【感想・ネタバレ】10万年の世界経済史のレビュー

あらすじ

産業革命は、「偶然」がもたらした──
膨大なデータを駆使し、経済発展の根本原理に迫る

世界経済はなぜかくも不均衡に発展したのか。「マルサスの罠」と「大いなる分岐」を切り口にその歴史的展開を一望する壮大な試み。解説 小野塚知二

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世界経済はなぜかくも不均衡に発達したのか。産業革命が他のどこでもなく、18世紀英国において起こったのはどうしてなのか。石器時代以降、長らく人類の歴史は「マルサスの罠」と呼ばれる、技術革新による生産性向上が人口増加によって相殺され、総体として生活水準などが改善しない状態が続いていた。その軛から私たちを解き放った決定的出来事こそ、産業革命だった。本書では、世界経済史を包括的な視座のもとに一望し、多様な統計データを駆使することで、産業革命をもたらした真の要因を浮き彫りにしていく。経済発展とその不均衡を作り出す根本原理に迫る壮大な試み。解説 小野塚知二

【目次】
序文
第1章 概論 世界経済史のあらまし

第Ⅰ部 マルサスの罠――一八〇〇年以前の経済活動
第2章 マルサス的経済の論理
第3章 生活水準
第4章 出生率
第5章 平均余命
第6章 マルサスとダーウィン――もっとも豊かな者が生き残る社会
第7章 技術進歩
第8章 社会制度と経済成長
第9章 近代的な人間の登場

第Ⅱ部 産業革命
第10章 近代的な経済成長――国富の形成
第11章 産業革命の謎
第12章 英国の産業革命
第13章 産業革命はなぜ中国やインド、日本ではなく、英国で起きたのか
第14章 産業革命の社会的影響

第Ⅲ部 大いなる分岐
第15章 一八〇〇年以降の世界における経済成長
第16章 格差拡大の近因
第17章 なぜ世界全体が発展しなかったのか
第18章 結論 未知の新世界

謝辞/文庫版訳者あとがきにかえて/解説(小野塚知二)/原注/数学的補遺/参考文献/索引

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Posted by ブクログ

ネタバレ

ミクロ経済学、経済成長理論、数量経済学を駆使した新石器(農業)革命以降とそれ以前を含む経済史。モデルによる単純化により明確になるところはあるが割り切り過ぎ。農業革命以降1800年ごろまで、一人当たり所得水準は、狩猟採集時代よりむしろ低下した。産業革命により一部の国の所得水準が急速に増大したが、一部の国は逆に下がった。所得水準が伸びなかった理由はマルサスの罠による。
・産業革命は均衡状態の転換ではなく徐々に進んだものであり、制度的要因だけでは説明できない。産業革命ではなく産業化。イングランドにおける14世紀から18世紀にかけて出生率が低かったこと、そのなかで富裕層の出生率が極めて高く階層低下により中産階級的価値観が社会に浸透したことなどの要因。
・産業化以前は、土地が重要な生産要素であり土地一定の下では収穫逓減。これにより人口と人口一人当たり所得とがトレードオフに。出生率と死亡率が均衡する一人当たり最低生活水準所得を上回ると人口が増加、人口が増加すると一人当たり所得が減り均衡点に収束。最低生活水準を下回った(人口が減少した)ときは逆の過程で均衡点に。したがって長期的にはマルサス均衡になる。
技術進歩により人口・一人当たり所得曲線が上昇すると、人口が増大するが、いずれ人口増大は一人当たり所得の低下をもたらし、人口増大したうえでの新たな均衡点に。
・イングランドでは、1349ペスト流行から15世紀半ばまで賃金が上昇、その後下降し18世紀に微増。食費の小児から見ると1800年の生活水準は2000年の第三世界の水準よりはるかに高い。
・狩猟採集社会の方が身長が高く労働時間ははるかに短い。
・生物的出生数よりも北西ヨーロッパ、中国・日本は出生数が低い。前者は晩婚と未婚の女性、後者は未婚の男性と中国は女児の間引きによる性差の偏り。
・イングランドでは所得と出生数には強い相関があり、常に階層の下方化が進んだ。
・17世紀のオランダ、18世紀のイングランドは所得が最低水準以上に上昇したが低減し収束しなかった。これは死亡率が高かったことによる(オランダは都市化と海外交易・植民、イングランドは都市化)。
・1800年までの技術進歩は緩慢、コブ・ダグラス生産関数による推計では西欧における0年から1800年までの技術進歩による土地生産性の向上は24%に過ぎない。
・中世の制度は現代の制度と身体の保護、財産保障、財・労働・土地の自由市場等の面で大きな差異はない。物価の安定、税率の低さでは中世の方が高い。
・1800年頃からの急速な一人当たり所得の上昇の要因のうち3/4は全要素生産性ー技術革新によるもの。
・産業化に要因の一つは18世紀半ばからの人口急増(妊婦死亡率の低下と女性初婚年齢の低下、新大陸の農産物)
・18世紀後半の日本や長江デルタ地域は、多くの点でイングランドより下回るものの産業化の基盤ができつつあるようにみえる。しかし、日本の武士階級、中国の満州貴族の出生率は高くなく階層低下はあまりおこらず中産階級意識の普及もなかった。
・産業化により労働所得への分配率は向上したが、これは地代が低下したことによる。所得格差も縮小。
・出生率は上昇し人口は急増、イングランドの人口転換点は1890年頃。
・一国内の所得格差は縮小したが、国の間の所得格差は大きく拡大。この大きな要因は労働者の質の差。
 以上を踏まえ、日本のテークオフを整理すると、18世紀以降人口が増加しなかったため(都市化、初婚年齢の上昇、間引き?)、一人当たり所得が向上、勤勉革命とも相まって中産階級意識(勤勉、識字等)が普及し労働者の質の基盤ができた。

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2026年08月21日

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