【感想・ネタバレ】わたしが出会った殺人者たちのレビュー

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2017年03月01日

18名の殺人者たちを取り上げ、その取材方法からインタビュー内容、佐木さんが感じ取ったそれぞれの事件に対する思い。
それらが1冊にまとめられた本。
「復讐するは我にあり」が初めての犯罪小説だと思っていたけれど、佐木さんはそれ以前に「偉大なる祖国アメリカ」という本を書いていた。
沖縄で起きた少女殺害事件...続きを読むを扱った小説らしい。
多分にフィクションも入っているようだけれど、根幹を成す部分は取材に基づいているようだ。
残念ながら取りあげられた事件の多くをリアルタイムでは知らない。
けれど、犯人の多くが「自分は理不尽な扱いを受けている」と感じているところが興味深かった。
世の中には思うようにならないことが多い。
というよりも、ほとんどが自分の思惑とは違う方向へと流れていってしまうのがあたり前だ。
何をきっかけに人を殺してしまうような犯罪に手を染めてしまったのか?
元々そういう本性を持ち合せていたのか、それとも後天的な環境がそうさせたのか。
読み終えて感じたのは、やっぱり理解できない・・・だった。
獄中婚をする死刑囚もあり、誰かを大切に思うことで人間らしさを取り戻していくこともあるらしい。
でも、それでは遅すぎる。
奪った命は二度と戻らないのだから。

永山則夫を取り上げた章が特に興味をひいた。
高裁で無期懲役の判決を受けた永山に対し、検察側は「判例違反」として上告をする。
論点は次の3点だった。
・4人も殺した被告人が死刑を科せられなかった前例がない。
・「いかなる裁判所がその衝にあっても死刑を選択するであろう程度の情状がある場合に、限定されるべき」との見解は以後の死刑判決のできなくする。
・世論や被害感情からみて無期懲役は納得できない。
高裁では
・永山の年齢が19歳を越えたばかりだったことと、精神的な成熟度において18歳未満の少年と同視しうる状況だったと認めらられる点。
・収監中の永山に大きな変化があらわれたこと(反省と贖罪の気持ちが著しい)。
・印税を被害者の遺族におくり、慰籍の気持ちをあらわしている。
を理由に、被害者の冥福を祈らせつつ、生涯を贖罪に捧げしめるのが相当という意見だった。
だが永山は結局死刑となる。
そして現在、「永山基準」というあらたな基準が前例として使われることが多い。
判例主義の裁判において、永山の起こした事件がひとつの指針になっている。
人として最低限の環境を与えられるのは憲法で定められた国民の権利だ。
けれど、永山にはその最低限の環境すら与えられなかった。
時代が違う・・・と言ってしまえばそれまでなのだけれど。
それぞれの事件がどれも凄惨で極刑もやむを得ない、と思うものだった。
時間をかけて取材をし、ノンフィクション・ノベルという分野を作り上げた佐木さんには敬意を表したい。

「殺人者と他の人間との違いは程度の差であって、種類が異なるのではない」(コリン・ウィルソン)
佐木さんはトルーマン・カポーティの「冷血」に強い刺激を受けたと書いている。
上記の言葉は、イギリスの評論家コリン・ウィルソンの「殺人百科」に書かれている一文である。
道を踏み外すかどうかは、結局その人自身にかかっているのだろう。

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