【感想・ネタバレ】北斗 ある殺人者の回心のレビュー

あらすじ

【第8回中央公論文芸賞受賞作】両親から激しい虐待を受けて育った少年、北斗。誰にも愛されず、愛することも知らない彼は、高校生の時、父親の死をきっかけに里親の綾子に引き取られ、人生で初めて安らぎを得る。しかし、ほどなく綾子が癌に侵され、医療詐欺にあい失意のうちに亡くなってしまう。心の支えを失った北斗は、暴走を始め――。孤独の果てに殺人を犯した若者の魂の叫びを描く傑作長編。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

約2週間、端爪北斗と生活して沢山のことを学ばさせていただいた。
私の考えも交えて書いているので、お気に召さない方は、、うーーん、、頑張ってください、、、
-----------------------------

初っ端「端爪北斗は誰かに抱き締められた記憶がなかった。」一体全体、こんな衝撃的な始まりは無い。炊飯ジャーのご飯、自動販売機の温もり、帰宅までの遠い夕日、どれも人じゃない幸せ。人からの幸せ(愛)を代替出来るものを探していたのだろうと胸が痛くなった。

虐待の描写は、ページをめくる度に加速し、手が動かなくなって涙がこぼれた。小さな北斗に起こる有無を言わさない罰。

自分自身を愛せなかったら、自分の血が流れてる言わば分身、子も愛せない。毒親は連鎖すると言うが、綾子が死ぬ間際のお花見で、「あなたは最後にはお父さんに負けなかった。それを証明するには、しっかりと自分の子どもを愛して育て上げなくちゃいけない。北斗くんには絶対できるからね。」がとても印象的で、連鎖を断ち切ることは叶うが、あばらの道だと考えが改まった。

四日目の法廷、北斗が水の中で泣いている北斗自身の涙に気づけて本当によかった。
自分自身が本当の気持ちを感じないまま過ごすのは、死んでいるのと同じ。明日美ちゃんの「生きて」に込められた力でやっと、死に続けてた北斗が生き返った。しかし、2人の犠牲者を生み出さなければ、北斗を生き返らせるピースが揃わなかったこと、救いがないように思える。

北斗と同い年の私が人を殺さずに生きているのは、周りの人の沢山の軌道修正のおかげなんだと痛感した。殺人者は悪魔の様に見えるが、ほんの少し前までは何の変哲もない一般人だったのだ。私も1年後被告人になっているかもしれない。

人を殺さないのも偶然、人を殺すのも偶然。全て瞬間の積み重ねで起きてしまう。ならこの世からいじめが無くならないように、虐待も無くならないのだろうか。きっと、表裏一体なんだと思う。だからこそ、関わる全ての人に少しでも優しくありたい。

世の犯罪の裏側、司法の意義、秘密裏に蔓延る虐待、北斗と共に学べたこと感謝します。多くの経験から生み出されたこの本に敬意を込めて。素敵な時間をありがとうございました。

【この本に出会ったきっかけ】
SNSで約1年前ほど出会った人のオススメ。
誰かの好きな本、映画、音楽。それらを知ると、その人の目を通して世界を見れるようで。彼は、大人になることが不安に感じる私の数少ない、大人に希望を見い出せる存在だ。
オススメされた本は読んだ後に、考えを共有することができて、一層思考が深まる。私の誇れる趣味の一つだ。

【追記】
・ifもしも私が登場人物だったら

私はわがままに生きてきたから、美沙子なら至高と離婚して(殺すと脅されても私が先にしてるはず)、温かなご飯を息子にお腹いっぱい食べさせたい。そして北斗なら自殺していたと思う。

私は母親の偉大さを知った。私が生まれてすぐ、父親の借金が発覚したらしい。愛した男と家庭を築く決意を放棄してまで、私を守り育ててくれた母は誇りだ。父親の顔は3歳頃のクリスマスの思い出で最後だ。顔も声も温もりも、最後まで記憶に残る匂いも、覚えてない。というより、そんなものあったか?まるで、精子提供を母が望んで生まれたくらい興味が無い。父親ではなくて、ただの遺伝子。きっとそう思えるのは、母の愛あってこそだと感謝してもしきれない。

