【感想・ネタバレ】気候カジノ 経済学から見た地球温暖化問題の最適解のレビュー

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Posted by ブクログ 2018年10月27日

気候変動問題に関する経済学の最適解がわかりやすく解説されている。2018年ノーベル経済学賞受賞ウィリアムノードハウス著。

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Posted by ブクログ 2015年10月04日

私が「環境問題」と言う言葉に対して感情的にネガティブな反応を示すようになったのは、アルバート・ゴア・ジュニア氏の「不都合な真実」が出回ったことがきっかけでした。
あの書籍や映画など一連のものが、環境問題を胡散臭くして依頼、推進派・反対派それぞれの主張を声高にするだけで、精査の価値もないような書物が溢...続きを読むれていたことを思い出します。
それ以来、どこかに事実とバランスの取れた主張に基づいた書物はないものか・・・と探していたところに出逢ったのが本書です。
本書は一言で言うと「経済学者の目から温暖化問題を論じたもの(本書 訳者あとがき より)」です。
そのため、単なる学術的な内容ではなく、実際の社会・経済に与える問題と、具体的な対応策についてしっかりと触れられています。そして何よりも、記述内容のバランスが良く、あらゆる可能性を排除せず、自分の考え方や立ち位置も明確にし、一つひとつとても丁寧に論じられています。
さらには、著者ご自身が分かりやすく書こうとされたことはもちろんですが、翻訳者も優秀で、訳書にあるとっつきにくい文書ではなく、するするとこの大作が頭に入ってくる良書です。
本書に出逢ったことで、これまで私の中でモヤモヤしていたものが晴れ、自分の考えをしっかり持つことができました。そして、温暖化問題もまた「今の時代のことを考えるのではなく、常に今の時代の人々がいなくなったあと、100年・200年先を考えて行動する必要がある」という当然だが超えるのが簡単ではないハードルを越えていく必要があることに行き着くのだと、確信しました。
本書に出逢えたことを、心より感謝します。

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Posted by ブクログ 2015年05月06日

1900年と2000年を比べると、二酸化炭素排出量は20億tから300億t以上に増え、平均気温が0.8℃上昇した。大気中の二酸化炭素濃度は1960年代の310-20ppmから2010年には390ppmに上がってきている。問題はこの調子で二酸化炭素の排出量が増え続けた場合に2100年には平均気温が何度...続きを読む上がり、その結果としてどんな事態が起こりえるかなのだが色々なシナリオによるとさらに1〜3℃ほど上昇するとみられている。この本では世界の気温上昇を2℃に抑えるためには どういう方法が有効かを経済学的な視点から提案している。

例えば気候変動の影響をもろに受ける農業の場合、二酸化炭素濃度の上昇と1℃程度の温度上昇は収量を増加させるとかまた高温に適した品種の栽培や館外などの適応策を講じれば2℃を超えても収量は落ちないという見通しがある。しかし、それも3℃を越えると収量は減るし、地域によって損得が別れてしまう。

また気温変化に対する応答には臨界点があり例えばグリーンランドの氷床の融解についてのシミュレーションでは5℃の上昇では20%が融けるだけだが6℃になるといきなり80%以上が融けそれから温度を5℃下げても20%しか氷床は戻ってこない。正しい答えは2℃ではなく4℃なのかもしれないが、どこかに臨界点が存在する。アルベド効果と言って白い氷は光を反射するが氷が融けると黒い大地が光を吸収しより温度が上がりやすくなる正のフィードバックも起こる。

温暖化人移設に対する懐疑論も根強い。曰く、0.8℃の上昇は二酸化炭素が原因とは言えないし直近10年では温度上昇は見られず今後も上昇はしない、地球は寒冷化に向かっている、数℃の上昇は悪いことではないなど様々だ。クライメートスキャンダルについてはこの本では触れられていないが、懐疑論を後押ししたことは間違いない。ただそれでも臨界点を超えないように安全サイドを目標にするというのは納得がいける考えだ。

排出削減の方法は経済成長の抑制、エネルギー消費の削減、炭素集約度の低下(より排出の少ないプロセスに変える)、二酸化炭素の除去などが有るがここは経済学者らしく費用と便益を比較しながら提案している。まず50年後の損害が1億ドルとした際に現在削減策にいくらかけれるかを現在価値に割り引いて計算する。投資の回収では普通の計算だが現在の費用が将来の便益(損失の回避)になるので適切な割引き率が設定できれば良く著者は4%を使い14百万ドルとはじいている。政策がある程度効率的に実施された場合気温上昇を2.5〜3℃に抑えるために必要な費用は割引き率世界総所得の1%以下でこれは楽観的に思えるがアメリカをはじめとする参加率の高さが前提となる。

