【感想・ネタバレ】イスラーム 生と死と聖戦のレビュー

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Posted by ブクログ 2023年11月27日

イスラーム 生と死と聖戦
著:中田 考
紙版
集英社新書

良書、わかりやすいテキストだと思いました。

世界第2位の宗教人口を誇るイスラム教、第1位は、キリスト教で23億、ついで、イスラム教が18億
日本では、イスラム教に関する情報があまりにも少ない。世界を理解するためには、キリスト教と同様、イス...続きを読むラム教もおなじくらい理解する必要がある

筆者は、東大文学部イスラム学科の1期生で、イスラム教徒、カイロ大で哲学博士、いろいろ物議をかもした方であるが、どうして日本はこういう人を
大事にできないのか、と思いました。

気になったのは、以下です。

・インジャーアッラー 神の御心のままに、自分の力でできるだけがんばるが、人間の力の及ばないところは神のお力添えそのままに という言い訳であり、謙虚な美徳とあり

・剣かコーランか 正しくは、剣か、税か、コーランか。税を収めれば無理やりイスラム教に改宗しなくても、子々孫々まで永住権がえられます。
・イスラムテロは、ジハードとはいいがたい、第一、イスラム教は、自殺を禁止している
・イスラームは、地域や民族を超えた普遍宗教であり、ムスリムには、国籍も血統も関係なく、誰でもなれます。
・ムスリムになるには、アッラーを信じるだけでいい。入信名簿もなければ、報告義務もない。だから信徒の正確な数はわからない
・ジハードとは、自分の弱い心を乗り越えるという意味がある。これを、「大ジハード」という、一方で、武力による戦闘は、「小ジハード」という。一般には、ジハードとは、小ジハードをいう
・ジハードとは、異教徒に対する戦いであり、ムスリム同士の戦いはジハードとは言わない

・イスラーム法とは、神の定めた掟のことである。イスラーム圏はイスラーム法の枠組み内で、多文化、多民族、多宗教が共存する広大な法治空間のことをいう

・神の決めた掟、イスラーム法は、アラビア語で、シャリーア、という
・シャーリアは、神の啓示の記録であり、①クルアーン(コーラン)と、②ハディーズの2つがある。
・クルアーンとは、最後の予言者であるムハンマドの言葉をまとめたもの
・ハディースとは、ムハンマドの言行を弟子たちが書き留めたもので、7300以上のハーディスがある

・イスラームは、5つの行為からなっている。①信仰告白(ラーイラーハイッラー、ムハマンドゥンラスールッラー)、②礼拝、③ザカー(浄財)、④ラマダーンの斎戒、⑤メッカ巡礼
・イスラーム法学、フィクフ。5つの範疇がある ①義務行為(しなければならない)、②推奨行為(したほうがいい)、③合法行為(してもしなくてもいい)、④忌避行為(しないようがいい)、⑤禁止行為(してはいけない)
・イスラームにおいて、ムスリムでなければいかなる義務の生じない。異教徒は、5つの範疇の外にある。ただし、イスラームを侮辱するようなことを行ってはならない

・ハラルとは、許可という意味です。ハラルのマークは、イスラーム的にOKということです

・クルアーンの中で、現世で死んだあとに天国で生きているとされるのは、実は、殉教者だけです

・イスラームには、人間に対する罪と、神に対する罪とがある
・神に対する罪とは、神だけが赦すという権利関係なので、人間はそれには関わらない。神に逆らっても、そもそも他人が非難するようなことではない

・政教分離とは、キリスト教世界で、王権と教会、カトリックとプロテスタントの宗派間対立を調停するためのもの、イスラームには、政教分離という考えはない
・政教分離をすれば問題が解決するというのは、現代の迷信だ

・ムハンマドは最後の預言者で、神の法をもたらしているもの、最後の預言者なのでムハンマドの教えは1000年たったいまでも、変わることはない

・ダル・アル=イスラームとは、イスラーム圏という意味、ムハンマドとその後継者たちが最初につくった、イスラーム国家という意味です。
・イスラームでは、神は1人、法はひとつ、預言者の1人なので預言者の代理人であるカリフもまた1人しかいない。
・1924年最後のカリフが退位したのち、現在までに、カリフが存在しないことが自体が、イスラーム法上の一番の問題である。
・カリフの再興、ダール・アル=イスラームの復元ができるかどうかが、イスラーム世界の抱える最大の問題です。

・人間が人間を支配するのはいけない、国家も民族も、人間が人間を支配するという不正を隠蔽するためのベールにすぎない。
・イスラームには教会もなければ、公会議もないし、教皇もいない。モスクとは教会ではなく、単なる祈る場所のこと、だからなにもない。
・メッカの方向に向かって祈るのも、人々がばらばらに祈ると収拾がつかなくなるため、クルアーンにメッカにむかって祈れと書いているからだけ

