あらすじ
本書は、英和辞典の編者でもある気鋭の「辞書博士」が、「1万語」レベルの英単語を身につけるための「戦略」を解説するものである。頻度順の英単語1万語を押さえると、一般的な英語のテキストの約98%をカバーでき、英語を正しく理解できるとされる。しかし、1万語を丸暗記するのは現実的ではない。ではどのように習得するか。著者は、高頻度語(発信語彙)と低頻度語(受信語彙)では異なる戦略を用いるべきであると説き、言語学的な7つの視点でアプローチすることを提唱する。高頻度語には「使えるようになるための戦略」が必要であるとし、コロケーション・フレーズ・メタファー(比喩)・コノテーション(言外の意味)の4つの視点を紹介する。一方、低頻度語には「意味がわかるようになるための戦略」が必要であるとし、語源・意味のネットワーク・フレームの3つの視点を紹介する。さらに、これらの7つの視点を活かすための実践編として、コーパス・生成AI・辞書を駆使した、とっておきの学習法を披露する。巻末には、読者が語彙数を把握するための2回分の「語彙サイズテスト」も付いている。ビジネスで英語が必須の人、各種の英語能力試験で高得点を目指したい人、留学や海外赴任の準備がしたい人、英語の新しい世界を覗きたい学生や教員など、英語力を本格的に鍛えたい人のための必携書。
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Posted by ブクログ
親しい友人であり、研究仲間でもある内田諭先生による新書。身近な方の著書ということを差し引いても、英語学習者にぜひ読んでほしい、非常に示唆に富む一冊でした。
本書を読んで改めて感じたのは、高頻度語と低頻度語では、語彙学習のアプローチを変える必要があるということです。すべての単語を同じように覚えようとするのではなく、使用頻度や学習目的に応じて、学び方を工夫することの重要性がよく分かります。
また、単語そのものだけでなく、コロケーションなど、実際の英語使用に直結する知識にも丁寧に触れられています。「単語を知っている」とは、単に日本語訳を知っていることではなく、その単語がどのような語と結びつき、どのような文脈で使われるのかまで理解することなのだと再認識しました。
英単語を「数」として増やすだけでなく、「使える知識」としてどう身につけるかを考えさせてくれる本です。語彙学習に悩んでいる英語学習者はもちろん、英語を教える立場の人にもおすすめしたい一冊です。
Posted by ブクログ
1万語を覚えると98%くらいをカバーできる。
文章の関連 つながりのコロケーションを意識するなど英語学習のコツをまとめている。
単語帳ではないので学習方法の解説
Posted by ブクログ
英語学が専門で辞書や教科書の編纂にも携わる著者が、英単語を知るとは英単語のどういう知識を得ることなのか、多くの英単語を覚えるためのヒントはどのようなものがあるか、また、覚えただけではなく発信に活かすためにはどうすればよいのか、といった点を解説した本。
英単語を増やそうとする本というのは数多くあるが、ただ単語を羅列するものではなく、その背景となる理論や、実際にどうすれば覚えられるのかという手順について解説したもので、英語教員から見ても安心できる内容。とてもオーソドックスで、偏りがなく、語彙習得の理論をきちんと勉強した人の本、という感じ。英語マニア的な本では全然なく、学習法についての本。
そもそもなぜ「一万語」なのか、という部分はとても納得できる内容で、あるコーパスで97.5%をカバーするには10000語ランクに達せないといけないという事実と、英文の理解には98%のカバー率が必要である、という一応の研究結果をもとに、「現実的なラインとしては、四捨五入して98%と言える10000語が目標、と言える」(p.22)というのは妥当だと思う。(ちなみに本当に98.0%に到達するのは12000語、ということだから、英語に自信がある人は12000語が目標かも。でも英検1級って確か10,000語〜15,000語、と言われてるから(なんで5000語も差があるのか、昔から謎なんだけど)、とにかく英検1級の語彙問題を満点近い点数で通過する、というのが目標になるかも(って、おれが1級受けたのはちょうど20年前で、それから勉強してないから、そういうおれはだいぶ怪しいんだけど)。
今度高3向けの夏期講習的な講座で、英単語・熟語の講座をやるから、そのためのヒントにもなって、とても役に立った。語源とかメタファーで理解しながら覚えるというのは定番だけど、基本だけどやっぱりコロケーションって重要だな、と改めて思った。というかおれが高校生の時から使っている研究社の『英和活用辞典』はコロケーションの辞典だけど、自分では重要性を意識しているのに、生徒にコロケーションに特化して、集中的に教える、というのは実はやったことないかもしれないなと思った。「日本語でも『汗を出す』とは言わずに『汗をかく』(英語ではsweat一語で表現します)と言い、『風邪を捕まえる』ではなく『風邪をひく』(英語ではcatch a coldとなります)と言うように」(p.41)っているのは生徒に説明する時にも分かりやすい説明だなと思った。なんかとても基本的な英単語をいくつか取り上げて、数々のコロケーションをp.33みたいに(「学校に行く」から始まって、卒業する、やめる、さぼる、などどう言うかの穴埋め)やって提示するとか、なんだったら生徒にリストを作らせてみんなで共有するとか、勉強になるかもしれない。そして、p.222とかでは、AIを活用して、自分でそういうリストを作る例も示されていて、参考になる。p.178以降の「フレーム」の利用とかも面白いかな。「病院」から連想され英単語をひたすら覚える、とか。
