あらすじ
塚原(つかはら)マチは本好きで気弱な中学一年生。ある日、図書館で本をめくっていると一枚の便せんが落ちた。そこには『サクラチル』という文字が。一体誰がこれを? やがて始まった顔の見えない相手との便せん越しの交流は、二人の距離を近付けていく。(「サクラ咲く」)輝きに満ちた喜びや、声にならない叫びが織りなす青春のシーンをみずみずしく描き出す。表題作含む3編の傑作集。
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Posted by ブクログ
しおりで繋がるとか青春ですよね。最近また読み返しましたが図書室へ行きたくなりました。小1の頃に初めて読んだ青春モノだった気がします。最近読み返そうと棚から出したときにひらりと小1の頃に自分で作った桜の押し花が入ったしおりが落ちてきてエモかったです。
Posted by ブクログ
3つの短編集。表題作の「サクラ咲く」が大好き。自分の意見を言うのが苦手なマチが、少しずつ自分と他人を理解し変わっていって、自己肯定できるようになっていく成長が、自分と重ね合わされて響く。本に挟む便箋でのやり取りも温かみがあって、とっても瑞々しい作品。
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再読。学生たちの甘酸っぱい青春物語。
学生向けの本なのか、ものすごく読みやすく内容もストレート。
特に好きだったのは、やっぱり2作目のサクラ咲く。文通相手だからこそら相談できることってあるんだろなぁ。また本の趣味が合うってのもより親密になったポイントかな。
みなさんの感想で初知りなのは、実は繋がったエピソードだということ。1作目の陸上部メンバー2作目の先輩。2作目の主人公たちが3作目の図書室の先生。1作目の2人が3作目の両親。苗字を見ると、あぁみんないい青春送ったのねと読後もほっこりしました。
特に3作目の両親は、2人しか知らない未来の親友のために人生を捧げて研究した内容が、本当に未来変えちゃってるところ。繋がった話だと気づいてから、何回も往復して読み直しました。
Posted by ブクログ
3つの短編集。
どの話も青春を感じれる本だな〜と思った。
特に私が1番好きな話は、「サクラ咲く」
塚原マチは、中学一年生で自分の意見をはっきり主張する事が出来ない。そんなマチは実は小学校の頃から本が好き。そんなある日、図書室で本をめくっていると便せんが落ちてきます。
その便せんには「サクラチル」と文字が書かれていた。そしてマチは顔が見えない相手のとの文通が始まっていくと言う話だった。他にも色々経験していくうちにマチが成長していくと言う様子も描かれていた。
私も中学生で本が好きなのでマチに共感出来ることが多かった。読み進めると話が繋がっている所もあったので読むのが楽しかったです。特に学生の皆さんや青春系が好きな人にオススメしたいです。
Posted by ブクログ
三作の短編を収めた連作集。
まず、最初の『約束の場所、約束の時間』ですが、
初挑戦の辻村さんの小説の文体は穏やかで、
それでいてストーリーテラーだなあと思いました。
饒舌にならずに、でもちゃんと表現していて。
中学生くらい向けのせいか縦より横に重点を置いた作品。
縦、横というのはこないだ読んだ文学講義の本に書いてあった捉え方で、
横はストーリーの流れのことで、
縦はひとつのセンテンスなどから立ち上がる表現の奥行きやそれ自体の面白さなど。
『約束の場所、約束の時間』は、
それこそドラえもんを読んでいるみたいに
すーっと流れて行きながらも残る感覚でしょうか。
続いて、表題作の『サクラ咲く』。
中学生の女の子が主人公なのですが、
その性格の弱いところからはじまり、
仲間内の人間関係をを通じてどうなっていくかがひとつの読みどころでした。
ストーリーはストーリーでしっかりと流れていくのだけれど---
それも興味を十分にそそられながらなんだけれど---、
その物語のなかで生きている少年少女たちがそこに息づいている感覚で、
苦しみ、悩み、考え、喜び、笑い、楽しみ、心を成長させていくんですよね。
そういう一人ひとりの個性や変化や過去なんかの設定が
細かくされているのかな、と思いましたが、
それが功を奏しているのか、
物語の中の人間模様が、穏やかに波打つ水面のように、
シームレスに変化しながらきらめくように出来ているかのようでした。
そして、心理面だとか、人との関係性の繊細な面がさりげなく表現されています、
それも、書き込みでではなく、空白でかんじさせるようなところもありますね。
そして、最後の『世界で一番美しい宝石』。
ヒロインの美しい女生徒の描写を読むと、
すぐに彼女に対する僕の個人的なイメージは、
漫画『恋は雨上がりのように』の主人公、橘あきらにピタッと決まってしまいました。
今作のヒロインの名前も立花亜麻里といって、ちょっと似ていたりする。
今作では、前二作に比べてテーマが深いというか、
より考えさせられる内容にもなっていました。
未開の地に作者が分け入っていくような感じで、
哲学して書いたような面白さ。
これは以前、20数年前ですが、
「ソリトンSIDE-B」というEテレの番組で、
「哲学を勉強する」と「哲学する」は別だよね、
と出演者の方々が語っていて、
僕も見ていてそうだよなぁと思い、
哲学を勉強するよりか哲学するほうが本当のように感じたものでしたが、
作者の辻村さんがここでも腰を据えてきちんと哲学して書いているなあと、
