あらすじ
ツチヤ先生の、お茶の水女子大学で学生の人気を集めた初心者向け講義をここに再現! 「火は消えるとどこへ行くのか」「毛が何本抜けたらハゲなのか」「なぜ空は青いのか」「人生は無意味か」など、さまざまな“哲学的問題”を思いもよらない方法で次々に解いてみせ、哲学の核心に直接導く新しいタイプの本格的哲学入門です。「一点のくもりもなく哲学について分かっていただけることを目指しました」(ツチヤ先生)
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Posted by ブクログ
ウィトゲンシュタインの論理哲学の核心に触れられます。そもそも、それは問題として間違っている、問いの立て方を間違えていることによる無用の悩みがスッキリしました。例えば、どうせ死ぬのに生きる意味があるのか、というような問い。
Posted by ブクログ
哲学の問題の中には言語的誤解からうまれた問題がある。その問題は、問題として成立しておらず言語の誤解を解くと消滅してしまう。
そういった問題を取り上げて誤解を解き問題として成立していないから答えもないと解説する。
言葉の基準・2つの意味を混同して出てくる問題・個人的な態度の表明と客観的事実・心の中と外、などを使って問題として成立していない「ナンセンスな問題」の例を次々とあげていくのは痛快で曖昧なところがない。
しかし例に挙げられたものは細かいツッコミどころがたくさんあり、かなり割り切って分かりやすくしていると感じる。言葉の基準を明確にすることで問題が成り立っていないことを明らかにしていくのだが、その基準におかしいところがある。しかし著者はそのあたり全部「個人的にはそう思います」と「個人の感想」で突き通している。これじゃあエッセイじゃないか。ここが本書の一番引っかかる点。
具体的にいうと「鏡写りが悪い」は人は美醜の判断を鏡写りで判断しているので言えない、という例がある。これは、その対象の人物が鏡で自分の姿を判別している時だけ有効な基準である。他人の鏡に写った姿をみて「なんだか変だな」と思うことは多々ある。人間は聞き手・聞き耳が存在する以上左右が逆になる鏡に写った姿はもとの姿とは異なる印象を受ける。ペットの猫が鏡にうつると普段と模様が逆転してかなりブサイクに感じる。
「理解の基準は問題が解けること」は「理解の基準は問題の答えを説明できること」も付け足すべきだろう。ただし「解ける」に「説明できる」までの幅広い意味(基準)が含まれているという考え方もできるが本書の文中では「解ける」の用法にフォローはないためただのペーパーテストのような問題とその解答を想定しているようだ。「問題が解ける」だけでは答えを知っていることしかわからず「なぜそう答えたのか」は分からない。「説明できる」なら答えとその根拠の両方が分かる。
他にも「生きる意味はない」の解説で「いずれ死んでしまうと何もかも消えてしまうから無意味だ」に対して「小説や映画は終わりがあるからよい」と例を上げて反論し終わりの有無は意味のあるなしに関係ないと結論付けている。しかし、本人が体験している人生と本人が間接的に経験する小説・映画を「終わりがあること」だけで関連付けているのはむちゃくちゃな話だ。同じ条件にするなら小説を読み終えると死ぬことになってしまう。
上に上げた例は本書で挙げられている膨大な例や説明の一部分でしかなく、大部分は納得できるのでいい本だと思います。
Posted by ブクログ
あとがきで、哲学の問題は問題としては間違っている、と書いてある。こうした方略でかかれた本であり、さらに大学生に教えたということからほんにしているのでとても分かりやすい本になっていると思われる。
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著者がお茶の水女子大学でおこなった哲学入門の講義をもとにした本です。
哲学入門とはいっても、哲学者の思想を紹介するのではなく、哲学の問題に対する著者自身の考えが語られています。それも、ウィトゲンシュタインが『哲学探究』で語ったような、「ハエにハエとり壺から出口を示してやること」、つまり哲学的な問題と思われているものが、じつはことばの使い方を誤っていたために生じた疑似問題にすぎないことを明らかにするという試みがなされています。
ユーモア・エッセイではなくまじめな哲学の議論が展開されていますが、それでも随所にくすっと笑ってしまうようなギャグが散りばめられていて、楽しく読むことができました。
Posted by ブクログ
人生をつまらない、と考える人と、人生はハラハラドキドキの連続だ!とポジティブに考えられる人との違いなのでしょう。p156
「朝起きて電車にゆられて」とつならない側面だけをとりだして「人生は生きるに値しない」といっているようなものです。
「よく見れば なずな花咲く 垣根かな」
雑草みたいな目立たない花が咲いていたということが、芭蕉の俳句になるのほど重要なことなのです。
Posted by ブクログ
問題そのものが成立しているかというところを丁寧に説明している本。
そもそもの言葉の使い方や基準(定義とも言うべきか)から議論する。
当たり前と思われることを説明する難しさを感じた。
Posted by ブクログ
これまで読んできた哲学に関する入門書は、ほとんどのものがチンプンカンプンな内容でした。入門書のくせにエラソーにして、難しすぎるのです。でも、本書はお茶の水女子大学の初心者向け講義を文書化したものなので、専門用語も一切使用されず、とても読みやすいものでした。また、これまで漠然と思い描いていた哲学というもののイメージを覆すような内容で、とても興味深く読み進むことができました。
哲学的な難問は、そもそも問題自体に間違いがあって、その間違いは言葉の使い方、誤解から生じているものなんだそうです。この言葉から受ける誤解を取り除きさえすれば、難解な問題そのものが消滅してしまうという解決方法は、現在の哲学界において主流になっているそうですが、こういった考え方は、実はアリストテレスの時代にすでにあったものなんだそうです。とはいえ、そうか言葉の使い方の間違いに気づきさえすれば悩みは解決するのか。言葉に惑わされなければ、人生はハッピー。怖いものなどなんにもない。どこからでもかかってきなさい!というわけには、なかなかまいりません。やはりこの世は不可思議。人生は苦難に満ちているのです。ふむぅ。