【感想・ネタバレ】古代インドの思想 ――自然・文明・宗教のレビュー

あらすじ

最大の民主主義国家であり、多様な民族・言語・宗教の坩堝であるインドをまとめる価値観とは何か。緻密な哲学思想や洗練された文学理論など、高度に発達した「知の体系」は、いかに生まれたか。厳しくも豊かな自然環境がインド人に与えた影響とは。外の世界から多くを受け入れながら矛盾なく深化・発展させることで、独自の文化や思想を生み出し、世界中に波及させてきた。ヒンドゥー教、仏教、ジャイナ教……。すべてを包み込むモザイク国家「インド」の源流を古代世界に探る。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

古代インドの多様な思想について、自然や環境との関連から概説した書。インダス文明(ハラッパー文明)から初期仏教までの古代思想を、インドの気候風土や地理的環境などの視点から読み解く。
本書は、インドの古代思想を自然・社会環境から考察したものである。気候学や環境考古学などの知見を引きながら、著者は「無所有」・「輪廻」等インド思想に特徴的な思想が自然環境の影響の中で育まれてきたと説いている。特に著者が重視しているのは乾季と雨季を繰り返すインドのモンスーン気候と、インドに侵入したアーリヤ人と先住する「森の民」の遭遇である。厳しい乾季と恵みの雨季の繰り返しは輪廻的思考などを生み出し、またアーリヤ人と「森の民」の接触は両者の思考法に大きな影響を与え、後のインドにおける多様な思想発展へと繋がっていった、と著者は主張する。
古代インド思想の概説書と言うよりかは、本書は自然環境から見たインド思想を論じたものと言ったほうが正確である。自然・社会環境、特に前者から思想史を論じるという試みは興味深いもので、インドの多様な気候環境など様々な情報が紹介されている。ただ環境と思想の関連については(直接的な証明が難しいということもあり)推論に推論を重ねたように思える点もいくつか見受けられた(特にインダス文明)。また、インドの地名や地形が頻出するので、それらを一つにまとめた地図があるとありがたかった。

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2015年03月27日

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