あらすじ
二十世紀を代表する二つの思想――実存主義と構造主義。この「実存」と「構造」という概念は、実は表裏の関係にあり、人生に指針を与え、困難な時代を生きるための思考モデルでもある。同時代的に実存主義と構造主義の流れを体験してきた作家が、さまざまな具体例、文学作品等を示しつつ、今こそ必要な「実存」と「構造」という考え方について、新たな視点で論じていく。
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Posted by ブクログ
20世紀文学を実存と構造という概念で読み取いている。選ばれたのが大江健三郎と中上健次だ。大江健三郎は実存主義文学の旗手である。その彼が万延元年のフットボールでは構造主義を取り入れているという解説はなるほどと思えるほど鮮やかな解説だ。同時に中上健次の文学作品を解析して実はこういう構造となっているのだという論旨も鮮やかである。
三田を見直した。その彼があとがきでこう書いている。
「文学はただのひまつぶしでもなければ、気晴らしの娯楽でもない。時として文学は、読者を悲しませ、嘆かせ、思い課題を背負わせることもある。
むしろ作者(および主人公)と読者とが、苦悩を共有するために、文学というものは存在しているのかもしれない」