目次
序章 イスラームとジハード
第1章 イスラーム法とは何か?
第2章 神
第3章 死後の世界
第4章 イスラームは政治である
第5章 カリフ制について考える
終章 「イスラーム国」と真のカリフ制再興
解説―自由主義者の「イスラーム国」論~あるいは中田考「先輩」について

ISBN:9784087207644
出版社:集英社
判型:新書
ページ数:240ページ
定価:760円(本体)
発行年月日:2015年02月
発売日:2015年02月22日第1刷
発売日:2015年02月22日第2刷

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Posted by ブクログ 2017年08月22日

北大生のシリア渡航計画、ISIによる湯川遥菜さんと後藤健二さんの
拘束・殺害事件で一躍注目を浴びたのが本書の著者である中田孝氏。

東京大学文学部イスラム学科の一期生であり、そのかなで唯一イスラム
教徒になった人。勿論、日本でも有数のイスラム法学者である。

その中田氏が宗教に対する知識のな...続きを読むい人にも分かりやすくイスラム教を
解説している。

日本ではいわゆる「イスラム原理主義者」や「イスラム過激派」と称される
人や組織が報道されることが多いけ。しかし本来、イスラム教徒は寛容の
宗教だと思うんだ。

中世の十字軍だってキリスト教徒側が勝手に「異教徒征伐だぁ」って意気
込んで始めた。イスラム側としては寝耳に水だったはずだよね。だって、
キリスト教と違って宣教活動はしない宗教だから、キリスト教徒を勧誘した
なんて事実はないんだから。

スルタンが君臨したオスマン・トルコだって基本はイスラム教の帝国では
あったが、他の宗教も弾圧はしないとのゆるい姿勢だった。でも、スルタン
直属のイエニチェリ軍団は怖いけど…ボソ。

まぁ、イエニチェリ軍団の話は置いておくとして。だから、原理主義者や
過激派の行動には違和感を覚えていた。いや、それほどイスラム教に
詳しい訳じゃないんだけど、アラーさえ信じていればいいってのが基本
なんじゃないかと思っていた。

本書はそんな私の漠然とした感覚を裏付けてくれた。「剣かコーランか」
は間違いで、「剣か税かコーランか」なのだそうだ。税金さえ払えば異教徒
でも改宗する必要はないのだとか。

「剣かコーランか」じゃ随分とニュアンスが違っちゃうよね。改宗を迫って
いるように聞こえるもの。寛容さまるでなしになっちゃう。

それにジハードの解説。ここだけでも読む価値あり。原理主義者や過激
派の口にするジハードが、本来のジハードといかにかけ離れているか
が分かる。

「ジハードとは、イスラム教徒一人ひとりの心の戦いなのだ。イスラム教徒
でも誘惑に駆られることはある。たとえば、酒を飲みたいとか、たまには
羽目を外してみたいとか。そんなとき、堕落しそうになる自分を諌める心の
戦いが本当の”ジハード”だという。己との戦いなのだ。銃で撃ちあい、自爆
テロで敵を倒す戦いなど、決して聖戦と呼ばれるものではない。」

既に亡くなって久しいが、アフガニスタン北部同盟の最高指導者だった
マスードもジハードに関してこんなことを言っていたんだよな。

尚、本書ではISに対する見解も掲載されている。ISとのパイプを持っている
中田氏だが、あの組織に対してはかなり否定的な評価をしている。

一部の暴走したテロリストたちと、一般のイスラム教徒の方々を混同しない
為にもイスラム教の基本を知る為に押さえておきたい1冊だ。

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Posted by ブクログ 2017年04月17日

いや~おもしろかったわ。この人のことを知ったのが、3年ほど前のISにより邦人男性が殺害されてしまった時。その時は「なんとも怪しげな人だな」」と思っていたが、どんな人なのか興味が出てきてググったりしてみた。
その後、偶然自分が欠かさず聞いているMBSの「辺境ラジオ」にゲスト出演。その時初めてまとまった...続きを読む話をこの人の口から聞いて、その話し方と内容から「ちゃんとしたクールな学者(ムスリムの)」 とわかり、著書を何冊か日本に行ったときに買ってきた。
カリフ制の再興とかはよくわからないけど、言っていることは筋が通っている。現実的でありつつも理想をちゃんと語れるナイス・ガイだと思う。
人の移動を制限しない、社会が実現されたらなんと素晴らしいだろうか、と思わずにはいられない。

