【感想・ネタバレ】財政危機と社会保障のレビュー

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Posted by ブクログ

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GDPに対する国債費比率が突出して世界最悪の日本。ギリシャの二の舞を演じなければならない日が目前に迫っている。国債の元凶は社会保障費。医療、介護、保育産業には多額の公費が投入されており、料金の低さが国民のコスト意識を狂わせ旺盛な需要を生み出し、社会保障費は毎年1.3兆円もの自然増が見込まれている。医療費のダンピング、とりわけ児童医療費ゼロ制度は小児科に診療の大名行列を生み出し過重な労働条件が医師の小児科離れを進行させ、今、深刻な医師不足を生ぜしめている。また、認可保育所の保育料ダンピングは入所できない低所得者層と入所できる中所得者層の格差を拡大し、保育料ダンピングの根源である認可保育所の補助金漬けの高コスト体質は、新たな保育所の建設の大きな障害となっている。しかも、医療、介護、保育分野は高い参入障壁により新規参入は徹底的に拒まれ既得権益が強固に守られている。医療などは自由診療がほとんど認められていないため、効率的なサービス、より良い治療のインセンティブが働かない。多少の藪医者であれば、いつまでも世にはばかることができる。生産年齢人口が激増し右肩上がりに高度成長を遂げる日本は既に終焉を迎えている。最早これまでのような社会保障費の大盤振る舞いは望めないことを深く自覚しなければならない。将来の投資である公共事業には未来の潜在成長力を押し上げ成長の果実が実る可能性があるが、将来に借金を回しての社会保障拡大は単なる需要の先食い、基本的に刹那的消費拡大に過ぎない。少ない貯蓄をさらに食べ尽くす浪費行動である。また、日本の少子高齢化の進展スピードは世界に類のないものであり、高福祉社会の北欧は既に少子高齢化が終章に入っており安定期を迎えようとしている。即ち北欧社会をお手本にすることはできないということである。どこの国もやったことのないハイペースで社会保障改革を進めていかなければならない。年金、医療保険、介護保険までが賦課方式という安易な財政方式を選んだ当時の政府の責任は重い。業界、官僚、政治家のみならず、高齢者、一般国民までが強固な既得権益者となっていることが、日本の社会保障構造改革を難しくさせている。しかも日本の社会保障制度は中間所得層にも富の再分配が行われており、低所得層に対する再分配より大きいため、驚くべきことに、所得格差を寧ろ増幅させている。公費に塗れ自律的な成長が期待できない社会保障費の拡大は成長戦略から最もかけ離れた政策である。安易な公費投入を即刻やめるべき。高齢化に伴う自然増だからなどという希薄な根拠を理由に毎年1.3兆円もの社会保障費の自然増は絶対認めるべきではない。とはいうものの選挙が至上命題の代議士の皆さん方が大鉈を振るうことはまずないのであろう。おそらく、国債の日銀引き受けという事態を経て第二のギリシャにならなければ性根はつかないのだろう。ああ何とも嘆かわしい限りである。

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2012年07月02日

Posted by ブクログ

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震災前、2010年の本。
当時のバカ菅首相の社会保障政策をテーマに、医療・年金・介護・保育といった分野がいかに持続不可能で、将来に向かって破滅の道を突き進んでいるかを、かなり噛み砕いて論じてます。やっぱり既得権益を保持しようとする層の厚さと政治的影響力って凄いのね、ということを再認識できます。

の本の出版当時は、消費税アップを謳った民主党が選挙で大敗した直後だったので、著者は「消費増税はしばらくはパンドラの箱として、与野党ともに触れずに2013年の衆院選までダラダラ行くだろうけど、それでは間に合わないぐらい状況は切迫している」と述べてます。それに合わせて、実現できそうな対策についても私見を紹介しています。

が、3月11日の震災以降、その様相が一変したことによって、良書と言って好いと思うこの本で紹介されている「処方箋」が、もはや今の日本社会には適用できなくなってしまったかと思われるのが残念なところ。

著者の最新の論点が2011年に出ているので、現状を踏まえ、そちらも読んでみたいと思わせる書籍でした。

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2012年05月22日

Posted by ブクログ

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社保に公費が投入され、価格ダンピングが起き、過剰な手厚い保護によって運営非効率となり、受益者も見せかけの安いか買うに満足して見直しには猛反発。市場原理の重視による解決は当然考えられることである。 筆者の主張は明快ではあるが低所得者への救済の点など確かに粗さはある。

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2012年09月26日

Posted by ブクログ

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財政問題と社会保障問題の2本立ての本。
筆者は、「財政も大変だし、その原因に社会保障があるよ」って言っている。だから、社会保障はしっかりと考えなきゃって述べている。

全体的には、財政問題に関しては、その問題の本質を究明するような姿勢はこの本からは期待できず、あくまでも社会保障を論じるための餌として述べている程度なので、いささか中途半端である。というよりは、少し詐欺まがいな気がする。しかし、社会保障の記述に関しては、初学者に向けて書いているという言っているだけあって読みやすく理解もしやすいと思う。

つまりこの本は、社会保障の概略を知るための本であって、財政問題をこの本から学ぼうとしてはならないし、逆に情報不足である。

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2012年02月20日

Posted by ブクログ

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 社会保障と財政。その両方の分野にやってくる危機の実態とその対処法を明らかにした本。

 900兆円を超える額の日本の国債の95%は内国債であり、1400兆円あまりの個人資産によって買い支えられている。そのため日本が直ちにデフォルトに陥ることはまずないと思われる。

 だが、少子高齢化を迎え、社会保障費が膨れ上ってくることを考えると、このままのペースでの債務比率拡大は危険である。景気が上向いた時点で財政再建をすることが欠かせない。

 全体として医療、保育、介護など社会保障に関わる分野の規制緩和と構造改革を進めるべきという論調が強い。その前提の下で、著者は日本の社会保障制度の特徴として、

①国民皆保険
②職業別の制度分立(厚生年金と共済年金など)
③賦課方式(財源を現役世代が拠出)
④過度の公費依存
⑤高コスト体質
⑥強い価格規制・参入規制
⑦政治的圧力を行使する業界団体
⑧天下りの多さ

といったものを挙げる。多くは高度経済成長期に構築されたシステムである。

 例えば菅首相は今年の参院選に臨んで消費税増税で「強い社会保障」という指針を掲げた。税収で医療・介護産業に財政支出することで産業とGDPの両方の成長をするものある。

 だが、著者はこの分野は競争や参入の規制が強く、財政支出を行っても社会保障費が浪費される可能性が高いことを指摘する。同時に規制緩和と構造改革で潜在成長率を上げる方が良いと主張する。

 所々頷けるところはありましたし、社会保障分野にはメスを入れるべき部分は多い。だが、規制緩和と構造改革ありきの論調には少し首をかしげてしまった。

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2011年06月18日

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