すばらしさを感じると同時に、
自分も次に書くときには彼女の姿勢を忘れないようにしようと
見習う気持ちで背筋を伸ばしました。
物語は、レイヤーをはぎとって、
下の絵をみせるかのような流れの構造になっています。
さらに、だからといって、下部構造のほうが本当だよ、なんていわずに、
上部の表層構造だって同じくらいの力はあるものだとして扱っているように読みました。
下部構造になると、弱みとか妬みや汚さなんかがでてきて、
人によっては、そういう見えない部分こそが真実なんだ、と語りますけれど、
表層でみることのできる、爽やかで美しく、
楽しく笑っていられるような部分だって真実なんだ、という意識で
書かれているように思えましたねぇ。
全体を通してもおもしろいギミックというか、
細いのだけれど物語を貫く軸があって、
そういうところで、「あっ」と思う感覚で物語の重層性に気持ちよくなります。
辻村さんはもう直木賞を獲ってらっしゃって有名な書き手さんですが、
僕にとっては遅い、初めての出会いでした。
しかし、こういう書き手さんがいたのだなあと嬉しくなりましたし、
刺激にもなりましたし、プロットをしっかり書いてそうだというヒントもあり、
また違う作品を手に取ることになると思います。
すでにこの作品を読んでいる方は多いかもしれないですが、
まだの方にはぜひ、おススメします。
Posted by ブクログ
サービスアパートの図書室で借りた。
中学1年生の塚原マチが図書室で本をめくっていると、一枚の紙が滑り落ちた。そこには丁寧な文字で「サクラチル」と書かれていて…。中高生が抱える胸の痛みや素直な想いを、みずみずしく描く。表題作ほか全3編。
めちゃくちゃYA向けだな~と思ってたら、三編中二編は進研ゼミで連載されていたものでした!
「約束の場所、約束の時間」
未来からのタイムスリップ。
裏山とか、なんかドラえもんぽくて良かった。
「サクラ咲く」
貸出カードっていいよね。
いや~甘酸っぱい!
「世界で一番美しい宝石」
司書の海野先生は、「サクラ咲く」の海野奏人と結婚したマチだよね?
一平の父は「約束の場所、約束の時間」の朋彦?
中学の時、未来から来た悠と友達になった朋彦!
ずっと悠の病気のための薬の研究を続けてたんだね。
3作品が別の時代で繋がってるなんて!
こういうのに弱いです。
Posted by ブクログ
部活や合唱などそれぞれのイベントに本気になったりなれなかったりする中学生たちが、ふとした出会いをきっかけに日常を変えていく青春短編集。
中学生向けの作品と言われるだけあって展開はわかりやすいが、登場人物が微妙にリンクして主人公たちを助ける正の連鎖には心動かされる。子供向けと思っていると、ものづくりとは、研究とは何か?のようなエンジニアの本質に触れる話題が出てきたりして油断ならない。研究とは、誰かに託してつないでいくもの。心に刻みたい。
Posted by ブクログ
現実ではありえない話から始まった1章。タイムマシーンで未来や過去に行ける世界が来るのかもしれないと思いました。2章は誰か分からない人との文通。なんの繋がりもないように見えて1章との繋がりがあり凄くワクワクでした。3章は映画同好会の女優探しの奮闘劇。ここで1章と繋がるの?2章とも!など凄く興奮しながら読み進めました。面白かったです。
Posted by ブクログ
この本に含まれる下記3作品のうち、最初の2点は中学生の進研ゼミの教材として含まれていたもののよううです。よって他の辻村深月作品とは趣きを異にしています。
「約束の場所、約束の時間」
未来から喘息治療のため、タイムスリップしてきた悠と朋彦の友情の話し。2人はゲームを縁にして、仲良しになる。悠は雨の日、裏山で崩れた廃墟に潰されそうになった朋彦と美晴を助け、その代わりに未来に戻ることになってしまう。朋彦は、未来の悠の喘息治療のため今からやれることをやろうと決意する。
「サクラ咲く」
中1のマチは引っ込み思案の女の子。本が大好きで、図書室に毎日通っている。ある日図書室の本から誰かの「サクラチル」というメッセージを発見し、本を媒介にしてやり取りをはじめる。やりとりの相手は、非登校となっている高坂紙音であった。マチは紙音を誘い、学校の3年生を送る会で共に歌うことにする。校庭ではすでにサクラが咲いている。(この逸話の中で、朋彦と美晴は先輩としと登場する。)
「世界で一番美しい宝石」
映画同好会で映画を撮り、映画コンクールに参加するために主演女優を探している一平、リュウ、拓史は、ある日美しい生徒、立花亜麻里に出会う。
主演女優を引き受けてくれるように何度も頼む一平。そんな一平に立花先輩は、条件を出す。
世界で1番美しい宝石を作る宝石師の絵本を探してくれと。必死に絵本を探す3人。見つけられない3人は絵本を作って立花先輩に届ける。3人の熱意に打たれ、立花先輩は映画に出ることを承諾する。4人は、映画部を作り、撮影をはじめる。
また、探していた絵本も実在することが判明する。(このエピソードの中で、登場する一平の両親が朋彦と美晴であることが判明する。)
登場する少年少女たちは、みんなまっすぐな心を持っています。困難にきちんと立ち向かい、自分たちの力で破っていくような、透き通った生き方をしています。もはや私たち大人に思い出せないような感性をもっています。
『鍵のない夢を見る』や『盲目的な恋と友情』を読んだあとだと、辻村深月の描いたその作品のギャップに驚きます。
とても美しいジュブナイル文学です。