あらすじ
太平洋戦争で亡くなったアスリートたちがいました。かれらはなぜ、競技場ではなく、戦場で戦わされ、死ななければならなかったのか。12人の競技人生とその最期をたどるノンフィクション読み物です。
戦争と平和を考えるきっかけに。
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Posted by ブクログ
万城目学『八月の御所グラウンド』を読んだ直後、本屋で本書を見つけ、何かに導かれるように即購入。両書の間にどんな繋がりがあるのかは、ネタバレを避けるため敢えて触れないでおきたい。
本書は、戦場で命を落としたプロスポーツ選手やオリンピアンたちの人生を追ったノンフィクション。競技場で夢を追い、栄光を目指していた若者たちが、戦争によってその道を断たれていく。その事実を一人ひとりの人生として辿ることで、戦争というものの理不尽さが生々しく伝わってくる。
特に印象に残ったのが、頁の左下に描かれた一式陸上攻撃機(推定)の小さな挿絵。ページをめくるたびに少しずつ姿を変えながら続いていくその機影が、どこかもの悲しく、彼らが辿った運命を静かに象徴しているように感じられた。
夢を断念させられたアスリートたちは、やがて戦意高揚のためのプロパガンダにも利用されていく。才能も、夢も、人生そのものまでもが戦争に翻弄されていく様子には、言葉を失う。
そして何より胸に残ったのは、これは決して「過去の悲しい出来事」だけではないということ。今この瞬間にも、世界のどこかでは同じように、戦争によって夢や日常を奪われている人たちがいる。そんな現実を、決して他人事ではないのだと実感させられる一冊だった。
スポーツを楽しみ、好きなことに打ち込めるという当たり前の日常が、実は平和の上に成り立っている。そのことを静かに、しかし強く考えさせられた。