あらすじ
個人の自由は,エゴイズムと何が違うのか.人間は,いかにして公共的になりうるのか.暴力と権威主義が世界に満ちるとき,私たちは何度でもこの問いに答えなければならない.利己主義による腐敗を乗り越えるため,「共感」の可能性を深く追求した一八世紀イギリスの思想的格闘を読み解き,現代の危機に向きあう視座を探る.
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
岩波のサイトでは「利己主義を乗り越えた社会を求め、一八世紀イギリスの思想家たちは「共感」の可能性を深く追求した。その遺産を現代に読み解く」と紹介されている。
しかし、いきなり18世紀社会の思想家から入るのはハードルが高いという向きは、現代的な意義の部分から入ったほうが読みやすいかもしれない。
Posted by ブクログ
「共感」をめぐる思想史。
ヒュームとスミスを中心に、利己心を持つ人間がなぜ利他的な「共感」を抱くのかの壮大な思想の軌跡が詳細に論じられている。
スミスの国富論の背後には道徳感情論で論じられた「共感」が重要な核としてあることがよくわかった。そもそも、相手が何を求めているかを想像し共感しないと、市場での取引(交換)は行われない。「見えざる手」はこうした共感を前提としており、スミスの想定する「経済人」は、決して自己の利益のみを冷徹に追求する利己心の塊ではない。この点は(この理解が正しいのか自信はないが)興味深かった。
ただ全体的には難しかった。多分半分くらいは正確に理解できていない、と思う…。ヒュームとスミスは、人間の持つ社会的共感という生物学的本能・特質に、理論的・哲学的に意味づけを与え、それを梃にして18世紀当時のイギリス社会をよくしようと格闘した、ということかもしれない。そのような思想的格闘が行われること自体が大事であり、これを現在の人類が直面する分断・対立を解消するヒントにしてほしい、というのが著者の願いなのかなとも思った。