【感想・ネタバレ】丸いもののもつ慰めのレビュー

あらすじ

第一次世界大戦に参加したアルザス地方の兵士は、夜空を眺めるうちに「大少年座」を発見するが、その光景にひどくぞっとしてしまい、だれにも話せずにいる。盲目のアンヤに恋をした青年は、彼女のアパートの部屋じゅうあちこちに罵詈雑言が書きつけられていることに気づいてしまう。ショイヒ家にある日、むかし自分が育った家を見たいという男性が、レンタルスーツの下にスタンガンをひそませて訪ねてくる。ある女性は、太陽の昇らない極夜のノルウェー、クバレイ島を旅する、謎の生物ORとともに。
――人生に突如として降りかかってくるまったく予期せぬ出来事、日常生活にみられる秘密めいた深淵。奈落へと通じる隠し扉のような仕掛けから垣間見える、人を惑わす鬼火や二重底に満ちたそこで、読者は、人間の共同生活の不条理とグロテスクさ、死者の亡霊、思わず舌打ちしたくなるような言葉たちに出会うことになる。現代文学の鬼才クレメンス・J・ゼッツの、過激な語りで細部に至るまで刺激的な最新短篇集。

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Posted by ブクログ

短篇集と知らずに読み始めるという稀に見る失態を冒したが、脳に負荷を与える目的を後付してどうにか通読。状況を放り投げるタイプの作風なのだが、細部への心配りと言葉に対する丁寧な扱いが行き届いているせいか乱暴さを全く感じない。
不穏や不協和を意識的に編み出しているように読めば読めるが、私にはそうではなく、筆者が描く日常、筆者の目を通して見える、この広い現実世界に起きうる作用や反応が、「一般的な小説内で起こりがちな物事とその展開」より遥かに現実的で切迫しているが故に「身に覚えのある不快さ」に見舞われるという読み心地をすべての短篇で繰り返し感じさせられるということなのではないかと思う。描写のきめ細やかな丁寧さが、その感覚を亢進させる。
巧いと思う、が、ある種の歪みを期待する「面白さ」以外の読みどころは無い、とも言えてしまう。私はこのタイプが大好物だったことがある。今はどうだろうか。

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2026年06月07日

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