あらすじ
人間はどこまで残酷になりうるのだろうか.凄惨な強姦殺人とその根底にある女性差別,カルトのマインドコントロール,家庭内暴力と息子殺し…….現実に起こった事件に取材し,そこから照射される人間と社会の深淵を描いた傑作短編漫画集.ポストフクシマ,ポストコロナの近未来を描写した新作短編を収録.(解説=鈴木朋絵)※この電子書籍は「固定レイアウト型」で作成されており,タブレットなど大きなディスプレイを備えた端末で読むことに適しています.また,文字だけを拡大すること,文字列のハイライト,検索,辞書の参照,引用などの機能は使用できません.
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Posted by ブクログ
以前、響流書房でこの方の話を読んだ。この本にもヤマギシ会の話が収録されている。
この方の漫画は淡々としているように見える。どうしてかというと、本当に悪い「顔」の人が描かれないからだ。漫画ってキャラクターの立ち位置をはっきりさせるために、「あ、これ悪い奴だな」とわかる「顔」で書かれることが多いが、このお話に出てくる登場人物(多くは犯人的な存在なのだが)はみんないろいろな「顔」を持っている。そのときそのときの表情だ。だから常に悪い人もいい人もいないのだ。だから判断は読者に委ねられる。あなたはどう考えるか、と。
表題作は女子高生コンクリート詰め殺人事件をテーマにしたものなのだが、表面で読んでいくと、「なんでもっと加害者を攻めないんだ!」といわれそうな感じがする。そこは取材する女性を通して静かに被害者へ、女性への深い視線があるのだ。漫画だからってさらっと読んじゃいけない。まだ小さいときにこの事件をワイドショーで見て、なんと高校生になるということが怖いんだと感じたのを思い出す。
自分は「親が・殺す」も重かった。東大卒の真面目な高校教員が妻と共に息子を殺した事件。いろんなところでこのシチュエーションが自分と重なることがあり、自分の読み方は全部保留だった。最後の父親の言葉がすべてかもしれない。
後半には女性の生き方(「イエ」から解放されたおばあちゃん、LGBT、ミスコンなど)に関するものがある。自分より前の世代の方の考えだと思うが、それでもここまで落とし込んで伝えられるというのはすごいなと思う。是非読んでみて欲しい。でもどれだけ上の年代の人たちに気付きを与えられるか・・・とも思う。それぞれの人間が人生で気づき上げてきた価値判断というのはそう簡単に覆らない。