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Posted by ブクログ
主人公のスコットが小さくなるにつれて、
人間としての存在価値といったものが変質して、
失われていく様が生々しい。
一日ごとに少しずつ小さくなるというチープな設定も、
巧みな心理描写がされているので、
質の良い思考実験のような印象を受けた。
安直なSFサスペンスではなく、
人間の存在意義とは何かと強く問いかけられる名著。
Posted by ブクログ
初めて読んだリチャード・マシスン。
最初は、SFもの特有の不可思議や現実離れした空想の世界を楽しむ、ほんと思ってかかったが、それだけではなく考えさせる作品でした。
それは、人間が“存在する”ということの本質を「或る男が少しずつ縮んでいく」事象を題材に、抉りだそうとしたのではないか、と思う。存在している限りは、生存本能があり、水や食料への渇望があり、本能的に備え付けられた性があり、そして考えまいとしても考えてしまう思考がある。
そこにある限りは、ゼロには決してなくならない。人の目に見えなくなったとしても、それは人の規定する概念からはずれるだけのこと。
現実世界というのは、相対の世界であると。
身長以外はなにも変わらなくとも、あまりの分かりやすい変化がゆえに、人間としての尊厳を、周囲の人からも、そして自分自身もなくしてゆく。途中に、“親指トムの夫人”と出会い、一晩をともにすることでなくした尊厳を取り戻す。
相対の世界に縛られていることに普段ではなかなか気付かないもの。本の最後のシーン、ミクロの新世界でスコットははじめて何ものからも自由になったのかもしれない。