【感想・ネタバレ】ざっくり分かるファイナンス~経営センスを磨くための財務~のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

ファイナンスについてはある程度理解した状態で読んだため新たな発見は少なかったが、とにかく説明がわかりやすく、つまずきやすいところまで丁寧に理屈が解説されていて、すごく理解が深まった。バリュエーション、投資判断、資金調達のパートは特にわかりやすく、原理原則を教えてくれる書籍として手元に置いておきたいと思った。
あと、ファイナンスって面白いというポジティブな気持ちになった。これを機に応用編の本も読んでみたいと思う。

(自分がファイナンスを学んだ「コーポレート・ファイナンス実務の教科書」(松田千恵子著)に似ててわかりやすいと思ったら、著者の石野氏は松田氏の元職場の後輩だった)

特に学びになった点を以下に示す。
・経常利益は日本にしかない概念で、アメリカにも欧州にもない。経常利益は負債コストしか反映せず、株主資本コストを反映しないため、指標として意味がないと考えられているため(昔の日本は資金調達の大半を銀行融資で賄っていたため、経常利益が重視されていた)。
・ファイナンスとは投資判断・資金調達・配当政策の3つに意思決定に関わるもの。
・企業価値の向上が経営における至上命題であるならば、利益だけをいくら上げても意味がない。こういう時代だからこそ会計よりもファイナンスに力点が移っている。
・株主資本コストについて。株主資本コストは負債コストと違ってBSに現れないので意識されづらい。もし経営者が株主の期待を下回ったら、株主はその会社以上のリターンを探し、株を売ってしまうため、株価の下落という形で顕在化する。これが「コスト」である。
・株主の期待収益率は、全く同じ事業だとしてもその企業のリスク見合いで変化する。つまりリスクが高いと資本コスト(=WACC)は上昇し、企業価値が下がる。ゆえに経営者は株主のその会社に対するリスク認識を下げることが仕事。そのために用いているのがIR。IRは決して会社の広告宣伝のためにあるわけではない(でもそれに気づいている人は少ない)
・買掛金は一見無利子負債のように見えるが、販売側には運転資金が増えることによる資本コストの上昇(=運転資金確保のためにお金を借りる等)が発生するため、その分を販売価格に転嫁するインセンティブが働く。ゆえに見えないだけで有利子負債である(しかもその内訳がわからない分厄介)
・ROIC(Return on Investment capital)=投下資本利益率。投下資本とは有利子負債+株主資本。WACC以上のROICを上げることが企業の至上命題(定義より自明)。ROICとWACCの差をEVAスプレッドという。ゆえにこれがプラスでないといけないし、投資の際にはこの視点を忘れてはならない。
・売上債権と在庫を圧縮しなければならないのは、これに応じた運転資金を用意しなければならず、そのための資本コストがかかってしまうから。
・PJTに投資するということは、PJTが将来生み出すであろうFCFを購入することと同義である。
・資金調達配分の最適化は簡単にはできない。実務上は同業他社の資本構成を参考にしたり、格付け機関の意見を参考にする必要がある。
・日本には「負債を減らすのはいいことだ」という風潮が強すぎる。インフラ企業などCFのばらつきが低い企業は負債を増やしてWACCを減らした方がいいわけだが、現状そうはなっていない。
・格付けは単に「債権者の立場」から企業の債務償還能力を分析判断しているものに過ぎない。ゆえに、成長性に乏しくても資本効率が悪くても、自己資本比率が高いなどその時の財務状況が健全でありさえすれば高くなってしまう。これに対しIBMのトレジャラー、ジェフリー・サークスは以下のように述べている。めちゃめちゃ示唆的。

「トリプルAは非常に安定的な産業のものだ。また、トリプルAを取るためには、250億ドル(2兆5000億円)の手元現金を持たなくてはならない。それだけの手元資金を持つコストと、トリプルAをもらうメリットは見合わない」
「現在は安全をみて少し多めの資金を手元に置いているが、それでも60億~80億ドル程度だ。200億ドルくらいあると何に使うんだ、株主に返すべきだ、という要求が出る」「(最低限維持したい格付けについては)現在のシングルA。使っている資本のトータルコストは、株主資本よりもコストが安い負債を多く利用するトリプルBのときに一番低い状態になると思う。だが、トリプルBは買収や自社株買いなど、急でまとまった資金需要への対応力が極めて乏しい財政状態だ。シングルAなら負債もある程度利用できるし、買収などに柔軟な対応も可能だ」
・配当するとその分現金が減り、企業価値が下がる。配当するということはNPVが0より高くなる投資案件がないということ(いい投資案件があるならば、配当しないで投資した方が株主のためになる)。
・自社株買いは、配当と同じくいい投資案件がないことを示すと同時に、経営陣が自社株を割安と考えているというシグナルにもなる。

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2020年04月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

薄い本なのに内容はぎっしり詰まってる感じ


◎会計は過去の利益、ファイナンスは現在から未来のキャッシュを扱う

◎財務会計 = 社外向け
 管理会計 = 社内向け

◎コーポレートファイナンスの3つの役割
 1.投資の決定
 2.資金調達
 3.配当政策

◎資本コスト
 企業が債権者や株主に支払う下記のコスト
 株主資本コスト
 株主が求めるリターン
 負債コスト
 債権者が求めるリターン
 
◎債権者より株主の方が求めるリターンが大きい
債権者は契約内の利息をもらうだけ
株主は企業の成績によって配当金が変わる

◎wacc
 株主資本コストと負債コストの加重平均
 waccは低い方がいい
 高い=投資家の期待収益率が高い(リスクが高い)

◎ROIC(投下資本利益率)
税引後営業利益÷(有利子負債+株主資本)
投資した資本に対してどれだけのリターンが得られるか
 企業の利回り

◎wacc以上のROICが求められる
 ROIC-wacc=EVAスプレッド
 これを拡大することが企業の使命

◎運転資金が増える=キャッシュが減る=企業の価値が下がる


◎現在価値 〉将来価値

◎NPV法
100円のにんじんに対して、100円以上の価値があるか
 ある事業がNPV 〉0 だったら投資すべき

◎IRR
NPV=0 のときの内部収益率
 waccよりIRRが高ければ投資すべき

◎格付けは高すぎてもだめ
 その分配当しろー!ってなっちゃうから

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2020年02月10日

Posted by ブクログ

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とても分かりやすく書かれているので、初めてファイナンスに触れる人におすすめ!

企業価値は誰の視点で見るかによって変わるって、言われてみれば当たり前なんだけど、あまり意識したことがなかったな。
仕事ではM&Aをする側としてしかバリュエーションしてないからなぁ。

広く浅く書かれているので、入門書としては最適です、本当に。

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2024年01月15日

Posted by ブクログ

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簡潔にファイナンスに関する重要概念を説明してくれているので、理解がしやすかった。特にこの領域は、専門用語などが多く、頭が混乱しそうになるが、本書に書いてあるような原理原則、シンプルな構造を頭に入れておくことで、柔軟な対処が可能になるように感じた。特に負債コスト、株主資本コスト、CAPM、WACCなどの用語の関係性が分からなくなった時には立ち返って読むべし。

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2021年02月21日

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