【感想・ネタバレ】僕のなかの殺人者を止めて 多重人格者と精神科医の治療物語のレビュー

あらすじ

30を超える人格を持つ男。

彼の「中」にいる殺人者、芸術家、怯える子ども……、
妻を愛するのも、その妻を殴るのも、すべて同じ「彼」だった。

本当の彼は、いったいどこにいるのか――。
治療法などない難題に一人で向き合い続けた精神科医の答えとは
朝、目を覚ますと、顔を腫らした妻が横たわっている。状況からいって、自分が殴ったとしか思えない。けれど、本人はまったく身に覚えがなかった。

「多重人格」という言葉を聞いたことのある人は多いと思います。しかし、その当事者がどんな現実を生きているのか、そしてその傍らで治療にあたる医師が何と向き合っているのかを、私たちはほとんど知りません。
身に覚えのない暴力、自傷の痕、傷害や殺人未遂による服役の過去……。いくつもの医療機関で「診断はできる。でも治療はできない」と告げられたらい回しにされてきた、一人の解離性同一性障害を抱える、患者がいました。一人の人間の中にいくつもの人格が存在する病、つまり多重人格です。

「ここが最後の砦なんですよ」(本文より)

そう懇願されたものの、確立された治療法はなく、効く薬もありません。「どうしたら治せるか分からない。でもやるしかない」――そう自らに言い聞かせ、一人の精神科医は、患者とその妻とともに、地図のない長い治療の道を手探りで歩き出します。
本書を著すのは、医療法人の理事長を務め、長年にわたり臨床の第一線で重い症例と向き合ってきた現役の精神科医です。実際の臨床経験を基に描かれる本作は、解離という現象の複雑さと、人格が「割れる」に至った背景にある家庭、虐待、孤独を、一つひとつ丁寧に解き明かしていきます。そして終盤では、パーソナリティ障害や統合失調症との関連にまで踏み込み、著者ならではの臨床的洞察を示します。
人の心はもろいものです。しかし、一度ばらばらになった心も、再び一つにすることが可能です。生きづらさを抱えるすべての人と、人の心に関わるすべての人に届けたい、希望の治療物語です。

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Posted by ブクログ

感動の治療物語である。
フィクションとなっているが、おそらくかなりの程度実例に基づく迫真のルポルタージュである。
手練れの精神科医によって書かれているが、驚くほど読みやすく、あまりの興味深さに一気読みさせられてしまう。
読みどころがたくさんあるが、この書物の素晴らしさを3点だけ記しておきたい。
第一、解離性同一性障害の現実の複雑さと処遇困難さをこれだけ分かりやすく、読みやすく、しかも迫力をもって記述することは容易なことではない。
第二、精神療法というものの真髄について、この本は多くを私たちに教えてくれる。著者は「どうしたら治せるか分からない」「でもやるしかない」「ここが最後の砦と言われているのだから」と言いながら、多くの精神科医から見放された患者の治療を引き受ける。その治療は、凡庸な(私のような)精神科医には真似のできないものである。著者のように膨大な時間をかけることも困難だが、それ以上に患者への態度が非凡なのである。ほとんど無手勝流で、身ひとつで、ひたすら患者の話に耳を傾け続ける。著者はほとんど患者に何かを強いることがない。ただ、ひたむきに、患者とその家族についていくのである。受け身であることの徹底性と首尾一貫性。そのしなやかさと強靭さ。緊急措置入院の診察時ですら、著者は多くを語らない。説得というより、静かに呟くように「入院するしかないよ」と患者に語りかける。やがて、興奮していた患者が、いつのまにか素直になっている。
第三、個人的にこの本で最も感動的だったのは、患者と著者の出逢いである。最終的に多くの副人格はひとつに統合されるのであるが、著者は、ほとんど治療の最初の方から、「本来のこの人」とその透徹した眼差しによって、出逢っている。前科者で、自傷他害を繰り返し、しばしば警察沙汰を引き起こす「厄介者」の中の「本来の豊かな人間」をずっと見つめ続けているのだ。そしてさらに、実は、出逢いの初めは、患者の方がこの精神科医は「本物だ」と気づいて、患者の方から著者に治療を頼み込むのである。双方が、ほぼ最初から、深いところで、相手の本質に出逢っているのである。
著者は、この本の最後で、日本人の精神性を守りたいという旨の言葉を残している。私は、この著者の生きざまに、日本の武士の面影を見た思いがしている。

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2026年07月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

解離性同一性障害の話。
読みやすくてスラスラ読めた。

精神科病院で働いているが、あまり多重人格の方は見ないので面白かった。この事例のように、入院より外来で診ることの方が多いのだろうか。

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2026年08月03日

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