あらすじ
日本初の聾学校理髪科を卒業した青年が店を開業するまでの苦難は並大抵ではなかった。若手作家が自分の祖父の足跡を辿る感動の物語!
大正時代に生まれ、幼少時にろう者になった五森(ごもり)正一は、日本で最初に創設された聾学校理髪科に希望を見出し、修学に励んだ。当時としては前例のない、障害者としての自立を目指して。やがて17歳で聾学校を卒業し、いくつもの困難を乗り越えて、徳島市近郊でついに自分の理髪店を開業するに至る。日中戦争がはじまった翌年のことだった。──そして現代。3年前に作家デビューした孫の五森つばめは、祖父・正一の半生を描く決意をする。ろうの祖父母と、コーダ(ろうの親を持つ子ども)の父と伯母、そしてコーダの娘である自分。3代にわたる想いをつなぐための取材がはじまった……。
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Posted by ブクログ
かく言う私自身もろう者であり、かつて全国の聾学校に理容科が複数存在したという歴史は知っていた。本作は、その発祥の地である徳島をモデルにした物語だ。
三世代にわたって描かれるのは、人と人との“つながり”。そこに障害の有無は関係ない。
かつて偏見や差別によって虐げられてきたろう者たちが、社会を堂々と歩き、自分らしく生きられるようになるまでに、どれほどの紆余曲折があり、幾多のバトンタッチがあったのだろうか。
過去は変えられない。過去についた傷も、どう足掻いても無かったことにはできない。だが、未来は変えられるはずだ。そのために必要なのは、どちらか一方が“変わる”ことを強いられるのではなく、お互いがお互いを理解し、ともに歩んでいくことなのだと思う。
ろう者は決して、障害があって周囲から助けられなければならない弱者ではなく、ただあやつる言語が違うだけの対等な場にいる隣人なのだ。