【感想・ネタバレ】千度呼べばのレビュー

あらすじ

抒情詩の可能性をひたむきに追い求め、豊かに紡ぎ続けて70年になんなんとする詩業の、全作品中から選びぬかれ、劇的に配列された41篇の恋の情景。かなわぬ恋、破れた恋の切なさ哀しさ、こんなにも苦しくて、こんなにも甘やかな「あのひと」への思いを鮮烈に歌いあげる。日本語という美(うるわ)しき言霊(ことだま)の幸(さきわ)いを、この一冊に込めて。

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Posted by ブクログ

新川和江さんの詩集ですね。
新川和江さんの詩は、大自然を瑞々しく高らかに謳いあげるロマンあふれるものです。
この詩集は、少女の初々しい心情を、幾つに成られても喪わない、恋に憧れる『成人して、詩を書くことがわたくしの仕事になりました。わたくし自身のひそかな恋も、それらの詩篇の中に、こっそり隠すことを覚えました。』と、あとがきある恋の詩篇集です。


      名

  千万の花には
  千万の蜜蜂
  けれど 
  ひとりのわたしには
  ただひとりの あなた
  野をゆき
  白雲をうつす水辺をゆき
  飽かず呼ぶ あなたの名を
  はるかな空のした、
  面影しのび

  そよ風のひと吹きごとに
  花びらは散る
  けれど
  呼ぶごとにあたらしく匂う
  いとしさいやます あなたの名の
  なんという 不思議さ



     ひといろ足りない虹のように

 おさえていてください
 しっかり つかまえていてください
 つばさある鳥ではないけれど わたしは
 風のようにとりとめがないの 水のように
 たよりないの ゆれているの 愛がなければ
 消えてしまうかも知れません
 空のすみっこにかかった 
   ひといろ足りない虹のように

 名付けてください
 呼んでください みち潮のこの渚で
 いとしいおまえ 
   愛するものはこの世でおまうだけと
 愛されていれば わたしはゆたかな海
 きらめく波を胸にちりばめ
 あなたにあげる どっさりのお魚
 どっさりの真珠 どっさりの夢


    ひとに手紙を…


 ひとに手紙を書こうとして
 書きなずんでいると

 灯を慕ってか クサカゲロウがはいってきて
 白いびんせんの上に とまる

 うつくしい哀しみのような
 みどり色の そのうすい翅(はね)

 ああ わたしが告げたい思いも
 そのようなもの なのだけれど

 クサカゲロウは文字にはなってくれず
 いよいよ翅を透きとおらせて ふるわせて……

 小さないのちと 大きないのちが
 ひっそりと息づいている 晩夏(おそなつ)の夜

 新川和江さんの詩篇は、ロマンに満ちて清々しい恋心を謳えあげています。
 密やかな想いを胸に、乙女の祈りのように、瑞々しく爽やかに、読み人の心をとらえます。
 美しい詩集に、ときめきを覚えました。幾つになっても恋心は、胸の高鳴りを感じますね♪

0
2024年08月26日

Posted by ブクログ

名作『わたしを束ねないで』を生んだベテランの詩人の最新作。いつまでも枯れぬ恋心がテーマ。絵がきれい。

0
2013年11月11日

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