【感想・ネタバレ】北斗 ある殺人者の回心のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

色んな思いが交差し言葉でどう表現すればいいか不明。
罪のない人を殺したのは本当に間違いで、綾子が復讐を求めるなんて、どう考えてもおかしい。北斗の幸せを一番に願ってるにきまってる!と思うのが自分が普通に育ってきたからだろうか?!

幼少期から裁判の判決までとても丁寧に描かれていた。
そして、ページの量!読み応えあった。

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2020年08月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

重い。

こんなにも衝撃的な内容とは思ってもいなかった。

両親から虐待を受け育った北斗の視点で描かれた作品は幼少期からの虐待をリアルに描き、その中で自分の生存本能と親子関係の中で生きるために重ねた重い鎧。

そんな鎧を着た北斗に人としての温もりと、家族としての温もりを与え、短くも北斗が人として過ごす時間と場所を与えてくれた里親である綾子。

ようやく1人の人間として生きる機会を与えられた北斗の幸せは綾子の死と、気がつけば綾子の為に関わってしまった医療詐欺によって再び奈落の底へと突き落とされる。

負の連鎖によって引き起こされてしまった殺人(理由がどうであれ、人を殺める事を肯定してはいけない)と、殺人犯となった北斗に寄り添う綾子の元で里子として育った血縁関係のない姉の明日実、国選弁護人の高井。

物語の後半は自ら初めて己の心に向き合い、鎧を脱ぐ北斗の心情と裁判という緊迫感を加害者の視点で見事に描ききられていた。

そこには単なる殺人事件ではなく、殺人を犯した加害者のみならず、徹底的に北斗の心の中をリアルに感じることが出来た。

リアルに伝わったが故に衝撃も大きく、非常に重たい一冊でした。

ここまで心の中を描ききる事が出来る著者の作品は今後も読み進めていこうと思う。

説明
内容紹介
両親から壮絶な虐待を受けて育った少年、北斗。初めて出会った信頼できる大人を喪ったとき、彼の暴走が始まる……。孤独の果てに殺人を犯した若者の心に切り込む、衝撃の長編小説。(解説/黒川祥子)
内容(「BOOK」データベースより)
両親から激しい虐待を受けて育った少年、北斗。誰にも愛されず、愛することも知らない彼は、高校生の時、父親の死をきっかけに里親の綾子に引き取られ、人生で初めて安らぎを得る。しかし、ほどなく綾子が癌に侵され、医療詐欺にあい失意のうちに亡くなってしまう。心の支えを失った北斗は、暴走を始め―。孤独の果てに殺人を犯した若者の魂の叫びを描く傑作長編。第8回中央公論文芸賞受賞作。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
石田/衣良
1960年東京都生まれ。97年「池袋ウエストゲートパーク」でオール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。2003年『4TEEN フォーティーン』で第129回直木賞を、06年『眠れぬ真珠』で第13回島清恋愛文学賞を、13年『北斗―ある殺人者の回心』で第8回中央公論文芸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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2020年04月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

虐待描写が生々しく長く続き、途中まではまるで呪いの様だった。主人公の北斗の両親の思考と行動が恐ろしすぎて読むのをやめたくなるほど。

でも、そのしつこい描写が後半の魂の劇といわれる法廷劇で効果的になっている。
ある事件の被告人となった彼の人生、そして彼自身が法廷で丸裸にされていくのだが被害者と被害者遺族の心境を鑑みても、彼が披虐待児として生きてきた事を強く痛感させられ彼の人生に寄り添ってしまう。

裁判が進んでいき様々な人間が北斗を語る。
その中で遺族の息子の乱暴と思われる北斗への言葉に胸を打たれる。その息子は、母親を殺した憎むべき相手だというのに対等の人間として北斗に言葉を放つ。橋爪北斗さん、と彼は確かに言った。
北斗は対等な人間として見られた機会が少ない。だから北斗は彼の事を永遠に忘れないだろう。
立場が違えば友人になっていたかもしれない、という一文に切なさがこみ上げた。

又、虐待をし、又させた北斗の実の母親の登場場面も衝撃的だ。更に衝撃なのはその証言内容。
愛とは何なのかを考えさせられた。また、どんなに歪でも愛は愛だという愛の難しさを感じた。

そんな裁判で気づく。人を救うのは法律ではない。法律を作った未完成な人間が必死にその法律を使っているにすぎないことを。
法律上で親子と認められようがそのままにしてはいけない親子がいるように。

