あらすじ
ネコのゼファリーナはときどき、持ち主のいないおもちゃをひろって、
リサイクルおもちゃの家〈セカンドチャンス〉にとどけています。
〈セカンドチャンス〉を営むのは、戦禍のウクライナから逃げてきた女の子と母親。ここにいるおもちゃたちのリーダーは小さなマスコット、ポケットベアです。
ある夜、ゼファリーナは町のごみ箱で、古ーいクマのぬいぐるみをひろってきました。ベアワンと名づけられたそのぬいぐるみとポケットベアは、同じ戦争をくぐりぬけてきたことを知り、友情を育みます。
そんなある日、ベアワンが骨董品の仲買人にさらわれてしまいました。
ゼファリーナはあとを追い、ベアワンを救おうとします。それも、とんでもない方法で!
おもちゃの再出発を助けるウクライナ出身の母子と、戦争をくぐりぬけた古いクマのぬいぐるみたちの思いが重なりあいます。
アメリカの優れた児童書に授けられるニューベリー賞を受賞した作家による作品です。
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Posted by ブクログ
ネコの一人称で語られるぬいぐるみたちの物語。
といっても、単にほのぼのとした話ではなく、ぬいぐるみたちの味わってきた人間の暗い歴史――戦争――が描かれて、光と影のコントラストがある。
ネコが暮らしているのは、ぬいぐるみたちが集められた〈セカンドチャンス〉というおもちゃの家。不要品として届けられたり、ネコがどこかから拾ってきたりしたものを家主のエリザベータとその娘のダーシャがきれいに洗って、ほしい人に持っていってもらうようにしている。
娘のダーシャがとくに気に入って、自分のものとして大切にしているのが、小さなクマのぬいぐるみ〈ポケットベア〉だ。数センチの小さなクマで、顔は少し上を向いている。第一次大戦のとき、兵士の胸ポケットにお守りとして入れられたものらしい。
エリザベータとダーシャの親子は、じつはウクライナの難民。何もかもなくしてアメリカへ逃げてきた。だからこそポケットベアの経てきた物語を痛切に感じるのだろう。
ぬいぐるみたちは、夜中になると〈トイ・ストーリー〉さながらに自分で動き出しておおはしゃぎするし、ネコもなかなかすれっからしの語り口で、全編にユーモアがただよっているのだけど、そこに第一次大戦やウクライナ戦争の悲しみが影を落とし、深みを与えている。
後半は、新たに加わったぬいぐるみ〈ベアワン〉をめぐって追いつ追われつの冒険もあり、エンタメと少しの歴史がバランスよく配された物語になっている。アップルゲイトさん巧みだし、尾高薫さんの訳(とくにネコのゼファリーナの語り口)も抜群。とても好きだった。