あらすじ
「専門家になるだけが、心理学の効用じゃない。
ゆず胡椒のように、心理学は人生に風味を付け加えてくれるのだ。
――東畑開人
42歳、ライター、一念発起して大学で心理学を学ぶ!
大人になって心理学を学んだら、
子育てがラクになり、本屋というライフワークにたどり着いた記録
30~60代まで、
大人になって心理学を学んだ11人の、それぞれのケースも収録!
【おわりにより】
大人になって心理学を学ぶと、自分の経験をかけがえのないものだと受け取れるようになる。私は私の経験と学びを掛け合わせて本屋を開いたが、ほかの人にはほかの人の数だけ、掛け算の答えがあるだろう。もちろん仕事にしなくても、日々の人間関係にも学びが活きることは、本書に出てくださったみなさんが口を揃えるように語ってくれた。
【目次より】
・きっかけはピアカウンセリング
・42歳、通信制大学に飛び込む
・心理学ってどんな学問?
・資格の話と理系の授業
・人生のピークは終わった
・40代の職場体験?
・卒業式のくやし涙
・求人応募で落ちまくる
・掛け合わせて本屋になった
・Column 学びとお金
・Column 心を知りたい10の入り口 ほか
【著者について】
石川理恵(いしかわ・りえ)
ライター・編集者・週末本屋店主
1970年東京生まれ。通信制の美術短大でグラフィックデザインを学び、求人広告制作、DTPオペレーターを経て、弟子入りという形でライターの一歩を踏み出した。2000年よりフリーランスとなり、暮らしまわりの実例取材やインタビュー記事を企画、編集、執筆している。近著に『空き家で暮らす』(加藤郷子との共著・技術評論社)、『自分のために本をつくる ZINE&リトルプレス ビギナーズガイド』(グラフィック社)などがある。
働きながら通信制の大学で心理学を学び、NPO法人での不登校支援などを経て、2023年、地元の東京・東長崎に「こころの本屋」をオープンした。月に数日のみ営業するほか、聞いて書くためのワークショップ、自分史をZINEに綴るクラブなど、少人数でじっくり関わり合う会を開いている。「人の気持ち」が最大の関心事。「自分を責めない、人を責めない」をテーマとし、あらゆる思い込みや呪縛をとくために仕事をしている。
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Posted by ブクログ
大人になってから大学で心理学を学んだ方の体験談をまとめた一冊。学生時代はあんなにも時間を持て余していたのに、大人になってからは、あれも知りたい、これも知りたいといった欲望が尽きず、とにかく時間が足りないという状況には共感しきりだ。
著者でフリーライターの石川さんは、障がいのあるお子さんを抱えた親たちのピア(仲間)カウンセリングへの参加をきっかけに、心理学に興味を持つ。ワークショップでの「安心・安全な場づくり」のために提示されたグランドルールのうち、「誰かの発言に対して、同情・アドバイス・評価・批判をしない」というルールに最初はひどく戸惑ったそうだ。しかしルールに沿って進んでいく中で、それまでの自分は、話すのが苦手な人のために良かれと思って場を仕切ったり回したりしてきたが、実はみんなはもっと自分の話を聞いてもらいたがっており、自分がその機会を奪っていたことに気がついたという。その後も、お子さんとの関わりの中で、素の自分が対応するよりも、研究されている客観的な視点を理解して関わるほうが良いと感じる場面が重なり、「わが子をつぶさないためにも学びたい」との思いで心理学を学ぶことを決めたという。
石川さんが書いていたことで一番共感したのは、大学というのは「興味のない科目も履修しなければならないところがよい」という部分だ。興味のあるなしに関して、自分の感覚ほど当てにならないものはない。社会人になってからの学びは、自分の興味範囲や仕事の役に立つことがメインになりがちだが、自分の世界が広がるような偶然性も大事にしたい。そんな意味でも、心理学を学んだ石川さんが、ライター業の傍ら、不定期で「本屋」を始めたというのは、すごく面白い。紙の本屋さんほど、未知の出会いにあふれた場所はない。
本書の後半には、大人になってから心理学を学んだ11名のインタビューが載っている。中には60歳で勉強を始めて臨床心理士の資格を取得し、カウンセリングルームを開かれた方もいて、何かを始めるのに遅すぎることはないのだなぁと感じた。個人的には、インタビューするのは半分の人数でもいいから、一人一人のエピソードをもう少し掘り下げて読みたかった。
心理学に限らず、大人になってから何かを学びたい、自分の世界を広げたいと考えている人の背中を押してくれる一冊だった。