母に、もしも美沙子だったらどんな行動をとったのか聞いてみた。その答えでもっと好きになった。

0
2025年12月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

産まれてからずっと壮絶な虐待を受けてきた主人公。奇跡的に大人になれた。 彼は初めて愛してくれる人に出会えたが、詐欺によりその人の金を奪われ病気で亡くしてしまう。 詐欺の相手に復讐しようと試みる彼は殺人者になる。 ここから逮捕、裁判という流れで彼も知らなかった過去を知ったり、もはや求めていない人の優しさに触れる。

終始辛いお話でした。 子どもを虐待する話は文字でもしんどいですが、裁判中の証言で乳児の頃からと知りおかしくなりそうでした。 サイコパスと言えばそうなのでしょうが、精神病院に行ったほどなので至高はずっと病んでいたのかもしれません。彼に付き合い続けた母親は最低ですね。 子と一緒に逃げる選択をしなかった理由が描かれていなかったのでこいつがクズだと思います。
美談のようでしたが北斗の弁護士は役者でした。第三者が世の中のニュースで信じられない判決を見たときに活躍するのは彼のような弁護士なのでしょう。 人を2人以上を殺して死刑以外の判決が出たニュースにはそのようなメッセージを煽っているように思っています。 北斗も同じ考えかと思います。 違うストーリーできちんと生田を殺してほしい。

0
2025年08月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

今年はまだあまり読めてないですが、今年1番じゃないかなと。読み始めると話に入り込み…北斗の幸せを願い、最後まで裁判を見届けました。
以前死刑制度について書かれた本を読んだ事を思い出しました。きっと北斗は毎日被害者を思い出し、反省し、裁判長に言われた通り、日々罪を償い生きていく。きっとこれが本当の償いなのではないかなと私は思います。
虐待、復讐、死刑制度、様々な事を考えさせられるとても重い一冊でしたが、本当に読んで良かったと思います。

0
2024年10月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

北斗、読むのに半年以上かかってしまった。理由は虐待シーンが過酷で、手が進まなかったから。至高の怖さに一緒になって怯えてしまい、気持ちに余裕のある時じゃないと読み進められなかった。それくらい描写がリアリティのあるものだった。
北斗の半生は過酷極まりない。さらに様々な偶然が重なり、殺人へと至る道を思うと、人生はなんて不平等なんだと憤りを感じる。実際、殺人事件は幸福な人が犯すものではないし、北斗のように様々な不幸が重なった人によって引き起こされる。そこを思うと、人間社会の歪さや、人生の不条理を見せつけられる思いがする。
北斗は、素直な人間だと思う。自分のしたことを反省する心があるし、被害者やその遺族に対する謝罪の気持ちがある。北斗の境遇は本当に恵まれないものであったけれども、北斗の人間としての良さは確実にあったし、綾子に対する愛情もあるごく普通の人だと感じた。
虐待通報は年々増加している。それは軽微なものであっても通報されることが増えた訳でもあるが、やはり、北斗のような酷い事例ももちろんある。北斗のような被虐待児が人生で躓かないように、里親になったり、その子を見守る大人が深く関われたりする必要性がよく分かる本だった。北斗も綾子や、明日実、高井弁護士など、北斗のことを本当に想ってくれる人との出会いで生きている。
北斗は綾子に出会ったことで、心の平穏を見つけたし、救われた。人間には出会うべき人というのがいるのだなと思った。北斗の過酷な人生は続くけれど、大切な人との思い出と支えてくれる人を頼りに、生きていってほしいと思った。
実際の被虐待児の子の人生も過酷であるとは思うが、自分を本当に想ってくれる出会うべき人に出会い、平穏を見つけ出せることを祈る。

0
2024年01月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

色んな思いが交差し言葉でどう表現すればいいか不明。
罪のない人を殺したのは本当に間違いで、綾子が復讐を求めるなんて、どう考えてもおかしい。北斗の幸せを一番に願ってるにきまってる!と思うのが自分が普通に育ってきたからだろうか?!

