あらすじ
お人よしすぎる高校生・千桜が通う学校には、文化祭でキスをすると結ばれるというジンクスがある。自分には関係ないと思っていたけれど、学校一モテるクール男子・夜野と事故チューしてしまい、予想外の展開に…? 「俺ら付き合うことになったから」突然の恋人宣言に戸惑う間もなく、ドキドキの毎日が強制スタート!? “恋人らしいこと”をするうちに、塩対応だったはずの夜野は独占欲を見せ始め――「千桜を独り占めしたい」「かわいすぎてバカになりそう」このふたり、最悪なファーストキスだけでは終わらない!
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Posted by ブクログ
〝俺にだけ優しくあってほしい。千桜の優しさを独り占めしたい。(夜野)〟
Eros度★
おやおや。事故チューから始まった「責任をとる」という約束が、ここまで甘くて、じれったくて、愛おしい恋に育っていくとは。クールで不愛想な夜野と、お人よしで空気を読みすぎてしまう千桜。正反対に見える二人だからこそ、互いの内側を知るほど距離が縮まっていく過程がたまりません。
物語の面白さは、まず「期限付きの恋人」という関係を先に作ってしまうところ。最初は事故チューの責任を果たすためだったはずなのに、一緒に過ごし、恋人らしい時間を重ねるうちに、その関係そのものが二人にとってかけがえのないものへ変わっていく。単なる契約やごっこではなく、「相手を知ること」がそのまま「好きになること」につながっていく構成がとても丁寧です。
特に刺さったのが、夜野の「俺にだけ優しくあってほしい。千桜の優しさを独り占めしたい」という気持ち。普段は何を考えているのか分かりにくい夜野が、千桜にだけは特別でいてほしいと願っている。その独占欲は強引に見えて、実は「自分だけを見てほしい」という恋する人の不安そのものでもあるんですよね。
対する千桜も、ただ流されているわけではありません。「俺は、ちゃんと夜野くんのこと見てるよ」と言えるのが本当にいい。外見だけではなく、「内面……優しい一面だって知ってる」と伝えることで、夜野が抱えていた不安や孤独に、真正面から触れていく。夜野が千桜に惹かれた理由も、「朝比奈が俺に優しいから。あと、一緒にいて楽しいから」と語られることで、二人の関係が偶然だけで始まったものではないことが伝わります。
そして何より萌えるのが、夜野の分かりにくい甘え。千桜から見れば「怒ってたんじゃなくて、拗ねてたんだ」。不機嫌そうに見えた表情の奥にある感情を、千桜だけが理解できる。この「恋人の俺だけが見られる表情」という特別感が、二人の関係を象徴しているようでキュンとします。
胸が締め付けられるのは、期限があるからこそ「他人に戻る」可能性が見えてしまうところ。だからこそ夜野の「俺、もう朝比奈が他人に戻るとか考えられないところまで来てんだけど」という言葉には、独占欲だけでなく切実な愛情が滲みます。
キスを中心とした濡れ場も、刺激そのものを前面に出すというより、二人の心の距離が縮まったことを感じさせる甘い描写。偶然だった最初のキスが、やがて「好きな人と触れ合いたい」という意思のあるものへ変わっていくのが印象的です。
「責任」という言葉を恋の始まりから最後まで軸に据えながら、偽物だった関係を二人自身の気持ちで本物へ変えていく。クールな攻めの独占欲と、優しい受けの一途さ、その両方をじっくり味わえるピュアキュン青春BLでした。