著者は削減策としてはキャップアンドトレードでも、炭素税でも参加国が導入しやすいもので良く、ただ重要なのは国際的に炭素の最低価格を決めることだと言う。(試算では25ドル/t)ただ燃費規制などはコストの割に効果がなく、例えば小型車よりもSUVに甘い燃費規制を導入すると消費者に大型車に乗るインセンティブを与えてしまいかねない。

費用便益分析の結果では気温上昇の損害額は温度上昇と正比例の関係に近く、費用は上昇幅を小さくしようとすると急激に上昇するため費用と損害額を足した総費用には極小値が生まれる。参加率の高い楽観的シナリオでは割引きなしで計算すると2.3℃上昇で費用は世界総所得の1%となり、消極的な国が削減策に参加しない現実的なシナリオでは3.8℃で4%となった。ただし損失を4%で割り引いて計算すると4℃で2.5%ほどになる。効率の鍵は割引き率ではなく参加率の方となる。

「生態系の価値はお金では表せない」とか「いかなる対価を払ってでも、ホッキョクグマを救わなければならない」と言う人もいるかもしれないが、アメリカ、中国、インドが参加しないプログラムは無力なので、経済的な分析は有用だ。中国でも排出権取引は始まったしそれ以前に中国人自身が温暖化はともかくPM2.5にはうんざりしている。むしろ問題はアメリカの方かも。

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Posted by ブクログ 2019年09月18日

・多くの人は、地球温暖化を自然科学の問題として捉えるが、実はその究極の原因も解決策も、社会科学の領域にある。

・人間の活動で二酸化炭素が排出され、気候変動などを引き起こす。問題は、二酸化炭素を排出する人がその対価を支払うことも、排出の被害者がその代償を受けることもない点。
└排出された二酸化炭素に...続きを読むよって損失が生じるが、こうしたコストは市場取引の外にあるため「外部性」と呼ばれる。外部性は、第三者に損害を与える、経済活動の副産物。
└二酸化炭素のような負の外部性の場合、市場で生じた歪みを市場が自動的に解決することはないため、政府が介入し、規制や課税などの措置を取らねばならない。

・システムの挙動が著しい不連続性に陥るポイントを、「臨界点」という。気候変動の臨界点には、南極などの「巨大氷床の崩壊」「海洋循環の大規模な変化」などがある。
例えば、メキシコ湾流は北大西洋に温かな表層水を運んでいるが、その流れが変わると、北大西洋地域の気温は低下する。

・気候変動に対処するための主な方策は、次の3つである。
①適応策:気候変動を阻止せず、適応する方法を模索する。
②気候工学:現代の技術を使って、地球の物理的、化学的性質に変化を与えることで、気候変動を抑制する。
③緩和策:生活スタイルを見直したり、発電の燃料を化石燃料から風力に転換したりして、二酸化炭素の排出量を減らす。

「適応策」はコストが高く、「気候工学」は効果と副作用が不明確である。長期的視点に立って考えた時、真の解決策は、二酸化炭素の排出量を減らす「緩和策」である。

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Posted by ブクログ 2018年10月24日

地球温暖化を専門とするイェール大学経済学部教授による、温暖化対策の重要性を訴える本。
地球が温暖化をしていることは事実であり、その原因は、温室効果ガスにある可能性が高いことを主張し、採るべき対策は何か、それがいかに難しいかを述べている。地球温暖化の第一人者であり、経済学が専門であるにもかかわらず、...続きを読む科学や政治にも詳しく、現在の温暖化問題の実態がわかる者としての意見には説得力がある。ただ、科学的分析については、理解が難しかった。
「経済学が教えてくれる一つの重大な教訓は、規制のない市場は負の外部性にうまく対応できないということだ」p10
「すべての経済モデルとすべての気候モデルが完全なる間違いを犯しているのでない限り、地球温暖化は今後数十年で加速し、気候の状況は近年経験したことのない水域にあっという間に達してしまうだろう」p63
「医療はアメリカのGDPの16%を占める、米国最大の経済部門となっている」p93
「地球の平均地表温度そのものは、大した懸念ではない。むしろ憂慮しているのは、気候変動が物理システムや生物システム、さらには人間社会に及ぼす影響だ」p95
「(地球温暖化対策)第一に、市場における二酸化炭素やその他温室効果ガスの価格を引き上げること。第二に、自由市場は二酸化炭素の価格を引き上げてはくれないため、国々がギャップ・アンド・トレードか炭素税制度を使って炭素価格を引き上げること。第三に、ほとんどの国が最初の二つのステップに合意し、国際レベルで互いの政策を協調させること。そして最後に、国際的な気候変動協定が、ただ乗りを抑制するための効果的なメカニズムをもつことだ」p322
「基礎科学、世界中の多くの気候モデル、仮説や根拠の検証をおこなう非常に競争の激しい科学界、そして裏づけとなる証拠の積み重ねから判断すると、地球温暖化論が正しい可能性は非常に高い。われわれは95%の確信しか持てないかもしれない。だが、それが100%になるまで待つことはできない。なぜなら、経験科学の世界では、絶対的な確信に達することは絶対にないからだ。それに、100%の確証を得てからこの問題を食い止めようとしても、そのときはもう手遅れである」p376
「進化論を否定した割合はアメリカで最も高く(54%)、次いでフィリピン、ポーランド、ラトビアという順だった。一方、進化論を否定する割合が最も低かったのは、日本だった(10%)」p383
「調査研究者たちが指摘するのは、大半の人は公共問題に関して非常に限られた知識しか持っていないということだ」p384
「人々がある問題に対して自分の意見を形成する際、自らが信奉する集団のエリートたちの見解を聞き、採用する傾向がある」p385
「自らが認識し、関心を持っている事柄を連想させるような質問の仕方をすれば、それが人々の回答を作り上げる」p385

