【感想・ネタバレ】確信犯のレビュー

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Posted by ブクログ

響子は答えずに歩み寄ると、無言で高遠の大きな背にもたれかかっていた。高遠は驚いた様子だったが振り向くことはなかった。わたし、何やってるんだろう……その思いが少しだけあった。 「正木くん、君は……」  高遠は初めてこちらを向いた。悲しそうな目をしている。やはり気づいていたのだ。だがそんなこと、責める理由にはならない。わかっている。自分は恰好いいキャリアウーマンなどでは決してない。本当は弱い女なのだ。甘えん坊なのだ。一度火がついた激情を鎮めることはできなかった。精一杯あらがう。秘めてきた思いを抑えながら言う。 「たまにでいいんです。気が向いたときでも……こんなおばさんじゃ、駄目ですか」  それは精一杯の譲歩だった。だがそれでも身勝手だ。卑怯な問いだ。高遠は黙ってかぶりを振る。 「そんなことはない」  高遠は太い腕で響子を優しく抱きしめた。だが続いて出てきた言葉は、期待したものとはまるで別のものだった。 「すまない、正木くん」  どういう意味ですか──問いは言葉にならない。響子は高遠の腕の中、続く言葉を待った。  しばらくして高遠は、響子をその腕から放した。 「君は充分に魅力的だよ。それにわたしだって男だ、いまだに欲望はある。その提案はわたしにとってすごくありがたいものだ。だが……」 「駄目……なんですね」 「ああ、わたしにはできない。わたしは妻を裏切ることはできない」  高遠は頭を下げた。響子は口元に手を当てる。高遠はもう一度すまないと言った。気づかないうちに響子の頰を涙が伝っていた。拭うと、響子は持ってきた資料を鞄に詰め込む。そして黙って深い礼をした。後ろを向いて扉に手をかける。もう勝負はついているとわかっているのに未練だろうか、響子は一度開けるのをためらった。 「本当にすまない」  後ろからは高遠の謝罪の言葉が聞こえる。だがその声があまりにもつらかった。響子は叫びたい思いを抑えてすみませんでしたと言うと、部屋を後にした。

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2022年09月16日

Posted by ブクログ

裁判員制度など、現代の司法制度の課題や問題点にテーマを当てた社会派ミステリー。

『このおっさんが父さんを殺したんだ!』
広島で起きた殺人事件、唯一の目撃者であるまだ幼い息子の悲痛の叫びも虚しく、被告人は無罪となった。

14年後、当時の裁判で無罪を言い渡した元裁判長が、判決を誤ったとして、何者かに刺殺された。
そして、更なる悲劇が、残った2人の判事に襲いかかる。

果たして、元裁判長を刺殺したのは、被害者の息子なのか?それとも?

様々な伏線が散りばめられ、読者の予想を裏切ります。
真犯人が逮捕され、事件は終わったと思ったその先に、更なる真実が見えてきます。

最後の1ページによって、表題の『確信犯』と言う言葉が、意味を持って来ます。
本当の『悪』は、誰なのか?

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2019年05月23日

Posted by ブクログ

裁判員制度、司法制度改革をテーマとした物語ですが、登場人物が多く、かつ、主人公が誰なのかよく分からなくなってしまった(笑)

主人公なのかなと思っていた人が途中で殺されてしまい、え?っとなりました。
広島を舞台にした物語ですが、マツダスタジアムとか、その必要性もよくわからん(笑)

ストーリとしては
広島でおきた殺人事件において、父親を殺された子供の目撃証言が弱く、3人の裁判官による裁判の判決は無罪。

そして、14年後、当時の裁判長が殺害されます。
当時の裁判官だった響子は弁護士として活躍していましたが、この事件の真相を追います。
さらに、もう一人の裁判官だった穂積は政界進出を目指しています。
過去の事件は誤審だったのか?
誰が裁判長を殺したのか?
事件の真相は?
といった展開です。

冒頭にも書いたように、主人公と思っていた人物も殺されてしまいます。

二転三転するストーリ展開で楽しめました。

「確信犯」とは..
ストーリ途中での確信犯の意味と、最後の最後での確信犯の意味が変わってきます。
これは、深い。

お勧めです

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2023年01月21日

Posted by ブクログ

「確信犯」の言葉の意味、司法制度の問題点、人が人を裁く難しさ...。重めのテーマで、前半は読み進めるのがかったるい(良い意味で)。
設定上、あぁそうなるよね、とある程度は想像できてしまうが、スカッとしないのが著者らしさでしょう。そう、本書はきっかけに過ぎないのだ。

