あらすじ
花は桜──。古来より日本人はこの花を愛し、格別な想いを寄せてきた。里の桜、山の桜。豊かな日本の自然に育まれ、桜は各地で多種多様な姿を見せながら息づいている。都会にも咲く‘染井吉野’は、日本人の美意識を象徴する。植物としての基礎知識から、歴史・文化とのかかわりまで。心をとらえてやまない、花の魅力のありかを伝える。カラー口絵4ページ。
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Posted by ブクログ
桜はうちのマンションの庭でも避けて通れない難題。日本の桜は10種類とか、野生種と里の種とか、基礎知識編が結構利用価値が高い。うんちく本でもあるが、庭管理本を読むのに桜以外を考えるにも役に立った。
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今読むと今年の桜をもっと深く味わえる本。染井吉野の圧倒的な力と今の日本での品種間で起きている事件、そんなことを知った上で桜を見る春はきっととても深くなる。これ、この3月に読むべきです。
個人的には「御黄衣」という園芸品種を愛しています。
Posted by ブクログ
桜の下には死体が眠っているという言葉と、染井吉野は一本の木のクローンという言葉にギョッとしたことがあった。
桜が開花してから何日まで見頃が続くか知りたくて手に取った本。桜の種類、歴史、植物学など多岐に渡る事項がわかりやすく述べられ目から鱗。
桜は(染井吉野を別として)個体差があり、開花から散り終わるまで15日、半分ほど花が付いている時期は10日ほど。5度が花芽の休眠解除条件で気温が高いほど花芽の成長は早くなるという。
桜には実に多様な名前が付いているが、実は栽培種名(染井吉野、河津桜、枝垂桜)であり、日本に生えている桜は植物学的には10種類。気温によって生育できる桜の種類も異なる。染井吉野はオオシマサクラとエドヒガンの交雑で道南から鹿児島まで分布。枝垂れ桜や糸桜はエドヒガン。
染井吉野は江戸後期に大流行し日本全国に接木方式で人為的に植えられてきた。自生は難しく育っても20mほどにしかならない陽樹なので2次森林に進出しても競争に敗れて定着しない。
西行が桜の下にて春死なんと 詠んだ桜はヤマザクラ。
チェーホフの櫻の園はオオヤマザクラかミヤマザクラか。
桜にさまざまな種類があり、人との関わりを知った一冊であった。
Posted by ブクログ
初めて本格的な植物学に書物を読んだ。「桜」という日本人が大好きな植物について書かれているとあって、親近感と読みやすさが個人的にあった。
“染井吉野”が栽培品種という生物学的な分類体系とは異なった分類で呼ばれていることを初めてきちんと知ることができた。
学校や公園、街路樹としてなど様々な場面に植栽された“染井吉野”の多くが明治時代以降のもので、歴史はそこまで深くないことを初めて知って驚いた。
“染井吉野”以外にも、たくさんの魅力的な品種の“サクラ”及び栽培品種の“桜”が全国にあることを知り、実際にこの目で見て見たいと感じた。
Posted by ブクログ
桜という植物の歴史、種類などを説明する。明治期に江戸で生まれた染井吉野が花見の理想的な花木として、花見の様式を変え、現在まで定着してきたが、それまでは山桜を遠くから見るのが通常だった。染井吉野が「種」ではなく、栽培種であることの意味がやっと理解できた。父・オオシマザクラ、母・エドヒガンで、接木を通してクローンが全国に広がっていったものだという。それゆえに全国で桜開花地図が作成できるという。「種」としては日本に10種類が存在するというが、私たちの常識があまりにも染井吉野に偏り、かつ工業製品のような花に囚われていることを痛感する。これもまた日本らしさ。