あらすじ
地下鉄の廃駅構内で発見された凄惨な焼死体。容疑者は、十年前の連続殺人事件に関わった男だった――
中国本格社会派ミステリ界の雄・呼延雲、待望の初邦訳!
北京の西郊で女性を狙った連続殺人事件が発生。警察も手をこまねくなか、学生だった呼延雲の推理により周立平という高校生が容疑者として浮上する。しかし呼延雲の友人で警官大学に在籍の林香茗が彼を庇ったため、1件の罪にしか問われなかった。事件から10年後、掃鼠嶺という廃駅付近で四体の焼死体が見つかる。容疑者として名前があがったのが、すでに出所していた周立平だった。一度逃した「連続殺人鬼」との再会に、警察は立件に執念を燃やし、ついには逮捕にこぎつけた。しかし事件は、呼延雲と周立平に恨みを抱く元刑事の李志勇らの調べによって、思わぬ方向に転がっていく。
【中国の大手レビューサイト豆瓣 2020年度「推理・懸疑」部門第2位】
○ ときわ書房・宇田川/
なすべきことを見失った警察の捜査に対する、名探偵の痛烈なカウンターが導き出す真相のやるせなさ! ラストシーン、読者の誰もがこの忘れがたき犯人に、登場人物のひとりと同じ言葉を掛けたくなるはずだ。
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Posted by ブクログ
呼延雲『掃鼠嶺 廃駅を喰らう火群 上』二見文庫。
久し振りに読む二見文庫。しかも華文ミステリーである。
著者と同じ名前の探偵、呼延雲が活躍する『呼延雲シリーズ』の第8作目であるらしい。シリーズは既に10作となり、中国では異例のロングシリーズになっているようだ。タイトルが変わっているのだが、掃鼠嶺とは一般人に利用されること無く廃駅となった地下鉄の駅名だった。そして、掃鼠というのは栗鼠の俗称らしい。
時代は大きく変わったようで、中国人作家の呼延雲はジェフリー・ディーヴァーやマイケル・コナリー、さらには東野圭吾にホームズに果ては名探偵コナンといった様々なミステリーを読んでいるのか、作中には度々、そのような記述が登場する。
さて本作であるが、やはり第10作まで続くシリーズの第8作をいきなり読むと、如何せん、繋がりがよく解らぬ描写があり、さらには中国人の名前が難しく、読み進めるのに少し苦労した。10年前の連続殺人事件の犯人が再び大量殺人の犯人とされるストーリーは問題無く面白いのに、勿体無いように思う。
疑問に思ったのは、中国という管理国家で、このような連続殺人事件というのが有り得るのかということなのだが、中国は管理国家という反面、隠蔽国家という側面もあり、仮に連続殺人事件や大量殺人事件が起きても、国家が隠蔽してしまうのだろう。
長い長いプロローグから物語は始まる。北京の西郊で、女性ばかりを標的にした連続殺人事件が発生する。2人の女性が自宅マンションで犠牲になり、事件を捜査する李志勇刑事の相棒となった女性警察官の高小燕が李志勇と別れ、自宅に戻った直後に犯人に襲われ、犠牲となる。
そして、警察を嘲笑うかのように第4の事件が起きる。春柳街道治安主任の房志峰の娘が自宅で犯人に襲われ、丁度帰宅した房志峰と犯人が争いになり、房志峰がハンマーで殴られて殺害されたのだ。警察が犯人の手掛りを掴めずにいる中、当時学生だった呼延雲の推理によって、周立平という房志峰の娘の同級生で17歳の高校生が容疑者として浮上した。
しかし、呼延雲の友人で警官大学に在籍していた林香茗が彼を庇ったことで、周立平が問われたのは、房志峰を殺害したとされる1件の殺人だけだった。一連の西郊連続殺人事件の他の3件の殺人事件については全容が解明されぬまま、彼は収監されることになった。
と、ここまでが長い長いプロローグなのである。
10年後、掃鼠嶺にある廃地下鉄駅の付近で、4体の焼死体が発見される。そのうち3体は子どもで、遺体には激しい虐待の痕跡が残されていた。警察は威信をかけてこの掃鼠嶺事件の犯人の追跡に乗り出す。
捜査線上に浮かんだのは、既に出所していた周立平であった。周立平はかつて、西郊連続殺人事件の犯人と目されながらも、罪の全容を問うことができなかった男だった。10年前に取り逃がした連続殺人鬼との再会に、警察と当時の関係者たちは執念を燃やしていく。
やがて、焼死体の身元が明らかになるにつれ、事件の背後に、童佑護育院の存在が浮かび上がる。放漫な経営実態や子どもたちへの凄惨な虐待が明らかになり、さらに背後では巨大な組織が蠢いていることも判明する。
西郊連続殺人事件と掃鼠嶺事件の真相は……
本体価格1,600円
★★★★