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2022年07月30日

Posted by ブクログ

腹黒いやつばっかり。

なかなか主語(行動を取ってる人)の名前が出てこないから、頭の中に映像が浮かんでくるまでに時間がかかる。

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2021年05月10日

Posted by ブクログ

中川幹夫  65歳、被告人、吉岡殺害で無罪判決
吉岡政志  41歳、被害者、吉岡部品会社社長
吉岡拓実  政志の息子、中川を目撃したと証言、10歳
穂積直行  未特例判事補、30歳→43歳講師
正木響子  特例判事補、30歳→43歳法テラス弁護士
末永六郎  広島高裁判事、元裁判長、中川を無罪判決
高遠聖人  最高裁判所事務総長、50代半ば
穂積麻耶  直行の娘、高2
高遠乃愛  広島大学法科大学院生、裁判官を目指す
      22歳
中川勲   マツダスタジアム球場で働く、幹夫の弟?
吉岡拓実  乃愛のバイト仲間、23歳
吉岡明美  拓実の母、旧姓伊藤
矢口幸司  広島弁護士会所属弁護士
竹丸洋   自動車工場勤務、末永殺害の容疑者
伊藤    拓実の祖父

ネタバレ‼️
主役が誰なのか。分かりづらかった。
最終的に穂積かなと。
穂積はダメ男でどうしようもない奴だったけど、ラスト、高遠とのシーンで、一目置かれる奴に成長。それは響子の死がキッカケだった。

物語のスタートは判事の穂積、響子、末永による誤判。
中川の強盗殺人、子供の証言では証拠不十分で、無罪判決したが誤り。罪を犯していた。死に際に中川が自白。

高遠に想いを寄せながら、殺されてしまった響子は残念。真面目で賢明な、いいキャラだった。
穂積は響子に想いを寄せるが受け入れられず。弁護士辞めて、人気講師となり、年頃の可愛い娘がいる。穂積は議員を目指すが、それも響子の気を引く為。

響子は高遠が好きで、穂積になびかず。だが、響子の想いは高遠に受け入れられない。響子は高遠に想いを伝えるもかなわず、その帰り道に刺殺された。

末永と響子の連続殺人犯として、吉岡息子の拓実が疑われた。彼は高遠娘の恋人で無実。

で、末永さんと響子を殺した犯人の矢口が地味。
矢口は真面目な弁護士だけど、その昔、中川が吉岡邸に侵入するのを幇助した?とか。証拠はなかったけど、穂積と高遠で追い詰め、矢口は白旗。

一件落着、と思いきや、最後、替玉受験で司法試験に合格し、司法改革の名の下、響子をも切り捨てた高遠に対し、国会議員として圧力をかける穂積が。よかった。
高遠も穂積も確信犯、それは
=自身の正義のためなら、罪を罪とも思わない。
高遠は司法改革のために、吉岡と替え玉受験。
穂積は替え玉受験で高遠を脅し?自身の地位を高める


 

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2021年02月18日

Posted by ブクログ

物語は、広島で起きた殺人事件の公判シーンから始まる。
目撃者である被害者の息子の証言も空しく、被告人に無罪が言い渡される。
14年後、無罪判決を言い渡した当時の裁判長が、判決は誤りだったと認めた後、何者かに殺されたことから事件が再び動き出す。
切れ者の女性弁護士・正木響子、エリートコースには乗り損ねたものの、野心だけは人一倍の元裁判官・穂積直行、司法官僚の娘・高遠乃愛、その恋人で14年前の事件の被害者の息子・吉岡拓美が広島マツダスタジアムを舞台に、事件の真相に迫る。

司法制度の抱える問題を盛り込んだ社会派作品に留まらず、ミステリとしても二転三転まさかの展開で息がつけない。
主役と思っていた人物があっけなく殺されたり、こいつ絶対嫌な奴と思っていた男が、最後には一番頼りになったり、スタジアムでビール売りをしていた軽そうな女の子が重要な役を占めたり、意表をつく展開に最後まで惑わされた。やっぱり、大門さんは面白いわ~。

なじみ深い広島市内の地名が満載で懐かしさ全開じゃったけど、登場人物が広島弁を喋らんのが気に入らんわ~(≧◇≦)

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2019年07月12日

Posted by ブクログ

真犯人が死の間際に残した過去の罪の告白。
だが、「一事不再理」によって二度と同じ事件で罪を問うことはできない。
司法というものに正面から向き合おうとした物語だった。
構成は悪くないと感じたけれど、登場人物がどうにも好きになれなかった。
後半部分で中心となる高遠と穂積だけれど、いまひとつ深みがないように感じた。
「確信犯」にこだわった意図は十分に伝わってきたけれど、それでもどこか推敲途中の物語のような思いが残った。
「確信犯」が行動するとき、そこには必ず犠牲者が出る。
正義のための犠牲だと信じる者だけが、「確信犯」になれるのだろう。
どことなく後味の悪さを感じながら本を閉じた。

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2017年03月08日

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