幼少期から裁判の判決までとても丁寧に描かれていた。
そして、ページの量!読み応えあった。

0
2020年08月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

重い。

こんなにも衝撃的な内容とは思ってもいなかった。

両親から虐待を受け育った北斗の視点で描かれた作品は幼少期からの虐待をリアルに描き、その中で自分の生存本能と親子関係の中で生きるために重ねた重い鎧。

そんな鎧を着た北斗に人としての温もりと、家族としての温もりを与え、短くも北斗が人として過ごす時間と場所を与えてくれた里親である綾子。

ようやく1人の人間として生きる機会を与えられた北斗の幸せは綾子の死と、気がつけば綾子の為に関わってしまった医療詐欺によって再び奈落の底へと突き落とされる。

負の連鎖によって引き起こされてしまった殺人(理由がどうであれ、人を殺める事を肯定してはいけない)と、殺人犯となった北斗に寄り添う綾子の元で里子として育った血縁関係のない姉の明日実、国選弁護人の高井。

物語の後半は自ら初めて己の心に向き合い、鎧を脱ぐ北斗の心情と裁判という緊迫感を加害者の視点で見事に描ききられていた。

そこには単なる殺人事件ではなく、殺人を犯した加害者のみならず、徹底的に北斗の心の中をリアルに感じることが出来た。

リアルに伝わったが故に衝撃も大きく、非常に重たい一冊でした。

ここまで心の中を描ききる事が出来る著者の作品は今後も読み進めていこうと思う。

説明
内容紹介
両親から壮絶な虐待を受けて育った少年、北斗。初めて出会った信頼できる大人を喪ったとき、彼の暴走が始まる……。孤独の果てに殺人を犯した若者の心に切り込む、衝撃の長編小説。(解説/黒川祥子)
内容(「BOOK」データベースより)
両親から激しい虐待を受けて育った少年、北斗。誰にも愛されず、愛することも知らない彼は、高校生の時、父親の死をきっかけに里親の綾子に引き取られ、人生で初めて安らぎを得る。しかし、ほどなく綾子が癌に侵され、医療詐欺にあい失意のうちに亡くなってしまう。心の支えを失った北斗は、暴走を始め―。孤独の果てに殺人を犯した若者の魂の叫びを描く傑作長編。第8回中央公論文芸賞受賞作。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
石田/衣良
1960年東京都生まれ。97年「池袋ウエストゲートパーク」でオール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。2003年『4TEEN フォーティーン』で第129回直木賞を、06年『眠れぬ真珠』で第13回島清恋愛文学賞を、13年『北斗―ある殺人者の回心』で第8回中央公論文芸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

0
2020年04月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

虐待描写が生々しく長く続き、途中まではまるで呪いの様だった。主人公の北斗の両親の思考と行動が恐ろしすぎて読むのをやめたくなるほど。

でも、そのしつこい描写が後半の魂の劇といわれる法廷劇で効果的になっている。
ある事件の被告人となった彼の人生、そして彼自身が法廷で丸裸にされていくのだが被害者と被害者遺族の心境を鑑みても、彼が披虐待児として生きてきた事を強く痛感させられ彼の人生に寄り添ってしまう。

裁判が進んでいき様々な人間が北斗を語る。
その中で遺族の息子の乱暴と思われる北斗への言葉に胸を打たれる。その息子は、母親を殺した憎むべき相手だというのに対等の人間として北斗に言葉を放つ。橋爪北斗さん、と彼は確かに言った。
北斗は対等な人間として見られた機会が少ない。だから北斗は彼の事を永遠に忘れないだろう。
立場が違えば友人になっていたかもしれない、という一文に切なさがこみ上げた。

