【感想・ネタバレ】砂の城~鬼貫警部事件簿~のレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

未読だった鬼貫警部もの。

正統派時刻表ミステリの傑作。犯人がかなり周到な人物で、アリバイを二重三重に用意しているので、刑事との攻防が楽しい。崩せそうで崩せないいくつものアリバイがもどかしい。くくー。やっぱり鮎川哲也の時刻表ミステリはうまい。もう「鮮やか」の一言です。

また寝台列車が頻繁に出てくるのも楽しい。
最近の寝台列車は「旅情を楽しむ豪華寝台」路線だけれど、この頃は普通に長距離で利用されていたんだよなぁ、としみじみ。寝台列車はコドモの頃に「あけぼの」に数回乗っただけだけど、狭いB寝台でも楽しかったなぁ。今でもあのときのワクワクした気持ちが思い出せる(って、その「あけぼの」ももう定期運行されなくなっちゃったね・・・)。

これだけネットが発達してしまうと、冊子の時刻表を手に取ったことのない人も大勢いるでしょうし、時刻表ミステリを新たに書く作家さんもいなくなってるのかな。このジャンルは風前の灯だろうか・・・でも時刻表を見て「あぁでもない、こうでもない」ってやるのはものすごく楽しいんだけどね。・・・って、なんだか寂しくなってきたな。

0
2016年03月21日

Posted by ブクログ

鳥取砂丘で見つかった女の他殺死体。容疑者探しは二転三転するものの、ひとりの画家が浮上する。その画家は、京都で起きた別の殺人事件にも関わっている可能性があることが判明するが、2つの事件のどちらにも鉄壁のアリバイがあった。鳥取県警の刑事、京都府警の刑事が警視庁の刑事と連携して、アリバイを崩すための地道な捜査を続けていくが、難航し、鬼貫警部にアリバイの再検討が託される。鬼貫警部が登場するのは、物語の4分の3が過ぎてからで、読んでいる最中は鬼貫警部シリーズだと思っていなかった。
東京―鳥取間の移動に関するトリック、鞄の鍵と週刊誌によるアリバイトリックはいずれも魅力的であり、京都の殺人事件の動機に関する謎もあって、引き込まれる内容であったが、そのトリックの中身はどちらも抜け道のような手法であり、拍子抜けした。東京―鳥取間の移動に関するトリックに関しては、時刻表を読み解いて、答えを考えるべきものであったが、時刻表が離れたページにばらばらに載っていたこともあって、そのような気持ちが起こらなかった。
話の膨らませ方、展開の仕方が上手で、読み物として、十分に楽しめる作品であった。

0
2018年02月13日

Posted by ブクログ

正統派のアリバイトリック。時刻表がばんばん出てくるが、苦手な人でも楽しめる。

手掛かりゼロの状態から、容疑者を絞り込むまでのプロセスが第一段階。ある偽作をめぐり、関係者宅を奔走する刑事たち。ただ話を聞くのではなくて、事件の本質に迫ろうとする姿勢にわくわくする。

第二段階はアリバイ崩し。意外な展開が加わり、ますます容疑者が怪しくなる。もうこれ以上時間の壁を崩せない、という場面で満を持して(?)鬼貫警部登場。固定概念を捨て視点を変えてみる。何もなさそうな証言から手掛かりの糸を手繰り寄せる。そうしないと解決できない緻密なプロットを、さも当たり前のように披露する手腕は正に本格の鬼。

今回は決め手のひとつがやや弱かったのが残念だが、馴染みある土地や駅名が出てきたので、なかなか興味深く読ませてもらった。質がいいと地味さも武器になるのだ。

0
2011年07月07日

「小説」ランキング