【感想・ネタバレ】高専―戦後日本のエンジニア養成のレビュー

あらすじ

高等専門学校(高専)は、五年制の高等教育機関である。
実験・実習を重視し、技術者の養成を目的とする。
1962年に誕生して以来、現在は50校以上を数え、卒業生は製造業、建設業からIT産業まで広く活躍している。
ユニークな教育システムはモンゴルやタイ、ベトナムで導入されるなど、世界的に注目されている。

本書では文部省や産業界、大学、短期大学、地方自治体が絡む高専の歴史を辿り、その実態と課題を摑む。


■目次

はじめに産業立国を目指した日本の歴史の一断面

序章 戦前・戦後の技術者養成機関――一九四〇年代
1 戦前の教育制度と技術者教育
複線型の教育制度/戦前の技術者養成を担った高等工業学校/高専につながる学校
2 一九四七年、新制大学の成立
単線型の教育制度へ/新制大学と一般教育/技術者養成に不向きな新制大学

第1章 技術者養成をめぐる激論――一九五〇~六〇年代前半
1 高度経済成長と教育改革
高度経済成長期の大学定員拡充計画/新制大学制度への反発/産業界による五年制の高等教育機関要求/大学の研究・教育環境の悪化
2 短期大学改革と専科大学法案
中央教育審議会での短大改革案/短大と大学の対立/廃案となった専科大学法案
3 産業界の要望と大学の抵抗
文部省の考える科学技術教育/一般教育重視への批判/暗礁に乗り上げる第一五特別委員会
4 高専設置――文部省主導の折衷案
高専制度案の登場とその内情/池田勇人内閣の焦り/妥協としての高専制度/高専制度の成立/文部官僚による制度設計

第2章 量的拡充の時代――一九六〇年代
1 全国各地の誘致運動
地域振興の論理/一期校の誘致運動/公立高専/私立高専/渋滞する新設校/開校ペースの鈍化/誘致にまつわる地元負担/池田勇人内閣と高専
2 手探りの開校準備
初の入学試験/開校の準備/カリキュラム・教員組織の形成/恵まれた就職事情/商船高専の成立

第3章 充実と安定の時代――一九七〇~八〇年代
1 社会的要請に応えて
電波高専の成立/文部省の方針転換/幻の医学高専構想/学科拡充「一巡目」と制度的安定/地域社会との連携/情報通信と材料分野の需要/高校からの編入学/外国人留学生の受け入れ
2 卒業生の進路確保
初期の大学編入学/技術科学大学の設置/大学編入学後の学生生活/求められる教養
3 高専独自の課外活動
高専体育大会/ロボットコンテストなどによる教育活性化/課外活動で広がるつながり

第4章 多様化の時代――一九九〇年代
1 柔軟化する制度――非工学系分野への進出
高等教育改革/専科大学構想の挫折/大綱化によって高まる自由度/非工学系学科の設置と札幌市立高専/外部評価の導入
2 教育期間の延長――専攻科の設置と大学との関係
専攻科と高まる進学率/本科卒業生の称号問題/専攻科修了生の学士号/JABEEによる国際基準の審査
3 研究者としての高専教員
多岐にわたる校務/研究費と科研費/高専教員の人事

第5章 独法化とブランド化――二〇〇〇年代
1 中央の統制強化高専機構の設置
沖縄高専/行政機構改革と高専機構の発足/高専機構と各校の関係/法人化の功罪
2 ブランド戦略――文科省・高専機構の試行錯誤
「高度化再編」/結び付きの強化/多様化とグローバル化/文科省の考えるこれからの高専

おわりに――技術者養成はどこに向かうのか
政治と大学による翻弄/日本の高等教育の行方

あとがき
図版出典
参考文献
高専略年表

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Posted by ブクログ

技術者養成のための教育機関「高専」。中学卒業から5年間の専門的なカリキュラム、ほぼ工業系。あまり知られぬが就職率も良く日本経済を技術面から支える人材を育ててきたことは間違いなかろう。ロボコンもいまや著名な大会。

本書はそんな高専の歴史を概説した、おそらく本邦初の試み。
産業界の要請、大学と短大の制度改革、地域振興など多くの要素と妥協の産物。
しかし、早期に専門教育を行うメリットは世界的に珍しく「KOSEN」はモンゴルを始め世界に輸出されつつあるという。

戦後の学生改革よりやや遅れた高専制度を概説した良著。

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2026年09月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

高専について知らないことが多かった。

ふと立ち寄った神保町の三省堂書店で知って楽天ブックスで購入。

0
2026年09月11日

Posted by ブクログ

本書は、日本独自の高等教育システムである「高専(高等専門学校)」の設立経緯から現代に至る展開を網羅的に体系化した、極めて稀有な一冊である。

高度経済成長期における産業界の要請に応える国策として全国各地に整備された創設期のドラマから、時代ごとの社会変化に応じた制度の微修正に至るまでがコンパクトに整理されており、高専という制度の全体像に対する解像度を飛躍的に高めてくれる。

高専出身者である私自身にとっても、在学当時に享受していた教育体制や独自の取り組みがどのような歴史的・制度的文脈から生まれてきたのかを知る貴重な機会となった。また、在学中に直面していた改革の真意や、卒業後の約20年間に起きた変化構造が明確に可視化され、深い知的好奇心と満足感を得ることができた。

本書は制度史や組織論を主軸とするため、学生生活の情操的な側面や日常の手触りまではカバーしていない。しかし、客観的な記述を読み進める過程で、当時の個人的な記憶や情景が鮮明に喚起されたのは予期せぬ読書体験であった。

「大学との差別化」という構造的課題に教育現場が苦心していた事実は、当時の学生には知る由もない視点であったが、激変する社会において高専がなお不可欠な機能を果たし続けている事実は、卒業生として素直に誇らしく感じられる。社会要請に応じた柔軟な自己変革が、今後も継続されることを強く期待したい。

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2026年10月29日

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