あらすじ
ビジネスエリート必読の最新地政学講義!
激化する米中対立、AI・スマホが戦場に――。
元国家安全保障局長・北村滋氏の最新作は、インテリジェンスの核心に迫ったビジネスエリート必読の1冊です。
●第1章 「見えない戦争」――インテリジェンスが戦争を決める
《現実を直視する第一歩として、先ずは現代の戦場で何が生起しているのかを明らかにしなければならない。火力の応酬などのキネティック(物理的、動力学的)な戦闘に先立ち、勝敗を決しているのは「知」の攻防である。本章では、ウクライナ、ベネズエラ、ガザ、そしてイランにおける最新の戦訓からインテリジェンスが現代戦をいかに駆動しているかを描き出す。》
●第2章 勢力圏思想の復活――米中大国間競争の本質
《インテリジェンスによる「見えない戦争」における優位は、単なる戦術的勝利にとどまらない。それは国家自らの生存空間、すなわち勢力圏を確保し、維持するための前提と言える。本章では、大国間競争の深層に踏み込み、スパイクマン的リアリズムへ回帰した米中両国による勢力圏再編の力学を分析する。》
●第3章 経済安全保障と企業インテリジェンス
《我が国が戦後最も厳しい安全保障環境に直面する中、有事と平時の境界は曖昧となり、安全保障の主体は国家から民間へと拡大している。世界経済がグローバリゼーションからデリスキング経済へと移行することに伴い、国家の安全保障政策はミクロ経済の主体である企業にまで深く浸透しつつある。本章では、このマクロの構造転換が、企業の構造や行動に具体的に如何なるインパクトを与えるのかという現代的課題について、企業とインテリジェンス、グリーン経済安全保障、M&Aという多角的視点から論ずる。》
●第4章 テクノロジーと主権――決定の自律性
《企業がインテリジェンス能力を涵養すべき対象は、M&Aやサプライチェーン領域に限定されない。国家と企業の意思決定を根底から支え、一方において最大の脆弱性をもたらしかねないのが、サイバー空間とAIである。本章では、我々の掌にあるからスマートフォンから国家中枢を与るガバメントクラウドに至るまで、テクノロジーがいかに「主権」概念を再定義しているかを説き明かす。》
●最終章 日本はこの大競争の時代をどう生き延びるか――レアルポリティークと我が国に求められる戦略性
《インテリジェンス、勢力圏、企業防衛、そしてAI。これら「見えない戦争」の全貌を俯瞰したとき、我が国に突きつけられているのは、決定の自律性という「主権」をいかに維持するかという重い問いである。本章では、これまでの議論を総括するとともに、「縁辺部(リムランド)における紛争の時代」に我が国が「戦略国家」として生き残るための道筋を呈示したい。》
この「見えない戦争」の時代を、いかに戦略的に生き抜くか。本書はその羅針盤となるはずです。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
ベネズエラ
●特筆すべきは、特殊部隊の突入前に、インテリジェンスと電磁領域で勝敗が決していたという事実。
●この作戦の最終目的は単なるDecapitationではなく、中露の影響力排除
●作戦が戦争ではなく、「法執行」の枠組みを帯びていた事実も重要。アメリカはFBIや麻薬取締局との連携により、指導者を犯罪者とした扱うことで正当性を付与
● サプライチェーンや重要インフラ防護は有事の防衛戦そのもの。
●冷戦後、米国が南米への関与を弱める中、中露は、この絶対的な勢力圏を侵食。ロシアは爆撃機を展開させ、米本土のほぼ全てを射程に収めるなど、米の脅威認識に深く刻まれることに。ロシアの軍事的影響力を崩し、中国の経済的技術的な支配を物理的に遮断。
イスラエル・ハマス(10.7)
●歴史的な intelligence failureとも言われるがこれは情報不足によるものではなく、その評価と解釈が問題。情報機関はハマスを contained threatと認識。(衝撃的なことに、イスラエル当局はその作戦の一年以上前にハマスの詳細な先頭計画書を入手していた)
●対するハマスの作戦は徹底したオフライン化と地下のトンネルネットワーク(ここに人質を連れ込むことで攻撃しづらい環境に、広さは山手線内の6倍)
●ここから当局はハマス及びヒズボラ幹部の斬首作戦へ。
イラン
