あらすじ
Casa BRUTUS連載、待望の単行本化!
48歳にして再び独身になった主人公、匡(ただし)は、吉祥寺にある古い一軒家を老婦人に借り受け、自分好みに改装を始める。気楽な一人暮らしは、順調に滑りだすが、かつての恋人、佳奈とばったり再会。佳奈は、父親とふたりで同じ町に住んでいた……。
「気ままな一人暮らし。うらやましいかぎりだなあ。これを優雅と言わずして、なんと言う」。まわりにそう言われることに違和感を覚えつつ、佳奈との関係を取り戻したいと願う匡だが、彼女の父親は認知症となり、いつしかその介護に巻き込まれていく。自分の家と行ったり来たりの生活は、さらに思わぬ展開となり、どう暮らしたいのか、誰と生きたいのかの選択を否応なく迫ってくる---。
かつて妻や息子と暮らした代々木のマンション、一人になって借り受けた、井の頭公園に接した古い一軒家。吹き抜け、窓、灯り、テラス、暖炉、キッチン……随所にあふれる細かい家の描写が、物語に柔らかな深みを与えている。
流れるような美しい文体で描かれる、松家仁之の、新しい小説世界!
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Posted by ブクログ
離婚して古い一軒家を条件付きで借りることになり、
自分好みにリフォームを進めるなかで、既婚時代に付き合っていた佳奈が近所に住んでいる事実がわかった。
アメリカに留学中の手のかからないできた息子には、同性の恋人がいて、
佳奈の父の手術後の認知症が進行するのを見守り手伝いながら
気ままな野良猫のふみの愛想の良さに和む日々。
季節が変わる頃には、改装した一軒家も大家さんの都合で引き渡さなければならなくなり
佳奈との関係も曖昧なまま、ふみとの別れ。
一見優雅だろうけれど、孤独でもある。
岡田氏が説明することにたいして、別れた妻がそんなに得意になって説明しなくていい、
ってところがたしかに男の人ってそういうところあるかもってわろたw
佳奈の魅力、父の介護の大変さ、猫のふみちゃんが死んでしまったところは涙出そうになった。
だけど生活を疎かにしない感じが、いいね。)^o^(
Posted by ブクログ
離婚をした。から始まる文章、妻の攻撃性をさりげなく強調していく感じ、その上で「そうは言っても、そもそもの非はこちらにあるのだ」ときて、ああ~不倫ね、不倫した側の人ってこういう話し方するよなあと白けた気分で読み始めた。……はずなのに、文章があまりに心地よいので引き込まれてしまう。
古民家の改装は素直に素敵でうらやましいなあと感じるし、日々のご飯は美味しそうで、猫や鳥たちとのやり取りも楽しく、そういう日々のいろどりが過不足なく、坦々とつづられていく。作中の女性は佇まいや所作が浮かんでくるようで、お話の中で落ち着いた光を放っており魅力的だ。
冷静に考えれば、しょうもない不倫男である主人公の反省のかけらもなく流されるままいい加減な態度は鼻につくものだし、井之頭公園周りに住んで(最後に土地買ってるけどあの辺りをさっと買えるなんてすごすぎる…)、買い物はアトレとデパ地下、家具道楽なんて完全に言い訳のしようもなく貴族で優雅なんだけど、そういう嫌らしい部分や男のアクみたいなものが文章で完全に脱臭されており脱帽。こう書くと嫌味みたいになってしまうけど、本当にすごいのだ。
松家さんのファンになってしまったかも。別の本を読みたい。