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Posted by ブクログ 2016年02月06日

イスラームの論理を内在化させた中田考さんがイスラームについて書いた本なんだけど、今まで読んだ彼の本の中で一番わかりやすくまとまっている。
イスラームの大事なのは法だって話とか、カリフ制は独裁制じゃないとか。今の領域国民国家の問題は人間の移動が自由でないことって指摘は目を開かされた感じ。イスラームが共...続きを読む産主義に並ぶような理想を目指す宗教と捉えるようになった。

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Posted by ブクログ 2015年05月05日

中田考氏の純粋でかつ平易で分かりやすいイスラームの世界観の解説。これがムスリムの一般的な解釈と一致しているか分かりませんが、イスラームが目指す理想も理解できるし、理想が引き起こす危険性も理解しました。

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Posted by ブクログ 2022年11月18日

中東の専門家としての外から目線のイスラームではなく、ムスリムとしての内から目線の著者が、イスラーム法学者の立場からジハードの解釈含め、この世界はどのように解釈すべきなのか、をイスラーム教を知らない人(異教徒や無神論者等)向けに、わかりやすく解説した著作。

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Posted by ブクログ 2022年10月28日

この国の統治権力に正当性がないように現在のイスラーム社会においても正当性のない政治が行なわれていることを知る。だが本来のイスラム教は知れば知るほど冷静で平和でプレーンなものだった。
イスラーム法は法律ではなく法である。善悪と存在がアッラーによって保障されている。そしてアッラーとは自然界と人間界を貫く...続きを読む普遍原理である。そのアッラーへの信仰の上に人は暮らす。つまり自然法が信仰によって強化されている。ただ単にそれだけの話なのだ。そして法が時の統治者によって変えられることもない。これほど当たり前で単純な政治システムはあるだろうか。イスラム法の上に時代に合わせて法解釈が積み上がるだけである。元が寛容で精緻なだけ、そういった解釈も寛容に作られる。イスラム教に抱くイメージと違う。神に馴染みのない日本人には重要な視点を与えてくれる本だった。

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Posted by ブクログ 2017年12月18日

前提が随分と違うことをきちんと踏まえた上で読めばひとつの視点、世界観として示唆に富んでいるように思う。印象としては話のできる人だと思う。前提に大きく隔たりがあるので物騒な話と決め付ければ安易に退けることもできるだろうけど、こういう視点や世界観も視野にいれることは大切だと思う。

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Posted by ブクログ 2015年04月13日

イスラームは神が一人、法がひとつ、人間は法に従う。だから領域国家や統治機構は必要ない。異教徒からの攻撃にあった場合、イスラーム社会を守るための防衛がジハード。昨晩観た大河ドラマ花燃ゆで、吉田松蔭は、開国を迫る異国から日本国の独立を守りたいがために開国をすすめる老中の殺計画を企ててしまうほどの焦り高ま...続きを読むる気持ち(至誠)が誰にも届かないことを野山獄で悲しみまだ自分の努力が足りないと叫ぶ…ドラマと本の印象がかぶっているように感じました。

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Posted by ブクログ 2018年10月21日

イスラム教信者からすると、非信者はどうせ地獄に落ちるんで啓蒙する必要ないんだけど、そこは親切心で教えてくれている、というイスラム教の「感じ」が伝わってきて面白かった。

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Posted by ブクログ 2023年11月28日

実際にムスリムであるイスラーム学者の著者がわかりやすくイスラームについて解説してくれる本。イスラーム世界がいわゆる西欧的な「近代国家」の仕組みとは異なっていること、カリフの不在とISの解釈についてなど、ムスリムの立場からの見解は参考になった。いま騒がれている中東あたりの地域だけでなくムスリムは世界中...続きを読むに数多くいると思うけど、カリフ不在やイスラーム法について多くのムスリムたちがどう考えいるのか?は気になるところ。

