビジネスを運営可能になった時点で切り捨てられた。

日本としては、200カイリという不利な土俵を設定された時点で、先細りの状況の中、撤退もできず、搾り取られてしまう状況に陥っていたのである。
長期的な戦略ビジョンがなければ、固定的なパワーバランスは維持され、有利な側にコントロールされてしまうという恐ろしい教訓が、ここに見て取れる。

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2016年06月12日

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