【感想・ネタバレ】笹の舟で海をわたるのレビュー

あらすじ

『本の雑誌』が選ぶ 2014年ベスト10(ノンジャンル)の第1位 獲得! ! 終戦から10年、主人公・左織(さおり)は22歳の時、銀座で女に声をかけられる。風美子(ふみこ)と名乗る女は、左織と疎開先が一緒だったという。風美子は、あの時皆でいじめた女の子?「仕返し」のために現れたのか。欲しいものは何でも手に入れるという風美子はやがて左織の「家族」となり、その存在が左織の日常をおびやかし始める。うしろめたい記憶に縛られたまま手に入れた「幸福な人生」の結末は――。激動の戦後を生き抜いた女たちの〈人生の真実〉に迫る角田文学の最新長編。あの時代を生きたすべての日本人に贈る感動大作!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

本当に素晴らしい小説だった。
一人の女性と、その周辺(おもに家族)の、戦時中の子供時代から平成の老後を描いた長い物語。
主人公の左織は、戦時中には家族と離れて疎開を余儀なくされ、父親も戦争で亡くしているが、それ以外はごく平凡で、親からも兄姉からも愛されて育った普通の女性。特に悪いこともしていないし、特に何かに努力して自分を高めようともしていないけれど、まぁ昭和の時代の「普通の母」たちはみんなそんなものだったんじゃないか…。主婦(妻そして母)として、一生懸命家庭を守り、子育てをしている。なのに、なんだかうまくいかない。まず、第一子である長女百々子と異常に相性が悪い。あまり可愛いと思えず、第二子の男の子柊平の方がかわいいと思ってしまうことを自覚している。
この子育て奮闘記に、昭和時代の社会のできごとがいろいろ絡めてあるだけでも面白いのだが、ここに「風美子」という個性的な女性が深くか関わってくる。風美子は疎開中に左織に助けてもらったと言って、そのお礼がしたかったというが、左織自身はまったく覚えていないし、風美子をきっかけに忘れていた疎開中の出来事を思い出すと、リーダー格の上級生に言われるがまま、自分もいじめに加担していたような気もする。肝心なことがよく思い出せずに苦しみもする。いつも自分では何も決められず、誰かに決めてもらっていた。年の離れた兄や姉が、「あなたはいいから」となんでも先にしてしまったせいでもある。それで母が死んだとき、姉のすることにちょっと口をはさんでみたら、姉とは決定的な溝ができてしまう。(これは小説中特に、とてもとても悲しいエピソード)。
夫を信頼できずにいるのも、娘の百々子とうまくいかないのも、風美子のせいにしてしまいそうなできごとが数々出てくる。
読者も、「風美子っていったい何者なの?」と佐織と一緒になって疑いそうになる。
でも、風美子は風美子なのだ。左織が左織であるのと同じように。自分の人生は、他の誰のものでもない、自分の人生なのだ。それに気づくのが、左織は、遅すぎたのだろうか?
もし「何でも人のせいにしようとして自分で努力しなかった」せいで、「娘から決定的に嫌われ、息子にも裏切られ、家族がみんな去ってしまい、一人ぼっちになった」という物語の結末であるならば、あまりにも重い代償だと思わざるを得ない。だって左織は、勇気がなく、平凡を望んでいただけで、ごくごく普通の主婦ではないか。あまりにも悲しすぎるではないか。
でも、左織の物語は続いていく。まだ人生は終わったわけではない。どうやって生きていくのか、どうやって死を迎えるのか、自分で決めることができる。自分の人生は自分の人生なのだから。

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2021年07月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ああやだなぁ分かる分かる、と凡庸で主張のない自分に重ねて読んでしまった。加えて昭和が古い時代になっていく感覚や戦争時のこどもたちが受けた凄惨な体験の記憶。全部混ざって読んでてつらかった。
左織の人生の終盤での風美子の受け入れ方も納得。人生がここまできたら、諦めと悟りで心穏やかになるよなと思う。凡庸というか、素直な人間なら尚更。

風美子については、10歳にも満たない小さな女の子がいじめと虐待を受けて、選んだ未来が人生に勝つことって、そりゃ輝いて見えるよなぁと。強い。そして、左織の猜疑心のフィルターをはずすと、彼女はとても優しい。
でも、わたしもまんまと後半まで猜疑心を持って彼女を見ていました。不気味だった。

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2025年07月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

とりとめもない左織の思い出話から、昭和を生きた世代の味わった苦労と戦後の大きな変化を肌で感じるようだった。
忘れたくても忘れちゃいけない、必死になって生き伸びた時代なのだと思う。運命に抗いながら、運命の中でしか生きられないような錯覚を何度もした。生きて生きてその先に何が待っているかはそこに到達した人にしか分からないのだと思った。
変わっていけない沙織を見ているのは正直苦痛だったのに、やがて人生を悟ったようになっているのを見ると切ない思いが押し寄せた。思わず鼻の奥がツンとなるラストだった。

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2022年08月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

どうか最後にどんでん返しがありますように…という思いだけで最後まで読んでしまうくらい、終始うっすら暗い話だった。
何十年もそばにいるのに、心の底ではふーちゃんを信用していない。家族も離れてしまった。
寂しいが連続する展開だった。
救いが欲しかったなぁ。

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2022年02月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

心がえぐられる気分で読んだ。

ずっと、どこか不幸な空気が漂う小説だった。短い間で読んだので、読み終わった今は1人分の人生を体験した気分。

選択肢が今よりずっと少なかった頃の時代の話。きっと、似た人生を過ごした人がいたんじゃないかなと思う。

娘のことを好きになれなくて、でもそれを見栄のために隠そうとして、自分も将来母親になったらそうなるんじゃないかとゾッとした。子供を愛せなかったらどうしよう。

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2021年12月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

生々しく感じた。ずっと主役の左織の心の中。時代背景があり、感情移入しやすかったからか。読後感は少し重ため

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2019年03月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

デパートで出会った2人。実は前に会ったことあるのよ、と言われるが全く覚えてない。その後義理の姉妹になり自分が幸せなのか不幸せなのか悩ませられながら生きていく…。何かどんでん返しを期待しながら読み進めていたが、え、終わっちゃった。って感じでした。昭和から平成への時代の移り変わりのあたりも、戦後から急に展開されたって感じで懐かしむ間もなく平成に突入しちゃった様でした。んー。

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2022年03月08日

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