【感想・ネタバレ】宗教建築を体感する 祈る心をかたちにするとのレビュー

あらすじ

宗教建築は聖典や経典とならんで、あるいはそれ以上に、宗教を知るのに適した創造物である。なぜなら、文字が読めない人びとにもその宗教の本質が伝わるように造られているからだ。実際、著者にしても探訪した土地のことばをほとんど知らない。それでも宗教建築を案内しようと試みるのは、文字が読めなくても宗教の本質を体感できるからだ。宗教建築は、その宗教を理解するための“巨大な書物”と言えるのだ。
また文字が読めても、人びとが聖典を読むことが可能になったのは、ドイツのグーテンベルクにより活版印刷が可能となった十五世紀なかば以降である。本書で訪れる宗教建築のほとんどは、グーテンベルク以前に建立されたものである。人びとは文字に頼ることなく、宗教建築のなかで、その前で、あるいはその周囲で説教を聞き、礼拝していたのだ。
そして宗教建築における礼拝法と宗教建築へのアプローチはつながっていることが多い。礼拝法とアプローチは密接に絡んでおり、切り離すことができない。礼拝は宗教建築のなかで、その前で、あるいはその周囲でおこなわれるが、宗教建築へのアプローチがすでに礼拝に含まれていることが多いのだ。それゆえ、本書ではアプローチのありかたをも含めて、〈回る〉〈進む〉〈彼方を視る〉の三類型に分けてそれをさらに展開、そして最終的には「どこに意識が向かうのか」をキーワードとして世界の宗教建築に臨むことにする。
宗教とか宗教建築とか言うと、どこか胡散臭く、カビが生えたようなイメージがつきまとうと感じる向きがあるかもしれない。だが宗教建築は人びとの礼拝のしかたを決めているとともに、その宗教が想定する世界観を体現しているのであり、けっして古臭いものではない。人類にとって不変かつ普遍の価値をもつものだ。だからこそ、いまでもわれわれの心を打つ存在でありつづけているのだ。
本書が読者を誘うのは宗教建築が発している、人類が記憶すべき多様な世界観の数々である。そこから、どんなあらたな気づきが得られるだろうか? 本書で得られる宗教建築のイメージは従来のそれを塗り替え、一新するものとなると自負している。読者にとって宗教と建築との、あたらしくもみずみずしい出会いとなることを期して、ともに宗教建築探訪の旅に出よう。(プロローグより)

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Posted by ブクログ

神社やお寺には行くが、よくわからずすごいなーとしか思っていなかった自分にとって、とても新鮮な本だった。

まず著者のリサーチ範囲がすごい。
日本の代表的な建築をおさえているのはもちろんのこと、海外の建築レビューも非常に細やかで、実際にその地を見たかのような臨場感を感じた。

解説部分も、まず建築物の注目点を写真付きの説明するところから入る。それが宗教的にどのような意味を持つのかを順々に説明してくれるおかげで、いわゆる教科書的なものよりも直感的に理解することができた。

原爆ドームの例は特に面白かった(不謹慎かもしれないが)。そこに祈る対象がいなくても、犠牲者の悼みや平和への祈りを向ける儀礼的中心としての原爆ドーム。
これが、神が世界中に遍在しているとしていながら、その信仰の向きをメッカ一ヶ所に集めているという意味で、イスラム教の建築思想と似通っている。

著者は例を絞ったと書いてあったが、それでも様々な宗教や、その土地の人々が大事にしているものを多く知れて、これから神社などに行く時の見方が大きく変わりそうである。

そして最後の「幻の建築物」。それには世界に様々な形で存在している信仰の形が体現され、著者の人生をかけて構想したのだなと感動した。
実現しなかったのが本当に惜しいが、私は今や、そのエッセンスを数多くの宗教建築から感じ取ることができる。非常に実りのある読書体験だった。

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2026年08月05日

Posted by ブクログ

建築の使命が、世界観を体感させることなら、宗教建築ほど適したものはない

現代主流のモダニズム建築は、装飾を削ぎ落とて構造と機能を剥き出しにしたたもので、世界観の体感を目指してはいない。

だが、宗教建築はその空間を通して世界観を伝え、礼拝を規定する。世界観-宗教建築-礼拝は切り離しがたく結びついていて、建築が似ている宗教は世界観も似ているのだ。

そして古来より宗教建築は文字が読めない人にも宗教の世界観を伝える役割をしていた巨大な書物とも言える。文字の読めない海外へ行ったときこそ、体験したいのが宗教建築である。

建築というフレームで宗教を切り取る、独自性の高い一冊。

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2026年07月09日

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