あとは英語のことで、自分が勉強になったことのメモ。まず日本語の「時間を作る」が英語にもそのままあてはまり、「例えば、I'll make time to meet you tomorrow.(明日、会う時間を作ります)のように、忙しい中でも意図的に時間を確保するニュアンスで使います」(p.47)と言うのは、正直知らなかった。こんな簡単なことなのに。あとbigとlargeの違い、も中1の英語の定番だが、それを説明するには中1にはあまり馴染みがない英語を色々言わないといけないかもしれず、それがジレンマだなと思った。p.50に示されているような英語は、高校生だったら見たことあるだろうから分かりやすいのだけれど。ちなみに、「bigは感情的・主観的な『大きさ』を表し、largeは数量化できる客観的な『大きさ』を表す」(p.51)ということ。あと「ふとした瞬間に感じる『愛嬌』や『人間味』には、endearing(愛嬌のある)やcharming(魅力的な)を使う方が自然」(p.114)というのも、endearingって使ったことないなと思った。それこそ『英和活用辞典』で調べると、an endearing word(優しい言葉)とか、an endearing smile(愛くるしいほほえみ)のように使うらしい。さらに別の辞典だとan endearing manner(friendlyの意味)など。cuteだと変、という時に使う。audit (p.125)は、「(単位を目的とせず)講義をきく」とあったけど、確かauditって「会計監査」の意味だよな、そういう意味もあるんだ、って思った。これも辞書で勉強すると、make an audit of...で、「〜の会計検査をする」。incognito (p.138)ってどっかで絶対覚えた単語なのに、忘れてた。匿名で、返送して、の意味。drop [keep] one's incognitoで、「本当の身分を明かす(明かさないでおく)」とか、a king incognito(お忍びの王)、travel incognito(お忍びで旅行する)、とか。単語のネットワークで勉強する、というのは体系的に言われたのはこれが初めてかもしれない。その中で、「言語を『衛星枠付け言語(satellite-framed language)』と『動詞枠付け言語(verb-framed language)』に分類しました。前者は、衛星要素(副詞句など)によって移動経路を表す言語で、後者は動詞そのもので移動経路を表す言語を指します。また前者の場合、動詞が様態を、後者の場合、福祉が様態を表すことが多いです」(pp.152-3)という、言語の分類は初めて聞いた。例えばsneak out ofで、sneakが様態で方向はout ofという「衛星要素」で表すのに対し、「こっそり出る」は、こっそりという衛星要素が様態で、「出る」という動詞が方向を表す。ということだから「英語が様態動詞を豊富に持つ」(p.153)ので、「日本語にはあまりないネットワークですので、注意が必要」(同)ということらしい。確かに、英語って「言う」だけでも、何をどの場面でどう言うのかによってexpress, assert, claim, maintain, affirm, noteとか色々出てきて、なんか「言う」ことはわかるのだけど、その日本語が一語で咄嗟に出てこなくてもどかしい思いをすることはあるなと思った。そういった表現がp.164以降にまとめられているが、例えば「歩く」だけでも8つの動詞が紹介されているが、「ゆっくり歩く」の「ゆっくり」のように副詞部分を覚えてなかったりして、意外と難しい。「見る」は「見る」でもpeerとpeekとpeepとか、glanceとglimpseとか、なんか似ている英単語を区別して覚えるのは、おれ個人的には大変だし面倒だなと思う。だからこそ押さえないといけないのだろうけど。最後に、plaintiff(原告)という単語はなかなか覚えられなかったが、p.184で「plaint-は『訴え』を意味し、complaint(苦情、訴状)と語源が共通」と書いてあって、こう書いてあると本当にすぐ覚えるから、生徒に提示する時も、何かとっかかりになる既存の知識とセットで教える、ということが大事、ということが改めて確認できた。
最近のものを含めた新書などブックガイド的な本の紹介や言及があったり、辞書や英字新聞からコーパスやAIまで、まさに伝統的なツールからパソコン必須のツールまで、それらを利用した勉強法が紹介されているので、本当に英語力を伸ばしたいと思っているなら、どれかは実践しようという気になる、良い本だと思った。(26/06/26)