【感想・ネタバレ】蚊取湖殺人事件のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

好きな作家は多々いるが,最も好きな作家は,やはり泡坂妻夫である。どの作品も,文章も肌に合うし,世界観,キャラクター,設定などもいつも感心してしまう。もう読み尽くしていたと思っていたが,古本屋で見たことがない文庫を見つけたので購入。蚊取湖殺人事件は別のアンソロジーかなにかで読んだことがあり,ミステリとはいえない作品もあった。「雪の絵画教室」と「銀の靴殺人事件」,「秘宝館の秘密」が初めて読む泡坂妻夫のミステリだった。三つ読めれば十分かな。泡坂妻夫ということだけでも★3は確定。

○ 雪の絵画教室
 渡辺恒という画家のアトリエでミケランジェロ六郎というテレビでも人気の画家が殺害される。田中裳所という女性の視点から事件が描かれるが,田中裳所という女性の設定も,その彼氏役の野川幸久という男の設定もなかなか味がある。とはいえ,これらの設定が生かしきれていないのは難点。犯人が馬野順吉という大量殺人事件の犯人で,動機がミケランジェロがテレビで書いた風景画から,自分の秘密がバレるのを防ぐためという真相はぶっとんでいる。文章の上手さはさすがだけど,ミステリとしてのできはイマイチか。

○ えへんの守
 マジックをテーマとしたちょっといい話。文章のうまさはさすがだけど,やはり泡坂妻夫の作品であれば,気の利いたミステリが読みたいとおもってしまう。

○ 念力時計
 世にも奇妙な物語系の作品。ショートショートとしては及第点のようにも思えるけど,やはりミステリが読みたい…。

○ 蚊取湖殺人事件
 犯人当て形式の作品。登場事物の造形やトリックなどは泡坂妻夫らしさが発揮されている。フーダニットだけど,鍵はアリバイ。湖の氷が動いて,犯行現場が変わってしまい,アリバイができたというもの。大掛かりな物理トリックで,昭和っぽい作品

○ 銀の靴殺人事件
 泡坂妻夫らしいキャラクターが繰りなすミステリ。18人のダンサーが一人少なくなっても誰も気付かないというチェスタートンみたいなトリック。このトリックをなかなかの短篇に仕上げてしまう泡坂妻夫の手腕に脱帽

○ 秘宝館の秘密
 心中したと思っていた女性の死体が見つかったという話。女性もの靴を履いて,後ろ歩きで戻ったというトリックはバカミスといってもいいが,きっちり読める短篇に仕上げる手腕はさすが。盗んだお金をモアイ像の中に隠すというトリックも…バカミスか。

○ 紋の神様
 ミステリではなく,ちょっといい話。文章の上手さはさすがだが,やはりミステリが読みたい。

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2015年12月07日

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