【感想・ネタバレ】最澄と空海(小学館文庫)のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

最も澄める人ー最澄   空と海のような人ー空海

誰がつけたが知らないが、名前が人柄のすべてを物語っている。この偉人二人が同時代に存在した経緯とかを知ると、何かに導かれているようにしか思えない。

 タイトルの通り最澄と空海の詳しい概略をまとめてくれている本。これだけで二人のことがだいぶわかる。これに加えて、司馬遼太郎や陳舜臣の空海の伝記小説を読むことを進める。最澄の伝記小説はなんか無い。誰か書いてくれないかな。
 天台宗と真言宗の教義についても簡単な解説があるんだけど、そこはやはりハードルが高い。これ以上ないくらい砕いてくれているけれど、素人には難しい。とはいえ、そこを飛ばして読んだとしても非常に勉強になる一冊。

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p61  最澄と空海の出会いの意義
 最澄にとって空海は、自分が学ぶことのできなかった密教の知識を唐から持ち帰ってくれた恩人。
 空海にとって最澄は、無名だった身を取り立ててくれた恩人。彼がいなかったら唐から18年も早く帰った罰を免れがたかったであろう。もはや命の恩人。

p72~79  法華経について
 法華経は、声聞(釈迦の教えを直接聞いた教徒)や縁覚(釈迦の直弟子ではないが仏教徒として修業する者)が救われる小乗仏教とすべての民が等しく救われるという大乗仏教を統一すべく登場した一乗仏教を説いている。

p86  徳一
 会津若松、瑠璃光山勝常寺に建つ像がある。最澄と大論争を繰り広げた南都仏教の代表が、徳一。
 よく知られていない人物らしいが、会津というだけで興味がわく。

p122  親鸞は最澄の門下
 肉食妻帯OKの宗派を作って有名な親鸞和尚。かれも延暦寺から出てきた。
 最澄は真の信仰を人の内面に求めた。戒律に囚われて無を目指しているのは本末転倒。外面よりも内面を磨くことに注力せよ。言いかえれば、心が完成されていれば体裁なんて気にしなくてもよい。
 これを拡大解釈していった結果、親鸞に行き着く。
 「善人なをもて往生をとぐ、いはんや悪人をや」

p136  未完の最澄
 最澄は性格からいっても学問の面からも未完である。しかし、それ故にその弟子が師の学問を完成させようと尽力し、深め、後世に継いでいくのである。
 逆に空海の真言宗は、空海自身が天才であるあまり一代で完成されてしまった感が強い。

p147  森と神道と仏教
 日本に密教が浸透したのは、日本古来の自然信仰が関わっていそう。密教はヒンズー教に強く影響された自然に関わる仏教である。

p257  仏教の変質

p347  不動明王が日本で好かれるわけ
 アイヌの土着宗教では火の神が珍重された。火の神はすべての神々と人をつなぐ役割を持つ。不動明王も大日如来の現生身であり、憤怒を表し火を背負っている。日本に古来からある形と似ているから受け入れられやすかったのだろう。

p364  天台宗vs真言宗
 天台宗は可能性⇔真言宗は完結
 これは最澄と空海の人柄そのままである。

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 悲しみの人、最澄 ⇔ 自信にあふれた人、空海
 
 こういう二人の対比は面白いなぁ。いくらでもでてくるんじゃないだろうか。


 泰範をめぐる略奪愛は本当にもぉ…

0
2014年06月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

歴史の教科書では、どっちが何教を広めた偉い人
というのを覚えさせられるぐらいが関の山だった最澄と空海。
無宗教な上、6年間ミッションスクールに通っていた自分にとって
仏教というのはまったくの未知の存在。
入門編としてとてもわかりやすく、面白かった。

シュメールの神話で、都市文明を作った英雄ギルガメシュが
最初になしたことは森の神の殺戮、というのは興味深い。

自分がどうしても仏教に馴染めない所以として
この中にもあるがすっかり葬式仏教になったせいなのだろうと思う。
逆に山は神と死者の住処であるという本来の考え方には
すんなりと入っていける。

戒律の軽減化というのは、広めるにあたり大切かもしれないが
仕来たりを守ってきた者からすればとんでもない異端であり
反発するのも当然と言えるだろう。
キリスト教を学んだときも感じたことだが
なぜ他の宗教をけなすのだろうか。
愚問と言えば愚問なのだが。
どうしてもそのあたりへの疑問が、宗教というものを
異質にしてしまうように思う。

入門編として次へのステップにするには、
丁度いい難易度の本だと思う。

0
2011年07月13日

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