あらすじ
第67回群像新人文学賞、第46回野間文芸新人賞、第11回沖縄書店大賞(小説部門)トリプル受賞!
琉球大学在学中、21歳での鮮烈なデビュー作!
沖縄に生きるアメリカルーツの男子小学生、片足を失い幻肢痛に苦しむ米兵と結婚したコザの女性、特攻へ向かう旧日本軍将校──。14人の語りを通して、戦中から現代までの沖縄の80年史を描き、その因果の物語を辿る。
『月ぬ走いや、馬ぬ走い』は、沖縄の近現代、連鎖する暴力、死者と記憶と時間といった明らかな主題や情報が霞んでしまうほど詩的で恍惚的な文章に満ち、読後にそのすべてが名状しがたい体験として迫り残り匂いたつ。抜群のリズムと声によるこの容赦のない疾走はまったくの才能である。
──川上未映子
島尾敏雄ほか先人のエコーを随所に響かせながら、沖縄に深く堆積したコトバの地層を掘り返し、数世代にわたる性と暴力の営みを、『フィネガンズ・ウェイク』的な猥雑さで、書きつけた作品。Z世代のパワフルな語部の登場を歓迎する。
―― 島田雅彦
十四章の構成で沖縄の近現代史を描き切る、しかも連関と連鎖、いわば「ご先祖大集合、ただし無縁者も多い」的な賑わいとともに描き切る、という意図はものになった、と私には感じられた。/この小説はほぼ全篇、ある意味では作者自身のものではない言葉で綴られていて、だからこそ憑依的な文体を自走させている。つまり、欠点は「長所」なのだ、と私は強弁しうる。要するにこの「月ぬ走いや、馬ぬ走い」は小さな巨篇なのだ。
―― 古川日出男
「読んだものを茫然とさせ、彼のいままでを氷づけにし、そのうえで、読むことをとおしてあたらしい魂を宿らせる、そんな小説でありたい……テクストでの魂込め(まぶいぐみ)とでも呼ぶべきところが、ぼくの目標です。」豊永浩平(受賞のことば)
ぼくがここにいて、そしてここはどんな場所で、なによりここでぼくはこうして生きてきた、ってことを歌って欲しいんだ、ほとばしるバースはライク・ア・黄金言葉(くがにくとぅば)、おれらは敗者なんかじゃねえぞ刻まれてんのさこの胸に命こそ宝(ぬちどぅたから)のことばが、月ぬ走いや、馬ぬ走いさ!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
現代小説と時代小説の狭間にいるような、不思議な読み味の本。
戦後の沖縄から現代の沖縄を、14人の視点を通して覗き見ていく話なのだけど、読者の共感や理解を促したり読み手の快感作るような分かりやすい構成や演出をしない、その剥き出しな感じが個人的にすごく好きでした。
正直よく分からない部分も沢山あるし、読みづらい。けれど、「その人(登場人物)が見て感じた記憶をそのまま差し出す」というような荒っぽさや(物語としての)違和感、読み手に易しくない描写や展開が、それぞれの記憶の断片をこちらにリアルに感じ取らせてくれたように思う。過去にあった出来事や、歴史として語られる話の奥にあるのは、その時間を生きた人たちの人生の集まりで、本来はこういうふうにバラバラで繋がってたり繋がってなかったりする、混沌としたものなんだなとハッとさせられた。
時代も性別も感情も全然違う人たちによる言葉の連なりには、解らないところも共感できないところも沢山ある。けれどその中に感じ取れるものもちゃんとあって、読んでいて心を揺さぶられた。切なかったし、胸が苦しくなった。そして解らなさも不快感も含めて「良い読書だった」としみじみ思う、自分にとっては貴重な一冊でした。
読後の余韻が深くて重くて、一晩経ってもふとした拍子に思い出してなんとも言えない気持ちになる。
クセがかなり強い重たい話ですがオススメです。
Posted by ブクログ
戦争を知らない世代が、どのように戦争を語り継ぐのか。戦中から令和の現在に至るまで、祖霊が集まる道巡礼を起点として紡がれる物語たち。時空を超えて、視点人物を切り替えながら、沖縄という地の記憶を立体的に掘り起こしていく。継起的な性と暴力。島における負の連鎖。多くの死。それら亡霊を受け入れ、過去を受け継ぎ、未来へと繫ぐ。愛の力を信じて。
Posted by ブクログ
いやぁ、よく分からないけど凄かった。
何が凄いのか自分でもよく分からないけど、心にズンズン響くものがあった。
沖縄が抱えていた暴力と歴史の澱が呪いのようにつづく14人のモノローグ。誰が語っているのかも分からず、戦時下と現代が交互に巡り、土着の無数の人々の叫びが世代を越えて濁流のように押し寄せてくる。現代を生きる若者のリアルな息苦しさがとにかく刺さる。
特に、ガマへ肝試しへ行った際の出来事はまさに呪い。手に持っていたあの短刀は「そんなの持ってきたら絶対ダメなやつじゃん!」と背筋がゾクッとした。『呪術廻戦』の「両面宿儺の指」と同じ特級呪物。あれを手にしたのは偶然なのか、選ばれてしまったのか……。
そんな暴力と切ない歴史の果てに、ラストシーンで訪れる幼い二人が未来へと手を繋ぐ「光」と「救い」に鳥肌が止まらない。
著者は「大江健三郎を継ぐ者」ともいわれる若き天才。これがデビュー作というから驚きだ。2作目の『はくしむるち』本屋へGO!