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Posted by ブクログ 2023年07月23日

イスラム教でもキリスト教でも、その他多くのどんな宗教であっても我々日本人はそれを正しく知らないと、受け入れ難いものとして壁を作ってしまう。そもそも日本という島国で外界から遮断されてきたからなのか、昔ガラパゴス携帯(ガラケー)と呼ばれていた日本独自仕様に陥った様な、自分たちの仲間意識を大切にする様であ...続きを読むる。だから、外部からやってくる思想・信条には中身を知ろうとせずに、「よくわからないもの」として進んで触れよう知ろうとはしない。一方、音楽や食べ物、映画、ファッションなどについては、これまた確たる嗜好は無いのかと思うくらい、柔軟に世界の流行を取り入れて熱狂的にハマっていく。宗教の世界はそうした受け入れやすくわかりやすい見栄え、聴こえ、味わいなどとは異なる、精神世界の話だ。よって余程の興味や、現状の生活とは異なるもの(フェーズとでも言うべきか)への憧れや尊敬が生まれない限り、その扉を開くのは難しい。
近年イスラムの中でも過激派グループが起こすテロのイメージと混同されてしまう事で、益々イスラーム世界を解らないことに起因する恐怖感や抵抗感が生まれてしまった。雑誌やニュースは物事のある一段面のみを切り取って、あたかもそれが全体の様に見せるから尚更タチが悪い。極端な事を言えば、日本人が箸を使ってご飯を食べるからと、インド人が手でナンを食べるのを否定するだろうか。そんな事はない。美味しいカレーを食べるという明確な目的があれば食べ方をしっかり学びそれに習う事ができるし、それだけを見て不衛生だからと否定したりせずに済むのだ。知る・知っている事の重要性は高い。
本書はそうしたイスラーム世界観を知り、相互に理解し合える土壌となってくれる。何故イスラームの人々が聖戦を叫ぶのか、そして行き過ぎかもしれないテロに結びついてしまうのか。そもそもイスラーム社会に暮らしていくにはどの様な習慣や規則があるのか。そして彼らが崇拝するものとは何か、死後の世界観などあらゆる角度からイスラームを見る事ができる。
そして現代イスラームの課題となっているカリフ不在問題と何故カリフが必要なのか、イスラーム国のバグダーディは本物のカリフになり得るのか、カリフ成立の背景から、あらゆる角度からこの問題に踏み込んでいく。

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Posted by ブクログ 2017年07月27日

読み終わった感想は「…よくわからん」でした。

とてもとても噛み砕いて書いているのはわかるんですが、それでも前提から「???」となってしまいました(自分自身の理解力の問題とは思うのですが)。

「西欧的な考え方とは土台からして異なる文化なんだろうな」と、少し踏み込んで実感できたのは大きな収穫でした。...続きを読む

あと、最近見たイスラームの人々のドキュメンタリーで、2人の人物が言い争いをしているシーンがあったのですが、片方が「神の名の下に」と言った途端、もう片方が相手の話を神妙に聞く…といった場面がありました。
この言葉の背後にある意味を考えるとそりゃ黙るな、と思い、少しでも理解できたのかなと感じています。

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Posted by ブクログ 2016年10月24日

イスラーム 生と死と聖戦

イスラーム神学が、世界五分前創造仮説や多世界解釈を用いていることは面白かった。現に、今の量子力学では、多世界解釈も考えられるもので、このようにイスラームも
そのような世界観を創出していたと知り、驚いた。
全般的に、イスラームのゆるいつながりの観点から見ると、現在の国民国家...続きを読むというものがいかに厳しい縛りであり、人々が知らず知らずのうちのリヴァイアサンに服従していることがわかる。イスラームについては世界史でかじった程度で、あまりわからなかったが、中田さんの記述はとても分かりやすく、入門書として適していた。

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Posted by ブクログ 2017年01月09日

ムスリムの死生観の解説本。ISによるテロが世界中で頻発している昨今をイスラムの歴史やコーランの解説を通して考える。イスラムの考えではすべての人間が法に従うものであるという。ここでいう法とは国家の法律ではなくコーランのこと。また著者は最後のカリフが1924年に退位したことで、90年にもわたってカリフが...続きを読む崩壊したことについても指摘する。カリフとは預言者ムハンマドの代理人でイスラムの中で正当性のある唯一の政治的指導者。その不在が今の混沌をもたらしている。
以下個人的感想。今の混沌は指導者不在の中でイスラム原理主義者がコーランを勝手に解釈してドンパチやっているものと理解した。解決の糸口が見えない複雑な世界情勢に置かれていると感じる。だからといって極端な話に向かってはいけない。差別を受けて死に場所を求めている輩に対してトランプ氏の排他主義は解決どころか情勢を泥沼にしてしまうのではなかろうか。

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Posted by ブクログ 2016年05月15日

今起きていることをイスラームの側から理解したいと思い読んでみたが、今ひとつ釈然としない。
“異教徒”の思考に毒されているからなのか。

50頁に以下の記述があった。
原理原則としては反論のしようがないが、如何様にも自身の行為を正当化できるという点では非常に都合がいい考え方だと思う。
--------...続きを読む--
そもそもイスラームは解釈に開かれた宗教であって、法源はシャーリアだけですから、信者一人ひとりが『クルアーン』と『ハディース』を読んで、そこから自分自身で判断していくのが望ましい。イスラームとは本来そういうものなのです。
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Posted by ブクログ 2015年12月20日

単純にイスラームの世界のことを知ってみたいという気軽な気持ちで読んだので、ショックを受けました。多くの日本人が持っているであろうイスラームに対するステレオタイプが捨て切れず、理解し難い内容でした。

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