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Posted by ブクログ 2021年05月19日

地球温暖化は確実に進んでおり、何も対策を講じなければ、地球システムにとっては危機的な結果をもたらす。
その根拠となる科学的なデータの由来は、今後の経済成長や温室効果ガスの排出量など不確実性を含んでいる。それでもデータは地球温暖化の進行を示しており、経済学はその損害額を推定する。データに不確実性がある...続きを読む中で、2℃上昇を抑えるというのはまさに政治的な合意の結果。

何となくは理解した気がするが、専門的内容であるため難しい。

炭素税、キャップ・アンド・トレード

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Posted by ブクログ 2019年07月26日

自身の仕事柄、非常に期待して読んだが、原著が2013年だけあって、既に世の中に浸透している論点が多い。そういう意味では、目新しくはなかったが、目新しくなくしたこと自体、著者の功績によるもの、ということかと思いました。

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Posted by ブクログ 2019年02月20日

地球温暖化が厄介なのは、地球規模の外部性だから。
GDPの増加率に対する炭素排出量の比率は減少している。

人口増加率を下げず、生活水準の上昇率を抑えないで、炭素強度を低下させる=脱炭素化 が可能。

温室効果の強化には収穫逓減の法則が働く。二酸化炭素の増加分は前と同じ割合で温暖化に進むわけではない...続きを読む

閾値を超えると、一気に崩壊する。温暖化は3度の上昇といわれている。3度の上昇が300年続くと閾値を超える。

今までの変動よりペースが速いことが問題。

人為的に管理されていない資源に頼ることが文明の崩壊の原因となった。

ぼやけた望遠鏡問題=遠い将来はぼやけた望遠鏡で見るしか方法はない。

温暖化によってハリケーンの強度が増す。
海洋中の二酸化炭素濃度が増して酸性化する。

過去にも野生動物の絶滅はあった。2億5000万年前には、全生物種の90%が死滅した。今回の温暖化では25%が絶滅する予測。

新薬は天然物が開発に欠かせない。天然物由来のもの。

農業が占める割合が延びているのは、コンゴ、シオラレオネ、中央アフリカ、ザンビアだけ。それ以外は縮小傾向。

気候工学=温暖化を抑制する人工的な方法を研究する>ジオエンジニアリング。
モラルハザードを含む様々な問題があり、危険な副作用の可能性もある。二酸化炭素の排出を減らすほうがよい。
CCSの課題は、コストと貯蔵。地下の炭鉱後、深海貯蔵など。
炭素を食べる木の開発。

全世界が一致して協力する場合、コペンハーゲン合意の2度の増加にとどめることは比較的低コストでできる。1度にすると、コストが跳ね上がる。全世界が参加しないと難しい。タイミングが遅れてもコストが跳ね上がる。ほぼすべての国が速やかに効率的に取り組みに参加すれば可能。

炭素税が理想の税金になる。
炭素税とキャップアンドトレード。根本的に同じ。炭素税では危険水準と税率の決め方が不明。
不参加国には、輸入品に関税をかける。
京都議定書のような強制力がないと、ただ乗りの誘惑に勝てない。カナダの脱退の例。

地球は温暖化していない、という主張に対しては狭い時期で判断しているため。
50年先送りすると、コストが高くなって費用便益計算では不利。

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Posted by ブクログ 2015年07月11日

適正な炭素価格の決定、そして炭素税の設定とキャップ・アンド・トレード制度の導入かぁ。後半、その困難さも含めて必要性を繰り返し説かれたが、ついていけなかった。経済学の視点から記されているのが売りなのに、科学的な解説の方が分かりやすい。一旦発生した二酸化炭素は極めて長期滞留するから厄介で、核廃棄物に近い...続きを読むこと。大気中の二酸化炭素は海水に急速に溶け込み、海洋の酸性化も深刻な問題であること等々。しかし、地球温暖化に何とか歯止めをとは思いつつ、自分一人がどうこうしても、と言うより、自分一人くらい、という甘えに勝てんなぁ。

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