【感想・ネタバレ】女はポルノを読む 女性の性欲とフェミニズムのレビュー

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Posted by ブクログ

女性用ポルノを扱う研究はなかなか見ないので、大変面白かった。女性用ポルノにおける強制性の扱い方のあたりはほんとにスリリングでおもしろい。返す刀で男性用ポルノにおける女性の主体性にも言及するのも見慣れた男性用ポルノについての新たな視点でおもしろかった。
ポルノグラフィーの量的分析が中心なので、なぜそのようなポルノグラフィーになるのか?そこにはどんなジェンダーバイアスがあるのか?という言及はあまり多くなかった。次はそのような視点の論考を書いて欲しい。
あとは漫画以外の映像媒体についても女性用AVとか出てきているので研究してほしい。
この手の本が読まれず未だにマッキノンやドウォーキンが幅を利かす日本の謎のガラパゴスフェミニズムはいったいなんなんだろ。

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2019年11月17日

Posted by ブクログ

ポルノを「女性に対する人権侵害」と画一的に決めつける議論が、女性たちの多様な性的欲望を無視していることに疑問を投げかけ、女性向けポルノコミックが何を表現しているか、だけでなく、むしろ女性たちがそれらをどう主体的に読み解いているかに焦点をあてた、実に説得力があり、かつ刺激的な論考だ。
本書が分析の対象としている女性向けポルノコミックは、いわゆる「レディコミ」と「BL」である。ジャンルとしての成立はBL(当初の名称は「ヤオイ」)の方が早く、女性向けポルノ市場の成長可能性に気がついた企業が、BL作家に同じことを男女の絡みで描いてくれと依頼したのだそう。
この点に関連して、注で引用されている鈴木薫の発言が、私的には実はいちばん面白かった。つまり、女性向けポルノは、女の欲望が本来男に向けられるべきとは想定しておらず、むしろクイアーな欲望こそがベースになっているというのだ。この観点から考えれば、性的「指向」がそもそも男性モデルではないのか、女にはそもそもヘテロセクシュアルな欲望なんてあるんだろうか、とさえ、鈴木は問いかけている。こんなラディカルな議論、はじめて聞いた!
と注に激しく興奮してしまったけど、本文の守の議論も十分に刺激的だ。鈴木が指摘しているように、女性ポルノがBLに起源をもつという事実は、男/女の欲望を対ととらえる枠組みを無効化してしまう。そこで代わりに導入されるのが、BLで用いられる「攻め/受け」という関係性であり、P.カリフィアのS/M理論である。ここから、男性向けポルノコミックと女性向けポルノとの比較分析を通して、男性向けポルノが基本的に「受け」の位置にある女性を「見る」主体を立ち上げるのに対して、女性向けポルノにおいてはジェンダーの固定化が比較的緩く、読者の多数を占める女性たちは、「受け」と「攻め」の立場にアイデンティファイしたり、ときに客観視したりしながら、主体的に快楽をひきだしていると論じられている。また、暴力的表現を含むポルノに恐怖を感じることなく、ファンタジーとして安心して消費できるよう、さまざまな技術が駆使されていることが、SM理論を援用して論じられ、そうした安心化の技術が、ある程度男性ポルノにも共通するものであることも指摘される。
女性たちが置かれてきた切実な状況について言語化したフェミニストによるポルノ批判の意義を正当に受けとめながら、一方でフェミニスト自身を閉じ込めてきた男/女のセクシュアリティの二項対立枠組みのもつ限界を明らかにし、そこから解き放たれたフェミニズムがもちうる可能性を示唆する筆者の建設的な姿勢につよく賛同する。カリフィアのSM論はもっと日本のフェミニストに読まれるべきだと、あらためて思う。

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2014年11月16日

Posted by ブクログ

レディコミというジャンルがあることを初めて知った
ポルノが女性を抑圧する存在である一方、女性を解放する可能性を秘めているという視点は新鮮だった。
ポルノをまるごと規制してしまうと、女性から見た性の描き方も封殺してしまう。
また、ポルノを批判することで性そのものを悪しき物にしてしまい、結局貞淑な女という画一的な価値観に染めてしまう。
フェミニズムは本来、女性のどんなあり方も自由にできることを肯定するべきで、特定の価値観に固定するようなことをしてはいけないと思う。

