【感想・ネタバレ】文学者たちの大逆事件と韓国併合のレビュー

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Posted by ブクログ

文学者たちの大逆事件と韓国併合 (平凡社新書)
(和書)2011年08月11日 14:38
高澤 秀次 平凡社 2010年11月16日


高澤秀次さんには朝日カルチャーセンターと長池講義でお目にかかったこともあり、この本の題名にも興味を覚えて手にとってみました。

なかなか興味深く、この主題なら新書ではなくて大書に書き上げても良かったとも思うけど、普及版として読みやすくこれでも良かったのかもしれない。

高澤さんの本で吉本隆明さんのことを書いた本を、朝日カルチャーセンターの講義後のサイン会と書籍販売で見かけたので、その本も読んでみようと思います。

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2020年09月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

1910年、大逆事件と韓国併合、同時平行的に起こった内外の政治的事件―
大逆罪の法的根拠となったのは、実に事件の2年前に改訂された刑法第73条、
「天皇、太皇太后、皇太后、皇后、皇太子又ハ皇太孫ニ対シ危害ヲ加ヘ又ハ加ヘントシタル者ハ死刑ニ処ス」
であった、という符合。
また、朝鮮半島では、初代統監の伊藤博文がハルピンで安重根に暗殺されたのが前年の10月であった。

これらの血なまぐさい事件とは、まったく関わりないことのようだが、
この年、柳田国男の「遠野物語」が刊行された。
新たなる国学としての柳田民俗学、黎明の名著だが、
350部の自費出版からスタートしたこの初版本の扉には、
「此書を外国に在る人々に呈す」と記されていた。
「外国に在る人々」とは、日本人以外の外国人ではなく、海外にいる日本人のことである、というが、その真意は奈辺にあったか‥。
ともあれ、農政官僚でもあった柳田が「朝鮮」や「台湾」の植民地経営に、いかにコミットしたかについては、村井紀の「南東イデオロギーの発生―柳田国男と植民地主義」なる批判的考察がある、という。

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2012年05月23日

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ネタバレ

 本書は、大逆事件が文学者に与えた影響を概観する一冊だが、射程の広さと考察の深さで度肝をぬく労作だ。事件のインパクトは、1910年の前後だけでなく、昭和・平成の「御代」にまで続いている。そして日本人の作家だけでなく、朝鮮半島の作家にも、そして当時の日本の植民地化のひとびとに対しても影響を及ぼしていることを追跡する。石川啄木から村上春樹までだ。
 まず、大逆事件とは、天皇制帝国主義であると著者は基本的視座を明確にする。事件によって天皇制帝国主義は確立される。歴史を振り返るならば、その確立は、それに否を唱える「見えるもの」への対処へと起動する。しかし、対処が存在するということは「配慮」を必然させ、言及に対して遠慮するという心情も醸成させるのは不可避である。それがまさに文学者たちに「枷」として重圧となるのである。そして、大逆事件とは文学者に対する「文学的後遺症」をもたらすことになると同時に、贖罪意識は戦後日本文学の限界として表象されることとなる。
 奇しくも大逆事件と同じ年、韓国併合が行われている。両者が同じ年に起きたことは必然なのだろう。国家に優位な国民という標準の設定、そして、植民地の獲得……。共通するのは「特定のコード」の創造とそれに違反するものへの「暴力」の設定だ。それが「書く」という行為にどのような影響を与えたのか振り返ることは決して無益ではない。
 二つの事件以降、創業時代としての「明治」は「美化」の一歩を辿ることとなる。文学者のみならず、21世紀に生きる私たちも、その影響かにあるのかもしれない。
明治は確かに「成長」の時代であったのだろう。しかし成長のもつ「暴力」と「暗部」を引き受けない限り、呪縛はそのままなのであろう。

「あらゆる『理想』と『虚構』の『不可能性』を歴史的に隠蔽する『坂の上の雲』のような作品に、国民が熱狂していることが、おぞましく感じられた」と著者はいう。この「おぞましさ」の理解を促す一冊だ。しかもこれが「新書」というから驚きは2倍だ。

因みに司馬遼太郎『坂の上の雲』が連載開始となるのは明治百年となる1968年のことである。

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2012年04月23日

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明治までは「日本という国家」の認識が人々にはなく、日清日露を経て「日本国民」という意識を生み出すために「日本人ならざるもの」を捏造して外敵とみなした、という視点においての大逆事件を取り扱っている。
佐藤春夫と与謝野鉄幹についてさわりつつも、森鴎外はスルーして夏目漱石と谷崎潤一郎の作品に落ちている影を拾っているのが目新しいところか。
タイトル通りの内容は一、二章で、その後は明治から昭和までの小説、および文壇から読み取れるホモソーシャルな関係性について、話の主軸が移っていった印象がある。

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2023年01月04日

Posted by ブクログ

4/9
全編通して面白かったし、特に大逆事件と文学者のかかわりについてこれまで頻繁に語られてきた鷗外や啄木だけでなかったのはよかった。
ただ、安易に「ゼロ年代」とか使わないほうがいいと思いますよ。

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2011年04月09日

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