北斗は様々な証言者の言葉を聴き、仕事の立場以上に自分を思ってくれる弁護士や裁判官に出会う。それが自己肯定感のない彼の心を揺さぶっていく。そして同じ披虐待児童で同じ里親の子供であった女性の存在と、彼女の「生きて」の三文字が裁判の最後まで彼を支えることに。

独房で1年間、北斗は時に寝ずに自身の心と対話をする。裁判も終わりに近づき死にたくないと恐怖にかられた彼に全力でほっとした。

彼は今まで殺されかけ生き伸びてきたにすぎない。本当の意味では、一度たりとも生きていないのだ。今まで披虐待児童であったがゆえ心を殺してきた彼から出た些細な欲望を叶えてやりたくなった。
生をと…。独房の外で鳴く鳥の名前を調べるといった、平穏な時間をと…。

判決の主文の文字を見た時、声を押し殺して泣いてしまった。真夜中でなければ声をあげていただろう。そして、改めてこの裁判の弁護士と裁判官が彼らで良かったと天に祈るような思いにかられた。神様はいるのかもしれないと思わされた。

そこまで北斗を見守る気持ちになれたのは、作者の主人公の心理描写が巧いからに他ならない。
特に証言台での生きた言葉、北斗が初めて見せる本音には魂が揺さぶられる。
遺族への誠実な自省の言葉に回心とはこの事か…と唸らされた。  

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2017年04月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

主人公北斗の幼少の頃の虐待の描写に心折れそうになったが、久しぶりに一気読みした本。壮絶な児童虐待を受けて育った青年北斗が生まれて初めて信頼することが出来た里親の癌による死と、癌患者やその家族を騙す癌を完治させるという触れ込みの波洞水の詐欺にあったことで、不幸な殺人を犯す。その裁判と北斗の心情が描かれる。幼い頃からずっと本心を人前で表すことが出来ずに育った北斗の最後の意見陳述で見せた素顔に私の涙腺は崩壊した。そしてその判決に読者である私はホッとしたが、もしも自分が被害者の家族であったとしたら、その量刑に納得出来る自信はない。

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2016年06月22日

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ネタバレ

題名で買ったけど、分厚い本だけど読み入った。
虐待されて、愛を知らず、自分の存在価値も分からずに生きてた北斗が、里親に出会って変わってくれて心が救われた。
そして犯行後の裁判でも、もう死刑でいいと生きる希望を失ってたのに、最後死刑を免れたときに涙を流してくれていて、安心してしまった。
きっといつかしあわせになれる

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2021年05月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

主人公の幼少時からの虐待のくだりから里親との生活まで生々しく丹念に描かれるやがて殺人、殺人後の裁判のくだりも半分ほどあるので、サスペンスというよりはドキュメンタリーのように感じられた。

1点作者の癖というか同じ描写をしている箇所があり、妙に心に残った↓
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【生田友親の描写】
『~最も印象的なのは、外見ではなく穏やかな話し方だった。(中略)それは揉め事が起きた小学校のクラスを平静にさばく副校長のような態度だった。』

【平岡裁判長の描写】
『白髪の平岡裁判長は、地方の小学校の副校長のようだった。穏やかで野心はなく、その地位のまま静かに引退していく。』
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おそらく白髪で物腰軟らかな人物の印象が『副校長』なんだろうけど、生田は親の仇で平岡は裁判長なんで人物的には正反対なんですよ!

たぶん『大型犬のような穏やかさ』みたいな描写だとふーんで済んだ話ですが、副校長がいる学校に通ったことがないため「え?副校長?」と引っかかった。副校長はメジャーでないと思うんだけど。

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2018年01月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

序盤、あまりにも残酷で目を背けたくなるような虐待描写に、読んではいけない本を手に取ってしまった、と思った。読むのを止めようかとも思った。初の石田衣良だったにも関わらず。
里親との出会い、死、詐欺、そして殺人。後半はほぼ裁判。裁判シーンの描写の細かさは見事。裁判官、裁判員、弁護士、検察官、被疑者の心情が上手い。映像を見てるかのよう。孤独だった北斗が犯した罪を裁くのは、やっぱり人なのかな。この判決によって、北斗は報われたのかな。

これをドラマ化したのかあ。見たい反面、ちょっと怖いな。

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2017年05月16日

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