あらすじ
受給がバレたらいじめられ、一方、働く母親の下では困窮する子どもたちの真実。派遣村、保護費によるギャンブル禁止条例、芸能人の母親による受給の発覚……生活保護をめぐる問題はあとを絶たない。激しいバッシングが起こるなか、2013年8月、ついに保護基準の引き下げが決定された。最大で10パーセントの削減が受給家庭を直撃する。しかし、生活保護の是非が取り沙汰される陰で、不幸になっている存在を忘れてはいないだろうか。ほんとうに目を向けるべきもの、それは子どもたちだ。困窮家庭に育った子どもは、十分な教育環境もなく、社会に出ても安定した職には就きにくい。さらに母子家庭の半数以上が貧困状態にあり、小中学生の6人に1人が就学援助を受けているなど、日本社会が抱える悲惨な現実がそこにはある。制度の賛否については活発に議論されるが、それだけで「貧困の連鎖」を断ち切れるのか。長年、行政でのサポートと民間でのボランティア活動に取り組み、双方の立場で貧困問題に取り組む著者だからこそ語れる、知られざる現場の生の声をレポートする。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
生活保護制度を人権モデル(日弁連)と適正化モデル(財務省)の双方の視点から捉え、時代の中でどのように制度が揺れ動いてきたのか? またその争点等、理解が深まる一冊。
子供の貧困対策法や自立支援法など最新の状況も丁寧に解説。
良書だと思う。
Posted by ブクログ
商店街に居場所をつくる
風のすみか農場
地域就労創出モデル
山梨 タダゼミ
子どもの貧困問題について調べていくと、勉強を教えるという支援方法が貧困の予防に効果が高い
Posted by ブクログ
行政の現場で生活保護に携わる傍らで、ボランティアで「生活保護110番」を運営した著者による読み応えのある内容だった。 生活保護をめぐる「適正化モデル」と「人権モデル」のそれぞれの主張、世論の流れを当時のニュースを交えながら、記されている。双方の主張は、どちらも理も非もあるものではあり、著者は、双方を組み合わせて「統合モデル」を主張している。今後の生活保護の運用にあたっては、必要な人にとって、生活保護を受けやすくするとともに、生活保護から脱しやすくするという理念をしっかりと追求してほしいと思った。また、日本でのこどもの貧困が叫ばれて久しいが、貧困の連鎖が生み出されている状況をいかに解決するか、多様な主体が取り組みを進めなければいけない。また、本書の最後に、「厚生労働省の体制を充実させよ」という提言があることが素晴らしいと思った。世間一般では、公務員の無駄削減、人減らしが正義のように語られがちだが、生活保護という社会保障の根幹といえる制度の企画・運営がわずか数人でできるわけがない。必要な体制の強化に予算をかけることを惜しむべきではない。
Posted by ブクログ
生活保護情勢に一石を投じる意見書。
人権モデルと適正化モデルのどちらの意見もよくわかるけど、それをさらに一歩進めていかないと、せめぎあっているうちにどんどん貧困がせめてくるというのが分かり、怖くなる。
生活保護費の増大に歯止めをかけていくことが、なぜ必要なのか、考えさせられる。結局は社会的な損失なんだろうけど、打ち切ったら余計ひどいことになるんですね。
筆者も語っている通り、頑張っても無駄なら頑張らないとは、生活保護受給者だけでなく、その家庭の子どもにも波及していきそうで、その連鎖をいかに絶ちきるのか。そうするために自分になにができるか。よーく考えてみたい。
Posted by ブクログ
期待した内容とは異なっていたが、生活保護の現状に関する多くの情報を知ることができた。欲を言えばもう少し子供の貧困にフォーカスを当てて欲しかった。
キッズドアのタダゼミなどの活動に従事されている方には本当に頭が下がる思いだ。何か力になれることがないか探してみようと思った。