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2017年09月03日

Posted by ブクログ

第1章がマキノンたちのポルノ批判。





2017/11/03 ひさしぶりに第6章よみなおしたけど、こういうの独特のわかりにくさがあるなあ。

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2020年06月15日

Posted by ブクログ

まぁ当然だけど、性愛に対する一定の共通認識があるとして書かれてるから、スッキリしない感はある。マイノリティは、こんなフラットに論じられてる場でも疎外感。

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2024年02月01日

Posted by ブクログ

女性もポルノを消費する(ポルノは男性特有の文化ではない)ということを、マスタベーション・ファンタジーとしてのポルノグラフィ(主にエロ劇画、美少女コミック、レディコミ、ハードなBL)の分析を通して論考した本。
公共空間に蔓延る「ポルノ文化」と、個室の中で読まれる「ポルノグラフィ」を同一の文脈で語るこれまでのフェミニズムに疑問を投げかけている点と、女性から見た(女性のための)ポルノグラフィに着目しているという点に意義がある。
先行研究のレビューが基礎知識のない人には少し難しいかなと思ったのと、メインの分析が少々薄すぎたのが難点だけど、著者の問題関心の高さがうかがえて若手研究者らしい意欲作な印象。
個人的には、男性向けのポルノでは攻め役の登場人物が「自分がしたかったわけじゃないんだけど…」と状況の不可避性をぼやいてみせ、女性向けポルノでは「私がやりたかったんです」と受け役が自分の望んだ行為であることを強調することで関係性の平等化をはかっているという指摘が面白いなと思った。あと、同じように受けの痴態を描いていても読み解き方は違うよねってとことか。

とりあえず自分自身ももうちょっと勉強しないと適切なレビューができない気がするこの本。キワモノゆえに主題がちゃんと読めてるか自信ないわ…(笑)

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2012年04月15日

Posted by ブクログ

ポルノが「こわい」という感覚は分かる。
同一視の読み方が多いから、ハードBLは時々こわい…

受けと攻めの相互作用的力関係という部分は面白いな、と思った。
ふだん目にする物こそ、僕らは理解していない

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2011年12月19日

Posted by ブクログ

心意気は良い。こういうテーマは際物であり,それを選ぶ研究者には2種類いる。話題性を狙うタイプとそれを選ばざるを得ない内的動機を持つ者だ。著者は間違いなく後者だろう(ちなみに,『ナンパを科学する』の坂口さんは前者の匂いが強い。)。端々に見られる私的なエピソードに,研究対象との距離の近さが見て取れる。しかし,残念ながら,分析はイマイチ。サンプル数からして数量的な処理にどれほどの意味があるのかと疑問に思った。カルスタなのかマンガ論なのか方法論のツメが甘いという感じか。やってみたことに意義がある。もっと現象学的に迫れば面白そうなのに,とか思ってみたり。しかしまぁ,こういう本はリアル書店でしか出会えない楽しみではある。

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2010年10月21日

Posted by ブクログ

[ 内容 ]
女性もポルノグラフィを楽しんでいる―。
男性特有のものと特殊視されやすい「ポルノを読む」経験をそのくびきから解き放ち、「女性たちがどのようなポルノを読んでいるのか」「どう楽しんでいるのか」「女性向けポルノはなぜマンガなのか」などを「ハードなBL」「レディコミ」雑誌を大量に読み込み、読者投稿を分析することで明らかにする。
そのうえで、フェミニズムのポルノ批判が女性の性欲=性的能動性を取りこぼしている点を指摘して、快楽的な性に対する女性の能動性を肯定し、ポルノを消費する主体としての可能性を丁寧に論じる。

[ 目次 ]
第1章 フェミニズムとポルノグラフィ批判
第2章 女性向けポルノグラフィの成立史
第3章 女性向けポルノコミックの読者
第4章 女性向けポルノと男性向けポルノ
第5章 女性向けポルノはなぜマンガなのか
第6章 ポルノグラフィのために―フェミニズムからフェミニズムへ

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2010年06月17日

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