又、虐待をし、又させた北斗の実の母親の登場場面も衝撃的だ。更に衝撃なのはその証言内容。
愛とは何なのかを考えさせられた。また、どんなに歪でも愛は愛だという愛の難しさを感じた。

そんな裁判で気づく。人を救うのは法律ではない。法律を作った未完成な人間が必死にその法律を使っているにすぎないことを。
法律上で親子と認められようがそのままにしてはいけない親子がいるように。

北斗は様々な証言者の言葉を聴き、仕事の立場以上に自分を思ってくれる弁護士や裁判官に出会う。それが自己肯定感のない彼の心を揺さぶっていく。そして同じ披虐待児童で同じ里親の子供であった女性の存在と、彼女の「生きて」の三文字が裁判の最後まで彼を支えることに。

独房で1年間、北斗は時に寝ずに自身の心と対話をする。裁判も終わりに近づき死にたくないと恐怖にかられた彼に全力でほっとした。

彼は今まで殺されかけ生き伸びてきたにすぎない。本当の意味では、一度たりとも生きていないのだ。今まで披虐待児童であったがゆえ心を殺してきた彼から出た些細な欲望を叶えてやりたくなった。
生をと…。独房の外で鳴く鳥の名前を調べるといった、平穏な時間をと…。

判決の主文の文字を見た時、声を押し殺して泣いてしまった。真夜中でなければ声をあげていただろう。そして、改めてこの裁判の弁護士と裁判官が彼らで良かったと天に祈るような思いにかられた。神様はいるのかもしれないと思わされた。

そこまで北斗を見守る気持ちになれたのは、作者の主人公の心理描写が巧いからに他ならない。
特に証言台での生きた言葉、北斗が初めて見せる本音には魂が揺さぶられる。
遺族への誠実な自省の言葉に回心とはこの事か…と唸らされた。  

0
2017年04月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

題名で買ったけど、分厚い本だけど読み入った。
虐待されて、愛を知らず、自分の存在価値も分からずに生きてた北斗が、里親に出会って変わってくれて心が救われた。
そして犯行後の裁判でも、もう死刑でいいと生きる希望を失ってたのに、最後死刑を免れたときに涙を流してくれていて、安心してしまった。
きっといつかしあわせになれる

0
2021年05月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

主人公の幼少時からの虐待のくだりから里親との生活まで生々しく丹念に描かれるやがて殺人、殺人後の裁判のくだりも半分ほどあるので、サスペンスというよりはドキュメンタリーのように感じられた。

1点作者の癖というか同じ描写をしている箇所があり、妙に心に残った↓
----------------------
【生田友親の描写】
『~最も印象的なのは、外見ではなく穏やかな話し方だった。(中略)それは揉め事が起きた小学校のクラスを平静にさばく副校長のような態度だった。』

【平岡裁判長の描写】
『白髪の平岡裁判長は、地方の小学校の副校長のようだった。穏やかで野心はなく、その地位のまま静かに引退していく。』
----------------------
おそらく白髪で物腰軟らかな人物の印象が『副校長』なんだろうけど、生田は親の仇で平岡は裁判長なんで人物的には正反対なんですよ!

たぶん『大型犬のような穏やかさ』みたいな描写だとふーんで済んだ話ですが、副校長がいる学校に通ったことがないため「え?副校長?」と引っかかった。副校長はメジャーでないと思うんだけど。

0
2018年01月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

序盤、あまりにも残酷で目を背けたくなるような虐待描写に、読んではいけない本を手に取ってしまった、と思った。読むのを止めようかとも思った。初の石田衣良だったにも関わらず。
里親との出会い、死、詐欺、そして殺人。後半はほぼ裁判。裁判シーンの描写の細かさは見事。裁判官、裁判員、弁護士、検察官、被疑者の心情が上手い。映像を見てるかのよう。孤独だった北斗が犯した罪を裁くのは、やっぱり人なのかな。この判決によって、北斗は報われたのかな。

これをドラマ化したのかあ。見たい反面、ちょっと怖いな。

0
2017年05月16日

「小説」ランキング