【感想・ネタバレ】海を吸う/庭に接ぐのレビュー

あらすじ

第60回文藝賞〈短篇部門〉優秀作! 体中に開いた穴に液体が溜まっていく少女、〈森〉に侵食された父と娘……破格の才能が紡ぎあげる耽美と汚穢の世界。柴崎友香・松田青子・朝宮運河 驚嘆!

「身体の感覚と心の内とを具体的な手触りや光景が直接感じられるような言葉で書かれ、
それを追い求めていく力のある書き手」 柴崎友香(選考委員)
「“目覚め”る前の、八方塞がりで終わりのない感情や自らの体への絶望がテンションを
下げることなくラストまで到達している」 松田青子(選考委員)
「登場人物の肉体は傷つき、溶解して、得体の知れない何かにメタモルフォーゼする。その過程は息を呑むほどおぞましく、それでいて蠱惑的だ」 朝宮運河(怪奇幻想書評家)

『海を吸う』
体中に穴が開き、液体が溜まっていくひより。いっくんは「穴の底を貫く」よう言い、母は「筒になりなさい」と言う。独特の重さと湿り気に満ちた世界に読み手を引きずり込む、圧巻の文藝賞〈短篇部門〉優秀作。

『庭に接ぐ』
「ここから先は森だよ」「ここは庭の終わりで森の始まりだから」「森に入ってはいけない」。森へ続く〈庭〉のある家で暮らす父と娘。ある日、森から戻ってきた父は正気を失っていた――二人きり閉ざされた箱庭を何かが侵食する。濃密な悪夢の気配に吞まれる受賞第一作。

全国書店員、震撼

そんなつもりではなかった。この物語に気軽に土足で踏み入ってしまった事を悔やんでしまう。著者が育み堕とした独自の聖域じみた世界に、足跡を残してしまったかもしれないことが本当に。
幻想的かつ不気味な雰囲気を持つ作品のなかでも、自身の想像の箱を押し広げる力が飛び抜けて強いと思わされた!
――豊永大(紀伊國屋書店グランフロント大阪店)

どろっとしたナニカの表現が、文字だけなのに触ってしまったのかと思うくらいに巧みで、読みながらナニカを触ってしまったのかと錯覚した。
――中沢雅(くまざわ書店西新井店)

強く「身体」がある。
身体から出るものへの感覚が研ぎ澄まされていて、暴力的なまでのにおいと液体。
吸われる。接がれる。曖昧になっても残る強烈な身体感覚。
ゾクゾクとしてどこかに連れ去られそうになった。
――海老原眞紀(リブロ福生店)

気持ち悪い、でも目が、意識が逸らせない、見届けなければならないという気持ちがどこから来るのか分からないままにページを捲っていました。
――迫彩子(蔦屋書店熊本三年坂)

他者の言葉や世界の重さが、静かに侵入してくる。
独特の湿り気を帯びた文体は、読む者の感覚をじわりと叩き起こし、曖昧だった内面と外界の境界をあらわにする。
いったい何を意味しているのかと考えるうちに、未知の世界観へと深く引き込まれ、気づけば何度もページをめくっている。
ぞくりとする読書体験。癖になる一作だ。
――新井沙佑里(紀伊國屋書店 新宿本店)

甘美でしなやかなこの物語を咀嚼する幸福にしばらく浸っていたかった。
――山本亮(大盛堂書店)

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Posted by ブクログ

短篇二作が収録された本書。

「海を吸う」

ひよりの身体には穴が空いていて、母の望む筒にはなれない。それでもひよりは母からの感情の矢印を向けてもらいたい。穴にまみれた身体を、出来損ないの身体を知って欲しかった。もう望まれたようには生きられないとしても、母にとってひとりの娘として、その存在を受け止めて欲しかった。
穴が具体的にどういうものなのかは明記されていない。ピアスとかタトゥー的なものであるかと思えるけど、あくまで海のようなもので満たされた穴で在ると記される。そしてその過程が性的なことのメタファーでもあったりして、穴自体に重さや感情の深みを持たせている。

宗教のようなものに心酔し、神のためにその身を捧げる母の元に生まれ育ったひより。母の望みを叶えようとしても叶えられない。そうして奮起していたが、彼女の体には穴が空いて、もうその望みは断ち切られた。それでも母に私を思って欲しい。家族としての愛情を向けて欲しい。そんな娘の物語。「穴」に関する描写や、母との関係の描かれ方に、読者と彼女達の間に大きな溝のようなものを感じ、覗き込むようにして物語を読む。そして気付いたらその深いツボにハマる。先を読む手が止まらずに気付けばラスト。穴の真相を求めて読むけど明かされない。だけどこれ以上ないほどの満足感。なんかスゴイ小説だった。

「庭に接ぐ」

変わり果ててしまった父。私がその身体を預けられるような、私を思いやってくれるような、そんな父はもういない。それでも娘である私は、かつての父の姿をなんとか探し、それを決して見捨てない。
私はこの作品を一種の介護小説のように読んだ。変貌した父の姿を語り手は受け止められない。なんとか元に戻そうとする。扉を開けたらいつもの父がいることを望む。しかしどうしてもそこにいる父は、人間には見えない。
「父」を思う気持ちは変わらない。変貌してしまった今の父は、今だけ。そんな父の世話をする過程で、私もまた父と同様変化がある。それは「父」に対する思い。自身に対する思い。そして、庭に対する思い。変化した父の近くにいることで、自身もまた変化がある。そんな変化を狂気の世界で、深く潜り込ませるような文体で描き切る力が伝わってきた。

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2026年05月04日

Posted by ブクログ

語彙力の凄まじさに圧倒される一冊。
怖い、恐ろしい、なのにどこか美しく、読んでいるとゾクゾクと体の内側と外側が無理やり開かれていくような感覚に襲われる。
才谷さんの世界が爆発的に広がり、自分自身がその世界に蹂躙され、侵食されていく、そんな強烈な読書体験だった。
たくさんのメタファーが散りばめられているのだろうと思いながら、それを一つひとつ拾い読みするのも非常に面白かった。
言葉の力でここまで読者を支配できるのかと、ただただ驚嘆するばかり。
才谷景さんの世界観に完全に飲み込まれた作品でした

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2026年06月08日

Posted by ブクログ

体に穴が空き、
そこに海がある人達の話

森と庭のせめぎ合いの渦中にいる
父娘の話

の2篇
全部で120頁程度でサクッと読めた

・斬新すぎる設定で物語も不気味
・叙事的な表現も多く美しい
・若干のエロスや退廃美も感じる
・爛熟や頽廃の色合いが濃い内容

消して万人受けしないけど、
謎の中毒性を感じた

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2026年05月15日

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