【感想・ネタバレ】それでも、夜をこえてのレビュー

あらすじ

裸足で踊る。痛みのすべてを、私の自由にするために。

「指輪はやれない。教会での愛の誓いも。代わりにこれを」
愛した男に贈られたのは、血のように赤い、呪いの靴だった。

神に選ばれなくても、私たちはこの足で明日を踏みしめる。
行き場を失った4人の男女がたどり着いた「選択」の物語。

【秘密のパティオ】 連載打ち切りの危機にある漫画家・葉月。異国の地で突如始まった、認知症の老婦人との同居生活。彼女は老婦人が最期まで隠し続けた「生涯ただ一度の恋」を知る。
【バレンシアの灰】 自堕落な生活を送る寿司職人見習いの栄太。全てを失い、火祭りの夜に「元闘牛士」の男に拾われた彼は、自身の手に残る「本当の想い」と向き合う。
【裸足のペテネーラ】 不幸を呼ぶ女「ペテネーラ」と呼ばれたダンサー・美鶴。妻子ある闘牛士テオとの破滅的な愛の果てに、彼女が選んだ「答え」とは。
【光の衣装と巡礼】 夢を諦め、ガイドとして生きる竜斗。かつての親友・セバスティアンとの再会が、封印したはずの情熱を呼び覚ます。二人が選んだ結末は、希望か、それとも。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

それぞれの登場人物が抱える心の闇の重さ。その重圧と戦いながらも生きていく登場人物達のリアルな気持ちがタイトルに表れていると強く感じた。人生は自分がその命を終えるまでは完成しない。だからこそ自分が覚悟を決めれば何度だってやり直しがきく。たとえそれが周囲から見て不可能なことだとしても人生はその人自身のものであり、決めるのはその人自身でなければならない。しかしながら覚悟を決めてももがき苦しむことは多々ある。生きるということは綺麗事ではない。そのような苦しくも重たい夜を精魂尽き果てながら越えた先の未来に見えることを願う希望の光、竜斗とセバスのいうところの満天の星をこのタイトルに感じた。この作品全編を通じたテーマを見事に表現したタイトルだと思う。

プロローグとエピローグに出てくるサグラダ・ファミリアはこの本全体の象徴的存在だ。完成したものは誰が見ても同じものだが、現在進行形で作られている未完のものは日々姿を変え、二度と同じものを見ることができない。彼らの人生はまだ途中である。これからも何度も挫折を味わうかもしれない。しかし自分さえその気になれば何度でもやり直しはきくのだ。長い年月をかけ、苦難の日々がありながらもようやく完成にこぎつけようとしている未完の美しさを持つサグラダ・ファミリアはまさに彼らにふさわしい象徴だ。「人生は未完のまま。永遠に答えを求めてさまよい続けるのかもしれない」という作中の節子の言葉通りだ。それが人生であり、それでいいのだ。そう納得できる作品だった。

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2026年07月06日

Posted by ブクログ

3.8という肌感覚です。

スペインを舞台にした、現地に住む日本人の群像劇。

ほんとになんと言い表したらいいんだろうこの感情。
東京の新宿や池袋みたいな汚さと、歴史と芸術の美しさと、フラメンコの情熱と、闘牛に命を燃やす一瞬の輝きと汗の眩しさみたいなものが全部詰まって美しかった。

これだけ色々と詰め込まれていると、どうしても感情の密度も濃くなるし重くなりがちなんだけど、ページをめくる手は止まることなくスイスイと一気に読めて不思議。

みんなスペインという熱に浮かされたような場所で、何かの夢や情熱やあこがれを持っていて、でもそれは簡単に叶うものではなくて、つまりは現実として夢敗れることだって普通にあるわけで、
周りはしっかり歩いてる(ように見える)中で自分だけがもがきながら落ちていくような焦燥感がどこまでもつきまとって…周りがどこまでも眩しくて、それがますますしんどくて…というもどかしさと、
そんな中でも人は何かを見つけて生きていくものなのであり、それが正解なのかどうかなんて誰にもわからないけど、情熱のままに後悔のないように生きていくしかないよね。っていう。

物語の中の人物たちは、それぞれ「こんな辛さを抱えているのは自分だけ」という感覚を抱いてる(そんな書かれ方はしていないけど)ように感じたが、
読者というメタ視点からすると、それはこの書籍に数珠繋ぎになってでてくるそれぞれの主人公たちの誰もが共通して抱えている葛藤だということがわかる。
それって結局我々の人生も同じことであって、周りが地に足をつけて堅実に歩いているようにみえたり、夢をちゃんと叶えていて羨ましいとか自分だけがうまくいかないとかおもいがちだけど
誰しもが何かしらの劣等感を抱えていたり、欠点があったり疎まれていたり、諦めて捨てたものがあったり、捨てきれなくて苦しむものがあったりするんだよなということに気づかせてくれる。

何を書いてるのかわからなくなったけど、
ある程度の年数を生きてきた人なら誰でも大なり小なり体験している、憧憬と焦燥と諦観と希望みたいなものを繰り返すような作品で、
人生って山あり谷ありで一筋縄ではいかないし、夢を諦めればその夢への憧れや眩しさは一生消えることはないし、夢を叶えたところでその一方で手放ざるを得なかったものへの想いは抱えながら生きていくのだし、結局どんな人生であろうと、人はそれなりに満足をしてそれなりに何かの痛みを抱えて生きていくのだから、
それならやりたいことはやればいいし、やれなかったとしてもそれもまた人生としてまた色んな想いを抱えて美しい人生を歩いていくものなんだよね。
などのいろんな考えが一気に去来してよい読書体験でした。

読む前から美しいタイトルだと思っていたけど、読み終わった後に改めてタイトルに思いを馳せるとなんだか泣けてくるような救われるような気持になる。

それでも夜はこえなくちゃいけないし、それでも夜はこえてしまうものだし、誰もが「夜」をこえているんだよなあ。。

とりとめなく長い感想だな…

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2026年06月28日

Posted by ブクログ

スペインといえば情熱的で明るい国というイメージがあったけれど、この作品で描かれているのは、人種差別や言語の壁、そして理想と現実のギャップに直面しながら生きる日本人移住者たちの姿。

異国の地で夢を追いながらも、思い描いていた人生とはかけ離れた現実に戸惑い、生き方を模索していく。
華やかな海外生活というよりは、むしろ現実の厳しさと向き合う人たちの物語。

描かれているテーマは決して移住者だけのものではなく、夢を追い、挫折し、思い描いていた未来とは違う場所で生きている人に向けてのものだと思う。
短編集の中の誰かに、誰しもがきっと自分と重なる部分を見つけるはず。

ただ文章は読みやすいんだけど、登場人物たちが新たな一歩を踏み出すきっかけになるエピソードが少し弱くて、悩んで苦しんでもがいていたはずなに、けっこうあっさり前を向くな?という印象。

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2026年06月23日

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