●従来の遠方からの高出力妨害ではなく、敵レーダーの至近距離から微弱かつ精密な電波を照射することで敵の探査能力を麻痺
●NSAと8200部隊は、イランの銀行システムお暗号資産ネットワークに侵入、ヒズボラ、フーシ派への送金ルートを凍結。プロキシーの行動を抑制。
トランプ政権下での動き
●NSS2025は、国際機関などを公然と反米主義を掲げるものとして敵視。ここで注目すべきは、脱退の対象を戦略的に選択していること。(WTO、ICAOなど、米国の国益に直結するものは残留)
●同戦略では、中露を Given Realityとして黙認。中露の民主化を諦め、彼らを圏外の存在として突き放した。
中国
●中国が取り戻すべき栄光とは、1800円頃までの数十年間、清朝が謳歌した時代。
グリーンランドの戦略的価値
●気候変動が氷床のゆうかいをまねき、新たな航海路の出現と未開発資源のアクセスを可能に。
●ミサイル防衛の要石。地球儀を北極点から見下ろすと一目瞭然。
●レアアースの埋蔵量が世界最大級。
●米国は1951年から防衛協定によって基地を取得。
●グリーンランドはデンマークからの独立を希望。他方でネックなのは経済。自立には資源開発による外貨獲得。ここに中国がつけ込む隙がある。
情勢
●冷戦後に加速した自由貿易体制の拡大に伴ってグローバルエコノミーが成立。そして、グローバルサプライチェーンができた結果、ここにリスクが生まれた。
●国家の実力を決定つける要素はもはや軍事力、外交力の範囲には限定されず、ネットワークの安全性、サプライチェーンの強靭性、さらにAIを含む先端技術を自国が、あるいは同盟国と連携して手中に収める能力へ拡大
●EUは2022年にヴェルサイユ宣言にて、2027年までにロシアへの依存関係を段階的に廃止することを決定(天然ガス、石油、石炭)
AI
●AIガバナンスに重要になるのが意思決定の可視化(explainablity)
●米SimSpace社は、AIエージェントを訓練評価するためのサイバーレンジを提供
●戦争省、金融機関、大学などがこの環境を活用、防御シナリオを共有
●日本では経産省とIPAが産業サイバーレンジ構想を進め、横断的な整備を図っている
Posted by ブクログ
ユーラシア大陸東端のリムランドに位置し、経済大国としては衰退の予兆がありながらも半導体分野などのサプライチェーン上でいくつかの優位性を持っている日本が、
安倍晋三元総理が国際社会に訴求していた自由、民主主義、法の支配のもと「開かれた秩序」の維持を達成するための、
非対称戦への備え、インテリジェンスの強化、海外からの投資規制、サイバー戦の強化、AIの活用といった、
経済安全保障に関する重要事項が網羅的かつ総論的にまとめられている。
ロシア・ウクライナ、イスラエル、イラン、ベネズエラなどでの戦争や事象を見ると、インテリジェンスの重要性を再確認できる。
キネティックな戦力がなければ攻撃力として成り立たないことは前提ながら、
インテリジェンスが優位であることにより、キネティックな戦力の不足を一部カバーできたり、キネティックな戦力の効果を増大させることができる。
あるいはイスラエルに対するハマスの奇襲における準備段階のように、インテリジェンスを表面上整備していても、
隙を作れば自国に多大なダメージを与えてしまうことも起こりえる。
経済安全保障と軍事の不可分性についても北村氏は言及しているし、本書の各所にそのメッセージ性は含まれている。
重要インフラの防御、サイバー空間に関する備え、外資規制(企業買収対策)、技術保全、
あるいはウクライナ戦争における「市民の目」なども含めて、
安全保障は軍に頼る時代ではなく、企業・民間を含めて総合的な力により、経済安全保障として実行される必要がある。
Posted by ブクログ
昨今の世界情勢に対応できる体制を整えるために、日本はどんな方針を立てて、どのような判断を下すべきかを本書では語られる。実際にインテリジェンスに従事した著者だからこそ見える視点、考えた方を読書に提示して、米中やロシアといった大国の動向を分析する。そして日本も政府のみならず、企業間においても、他国からの干渉にどう対処して、主権国家として生き残るのかを考えていく。とりわけ情報は、従来よりもいっそう重要な要素となりつつあり、情報の精査次第で政策が大幅に変わっていく。